表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
ビートルズ
279/317

279話

 それを要件と言うんだろうが。舌で口内をいじりながらリオネルは鼻で笑う。


「いい性格してるわあんた。で、なんだよ。わかってんだよ、悪いこと企んでんだろ?」


「ひどいね。この店は一般人を疑ってかかるのかい? ただフラッと立ち寄っただけの」


「あんたのその手には乗らねーっつの。フラッと立ち寄っただけのM.O.Fが悪巧みしてないほうが稀だな」


 そのリオネルの答えはさすがに暴論だろう。と、他の友人であるM.O.Fをギャスパーも思い返してみる。が、たしかに言い返せないかもしれない人選。そういう人物だけがM.O.Fになれる? これも暴論。


「『芸術は、真実を悟らせてくれる嘘である』ってピカソも言ってただろう? 我々の仕事は嘘をつくこと」


 つまり。芸術家のつく嘘は、とても素敵なものなんだよ。正当化してみる。


 嘘には色々なものがある。相手を包み込むような優しい嘘。突き放すような冷たい嘘。プラスかマイナスか、という二極化は中々できない。人によって受け取り方も違うから、誰にでも通用するものでもない。


 そんな中でも、一応はM.O.Fとしての矜持をリオネルは併せ持っている。


「真実とか嘘とか、そんなもんはどーーーでもいい。受け取った側が幸せならな。ピカソがなんと言おうが、勝手に主語をデカくしないでほしいね」


 すごい人ではあるんだろうけども。残念ながら絵心的なものは持ちわせていない。なので反抗的。


「さすがフランスを代表するフローリスト。言うことが違うね」


 こういうところが好きなんだ。ギャスパーの内心で評価がさらに高まる。分野が違うとはいえ、素直にリスペクトできる。


 しかしその崇められているような『高み』。それはリオネルが嫌うものでもある。


「芸術とか。そんな高尚なものじゃなくて、生活の一部でいいのよ。その中でちょっとだけ特別」


 誰でもできること。誰でもできるようになること。そういったものだからいい。誰か才能のある人間しかできないことなど、どうせ廃れてしまうんだから。ずっと花というものが、この国で咲き続けていてほしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ