表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
チャールズ・チャップリン
55/317

55話

「ソニック・シーズニング?」


 なにやらカッコいい英単語を耳にし、オード・シュヴァリエは聞き返した。サラダにふりかけるドレッシングのような、そんなイメージをしたのだが、ソニックが気になる。ソニック。音速?


 現在、時刻は一二時。場所はパリ、モンフェルナ学園の中庭。天気は快晴。中央には人工大理石を使った噴水が立ち上り、その周りには等間隔で八つの長い木製ベンチが取り囲む。オードはそのひとつに座る。


 聞き返されたジェイド・カスターニュは、まずそこにたどり着く前に、他の例を挙げて外堀から埋めていく。


「青いものって食欲がなくなるって聞いたことあるかい?」


 オードと同じベンチに座っているのだが、端に座る彼女から二人ぶんほどのスペースを空けて、ジェイドは座る。もっと近づいて話したいのだが、オードが離れていくのでしょうがない。


 なんとなく、聞き返したことと違うものが返ってきたような気がしつつ、オードはとりあえず新たな質問に答える。


「いや、ないけど……たしかに、青いスープとかはなんか怖いわ。本当は美味しくて、体にいいものだとしても、ちょっと嫌な感じになるかもね」


 青い食べ物、言われてみればあまり浮かんでこない。青い空、青い海、青い地球。見るぶんには美しいが、胃の中に入るとなると少し戸惑う。


「そんな感じで、食べるものは味覚や嗅覚だけじゃなくて、視覚や触覚でも味わいが変わっちゃうってわけ。で、これはオックスフォード大学のチャールズ・スペンスって人の研究の結果らしいんだけど」


「……待って、難しい話? あんまりそういうの得意じゃないんだけど」


 なにやら有名っぽい大学の、頭の良さそうな人の名前が、ジェイドの口から出てきたところで、どちらかといえば勉強嫌いなオードは頭を抱えた。


 指を振ってジェイドは否定する。


「いや、簡単。音には味があって、味には音がある、ってこと」


 鳥の声が聞こえる。木々のざわめきも。オードの頭には、ジェイドの話よりも自然の音のほうが入ってきた。もう一度考え直してみたが、やはりわからん。


「……言葉は難しくないんだけど、全く頭に入ってこない。てかさ、あんたってもしかして、頭いいの?」


 なんとなく、勝手に家に着いてきたり、無茶な注文してきたり。かなりぶっ飛んだヤツかと思っていたが、ベルギーからの留学生であることを思い出した。流暢なフランス語も話せるし、少しだけ嫉妬じゃないが、モヤモヤするものがある。


 腕を組んで深く考えこむジェイドだが、答えは出ない。


「どうだろうね。この留学にはGPAが関係してるらしいから、世間的に見ればいいほうなのかな」


 GPA。グレード・ポイント・アベレージ。成績の平均値。欧米では、これがかなり進学に関わってくるため、気にしている者は多い。モンフェルナ学園や、元々ジェイドの在籍していた聖ルカルトワイネでは、この最上位者しか、留学の許可は降りない。


「……なんかムカつくわ。で? 触覚とか視覚はなんとなくわかるけど、聴覚はなに? なんか意味があるの?」


 不貞腐れながらオードは問い詰める。そもそも、なんでこんなことになっているのか。

お読みいただきありがとうございます!楽しかったよ、という方は、星やブックマーク、コメントなどをいただけますと幸いです!よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ