273話
反射しながら睨むオードだが、この膠着状態を解除するのは、こっちが折れるしかないということも理解している。会話はシンプルに。
「はいはい、そうですか。んで、どんなものになるの?」
「教えない」
「は?」
口を大きく開けて、ついにオードは振り返ってしまった。なんだか負けた気分。先に見たほうが負け、なんてゲームはしていないけど。きっぱりと断ったジェイドは、その理由について述べる。
「だってそうだろう。いつもどんなものになるかはわからないからこそ、私達は自由に考えることができるのであって。どっちかがどっちかに合わせよう、なんてのは邪魔になるだけじゃないかな」
とのこと。今までいいものが出来てきていた、と自負している。ならあっさりと方針を変えるべきではない。今回も同じようにやろうじゃないか。
表情を歪ませながら、オードは渋々それに理解を示す。
「……まぁ、一理あるっちゃあるけど。じゃあなに、あたしはノーヒントでどうにかするしかないと」
今まで通り。なんじゃそりゃ。今日、街を歩こうかと提案された。正直乗り気ではなかったが、別に家に帰ってもやることも特にないので受け入れたわけだけど。作り終わったからこれを参考に、とか手渡すということはないらしい。なんで呼ばれた?
小悪魔の微笑を見せつけながら、ジェイドも同様に振り向く。
「いつものことだろう? それに今回は、香水のほうもキミのカルトナージュが必要となっている。チャンスだね」
「……は?」
一瞬真っ白になるオードの頭。ガクン、と首が下がる。
「香水のほうもキミのカルトナージュが必要となっている。チャンスだね、と言ったんだけど」
「いやいやいや」
再度説明をわかりやすく噛み砕くジェイド。そしてそれを飲み込むことに時間のかかるオードは「ちょっと待って」と一旦距離をとってみる。




