278話
入れないはずなのに。顔パスに近い形でこの人物は面白そうなところに顔を出す。今日の彼のセンサーはここ、この教会に働いた。足を自由に動かせてたら、つい勝手に。
うげ、とあからさまに嫌な顔をリオネルは見せる。
「感謝する意味がわからん。はっきり言って邪魔。俺もチョー忙しいの。わかる? この時期は色んなとこでショーだったりなんだったりがあって、俺様は引っ張りだこなの。あんたの相手してるくらいなら、是非とも若い女の子とカフェでコーヒーでも飲みたいね」
マシンガンのように拒絶の言葉を並び立てた。実際に、明日も明後日も仕事は埋まっている。バカンス大好きな国民なのに働きすぎでは? なんてこの時期は言っていられない。その代わりに休みはしっかりとあとでもらう。電話も繋がらないようにする。
こういった何気ない会話。それをギャスパーはなによりも楽しむ。長い付き合いであれば尚更。
「それは悪かったね。何人か知り合いにいるから、若い子紹介しようか?」
「犯罪の匂いがするな。遠慮しておく。あんたの力を借りなくても、ウチは娘の店に何人も女の子いるからねぇ。で、なんだよ。要件を早く言え」
完全に根を張り、しばらくは居座りそうな雰囲気を感じ取ったリオネルは、半ば諦めながら話を進める。あまり装飾はノエルっぽすぎず、控えめかつ大胆な色合いの花で攻めたい。となると。この老人にはさっさとお帰り願いたい。
このフローリストがまだまだ若手の頃から、ギャスパーは知っている。その尖り方。破天荒ぶり。風雲児。その人物がまぁ、と父のような気持ちにもなると言えばなる。
「せっかちだね。要件なんてないよ。ただ、通りかかったから入ってみようかなと。さらについでにキミがいたら挨拶でもして行こうかなと。さらにさらに忙しそうなら邪魔でもしていこうかなと」
最初のは嘘。最後のは本当。〈クレ・ドゥ・パラディ〉に行ったら、ここにいるとアルバイトの若い女の子に言われたから来てしまった。




