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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
マリー・アントワネット
41/317

41話

「……いい天気だなー……」


 翌日。


 中央には人工大理石を使った噴水が立ち上り、その周りには等間隔で八つの長い木製ベンチが取り囲む中庭にて、オードは座りながら空を見上げた。石畳にはゴミひとつなく、雇われた清掃業者が今日もしっかりと仕事をこなしている。そしてその周りには大小様々な花が植えられており、秋の優雅なひとときを今日も演出している。


 天気は快晴。間抜けなほどに青い空。こんな日は、日の当たらないところでカルトナージュの新作に取り掛かりたい。が、一三時から約束をしてしまった。あまり乗り気ではないが、職人たるもの、引き受けたのなら最後まで。


「時間まではまだあるし、どうするかね……」


 初めての、自分を名指しでの指名。本来なら嬉しいことのはずなのだが、指名してきた人間が気に入らない。夜遅くに自分の家まで来て、食事を取り、団欒し、あまつさえ結局泊まっていったらしい。自分が起きた時にはいなかったので、始発かそれに近い時間の地下鉄で帰ったのだろう。見事に振り回されている。


「ちょっと早いけど、移動するか……」


 指定された場所は音楽科のホール。時間は一三時。持ち物は自作のカルトナージュ。歩いて五分程度の距離なのだが、気が乗らず、倍の約一〇分かけて到着。コンクリート打ちっぱなしの外観。入るのは初めてだ。


 フラッパーゲートを越え、ホールの扉を開けようとしたところ、横に案内図が貼り出してあるのだが、どうやらここは大ホールで、小ホールもあるらしい。どちらか聞いていなかった。というか、初めてだから二つあるなんて知らない。


「どっちよ……それくらい言っときなさいよ……!」


 もう面倒なので、開きかけた大ホールにそのまま入る。違ったら違ったで寝て待ってよう。すり鉢状のホールの真ん中の舞台上に、遠目でもわかるほど高級そうなピアノ。そして、ひとりその傍に立っている。弾いたりしているわけではないが、何をしているのだろうか。


(人、いるじゃん。てか、なんでここに指定したんだって。こうなることくらい、考えられるだろっつの)


 しかし、別に悪いことをしているわけではない。適当なところに座って待ってよう。一番近場の、一階最上段席。舞台の上の人が何をやっているのか、観察でもしながら待とう。しかし。


「ん? 誰ー? 音楽科の人? ここ使うー?」


 その人物からオードは声をかけられた。どうやらバレてしまったらしい。少しだけガッカリ。ひっそりと見守っていたかった。返さないのも気まずいので、適当に。


「あー、いや、こっちこそごめん! 違う、邪魔しちゃったかな! 時間があったから、寄ってみただけだから」


 一応、自分だけ座って楽しているのも申し訳ないので、立ち上がって階段を降りながら近づく。怒っているわけではなさそうだ。とりあえずよかった。


 普段の声量で届くくらいの距離になると、舞台上の彼女は微笑した。


「一緒だ。私も音楽科じゃない。さらに言えば——」


 と、言いかけたところで口をつぐんだ。


「?」


 さらに言えば、なんだろう? オードは彼女の次の句を待つ。が。


「秘密」


「なんだそれ」

続きが気になった方は、もしよければ、ブックマークとコメントをしていただけると、作者は喜んで小躍りします(しない時もあります)。

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