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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
ビートルズ
280/317

280話

 凛とした教会内。冷たい空気。それすらもギャスパーにはどこか心地よく。


「ま、そんなキミだからお願いしたいことがあるんだけどね。引き受けてくれる?」


「やだね。面倒なことに巻き込むな。ウチのも」


「ウチの?」


 白々しい。ギャスパーの穏やかな問いをバッサリとリオネルは棄却。


「ベアトリス。シャルル。あとベルちゃんとか。〈ソノラ〉と〈クレ・ドゥ・パラディ〉に関する人々。どうせロクなことにならない」


 とりあえず手の届く範囲。普通にこのまま何事もなく過ごしていくのであれば、この老人の介入は不必要。今までに新作の香水のために手伝ったことはあったが、なんか今回は嫌な予感が強い。が。


「あー……はいはい……」


 と、曖昧な返答のギャスパー。右から左へ受け流す。都合のいい難聴。


 それはつまり。はぁ……と深いため息をリオネルは漏らす。


「……やってんのか」


 もうすでに。いつの間に。だからこの老人は。


 多少の申し訳なさを覚えつつも、ギャスパーは自分のワガママな興味を優先する。代わりにそれなりに報酬を用意するつもりではいる。


「まぁね。それとは別件だよ。今誘ってるのとは。色々プロジェクト抱えてるの。忙しいって言ったでしょ?」


 出来る男だからさ。水面下では色々と動いている。香水もそうだけど。色々と。


 そのまま数秒間、呼吸の音だけが場を支配する。よく冷えた十二月の教会の空気。それを肺いっぱいに詰め込む。少し痛いくらいの新鮮なそれを。


 口を真一文字に結んだまま、リオネルの瞳ははるか先にある聖母の像を捉えている。そして同時にうっすら見えるキリストも。


「爺さん」


「ん?」


 なにやらちょっとだけ真剣な口調に、笑みながらギャスパーは声を発した。そして。


「死ぬのか」


「うん」


 リオネルの衝撃的な問いかけにも、感情の起伏なくギャスパーは肯定する。

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