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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
レディー・ガガ
256/318

256話

 さも当然のことのようにビセンテは認める。感情は動かない。


「入っていない。俺に任せたんだから文句を言われる筋合いはない」


 バーではノンアルコールももちろん存在するわけで。弱い人でも楽しめるように、様々なカクテルを即興で作り出す。ほんの少し分量を変えたり、普段使わないような野菜やフルーツを使うオリジナルも無数に店によって持っている。


 なにやら騒がしくなりそうな予感を肌で感じ取りつつも、ジェイドはそのカクテルに夢中になる。オレンジとシロップの赤が美しい。プースカフェのような、きっちりとした層で分かれているわけではないのだが、その曖昧な境目がとても。


「すごく綺麗ですね。なんていうカクテルなんですか?」


 まるで日暮の海辺のような。オレンジと赤に染まるそのカクテルの名前。


 材料を元の場所に戻しながらビセンテがそれに答える。


「『アリゾナサンセット』。無糖のソーダを使えばよりスッキリと仕上がる。このグレナデンシロップとオレンジの対比が、アリゾナの日没をイメージしている」


 今回使ったものは市販の炭酸飲料。あまり味が強くなく、色が濃いものでなければ、どんなものを使ってもいい。アレンジの幅も広く大きい。


 へぇ、と知識のひとつとして蓄えつつ、ジェイドは一点気づいたことがある。ハッとして顔を向けた。


「アリゾナ、ってもしかして——」


「ジャックの故郷だ。グレナデンシロップは糖度の関係上、下に沈みやすい。他にもサンセットと名のつくものは多いが、だいたい入っている。命名権は早い者勝ちだな」


 映画はビセンテも履修済み。なにかそれに関する酒はないか、と朧げに考えてはいた。その他カリフォルニアサンセットなどもあるが、こちらはアルコールあり。なぜノンアルコールを選んだのか。


 その答えはジェイドの口から。作中でも言及されていたことだが、それに合わせていることは明白。


「……作中で依存症になってましたからね、ジャック」


 アルコール依存症となり、いくつかの失敗を重ねて療養施設にまで入ることになるわけで。もしこの映画にカクテルを合わせるのであれば、こういったものも面白い。


 しかし諦めの悪い大人もいるわけで。


「ぐぬぬ」


「お前はこのあと仕事だろう。それで我慢しろ」


 未だ鋭く睨んでくるワンディを、キッパリとビセンテは突き放す。突き放すとはいっても、充分に納得のいく『カクテル』。文句を言われる筋合いはやはりない。

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