317話
そしてその言葉の意味をギャスパーは説明する。
「『ショコラ』『カルトナージュ』。それらの頭文字。そしてキミ達の名前。『カスターニュ』『シュヴァリエ』。全て『C』だ。だから私がつけた」
勝手に。なにか意味がありそうだったから。
目の前にある絵画そっちのけで、オードは頭の中で組み合わせてみる。
「……言われてみれば……っていうか、あいつとセットにされてるのかあたしは……」
そりゃそうか、と納得もする。けど、やっぱり完全に同意はできない。微妙な差。
「間に『×』を加えて、後ろの『C』をひっくり返せば、まるで『∞』のようにも見える。ショコラもカルトナージュも。終わりはないんだ。香水も音楽もだけど」
両手で形作ってみせるギャスパー。自分で言っておいてなんだが、まぁまぁよくできてるな、と。『C』という文字には、フランスが詰め込まれている。
渋々受け入れてみるオードだが、結局まだわからない点は多い。
「それで『誇り』ってのは。いったいどういうもので」
「このへんは個人的なものだからね。ほら、ショコラティエの世界大会『ワールドチョコレートマスターズ』では、ほとんどフランスは優勝していないんだ。まぁ、結構バラけてる印象はあるけど。大きなお世話だけどさ。やっぱフランス人としては、優勝したいよねぇ」
そうギャスパーの悔しがる通り、一強という国はない。情報が駆け巡る世界。なにかひとつ革新的なものが出回ると、各国でそれを取り入れた新作が普及する。それの繰り返し。ショコラの発展という意味では、非常にありがたい話ではあるが。
深い思考……に沈みかけたところで、ひとつオードには気になることが。
「あいつは。ジェイドはベルギー人ですけど」
流暢にフランス語も話すし、なんだったら文化とかもあたしよりよく知ってるみたいだけど。そう認識してしまうと、またさらにムッとする。




