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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
ビートルズ
274/317

274話

 すんなりとテンポ良く進まない提案に、だんだんとジェイドの表情の雲行きが怪しくなる。


「おや、それは残念だ。断りの連絡は〈WXY〉のオーナーを通じてしておこう。いい話だと思ったんだけどね」


 名を売りたい、と言っていたはずなのに。世界有数の調香師ギャスパー・タルマですらお眼鏡に敵わないと。それでこそ私の相棒。気位が高い。


「待て。待て、オッケー?」


 違う違う、そうじゃ、そうじゃない。身振り手振りで落ち着かせながら、オードは頭を抱え込んだ。一旦。一旦深呼吸。まとめよう。


 自分としては、今回もショコラのカルトナージュ……をやらせてもらえるとは思ってはいたけど。当然のようにこの位置にいることに、なんの疑問も持っていなかったけど。それは……香水のほうは、自分がやっていいことなのか。


 ギャスパー・タルマはもちろん知っている。というか、香水も持っている。ロシュディ・チェカルディも知っている。両方ともにM.O.F。その繋がりで、こいつがそんな大役を任されるのも、なんか悔しいけどまぁよしとする。運とコネ。大事大事。


 こいつのショコラ作りを手伝うことはまぁいいとして、それはあくまでしっかりとした『囲い』があって。自分達だけ、まわりの数人だけで楽しんでいるような。ともかく、名前を売りたい、と思ってもそれには心の準備が必要で。それはまだ出来ていなくて。


 最初に出会ったのはまさにここ。変なヤツに声をかけられた、逃げよう、としか。そこから二ヶ月くらい。なんか、すごいことになってない……? もしかして、信じたくないけど幸運の女神的なヤツ? あたしにとっての。


 ジロジロと見つめられているジェイドだが、悪い気はしない。


「待つよ。待たされるのは好きだからね」


 しかし。


一歩引いて街を見物する余裕もある。余裕もある、というより。嬉しいのは嬉しいのだが。なんでだろう。


 



 心が。湧き立たない。




 一緒にひとつのショコラとカルトナージュを個人的に作り上げているほうが、脳が回転している気がする。吹き抜ける風が冷たい。

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