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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
レディー・ガガ
227/317

227話

 上手いこと全貌が見えたことで、多少なりとも納得がいったオード。


「さっきよりはわかってきたけど。なーんか引っかかるのよね」


 七割くらいは把握した。しかしこうなると全部しっくりこないと気持ち悪い。より追求してみる。


 たしかに少し話が行ったり来たりしたことで、わかりづらくなっていたことはビセンテも認めるところ。ならば一度リセットしてシンプルな例。


「紙に一本だけ線が描いてあったらどう思う」


 これ以上にないくらいスッキリと。白い紙に一本の線。縦でも横でも斜めでも、それはなんでもいい。


「なにも思わないけど」


 ピシャリとオードは言い切る。だがイメージはできた。鉛筆で描いた横線。濃さはHB。


「じゃあ、それをピカソが描いたという事実があったら?」


 そこに突然の巨匠の登場。ビセンテが付け足したのは、先ほどから何度か名前が出ていたスペイン人。誰しもが一度は『自分にも描けるのでは』という印象を抱いたことのある画家。


 当然のように、オードは詳しくない。めちゃくちゃ作品がたくさんある、程度。


「……一万ユーロくらいになる、かも」


 自分には全く響かないが、なんとなくそれくらいはいくのではないか。そんな気がする。


 まぁそれはビセンテにも予想通り。だがこれで終わらない。


「さらに、その紙が世界最古のものだったら?」


 なんか追加された。オードは辟易しつつも、


「プラスで百万ユーロくらい」


 と、だいたい試算してみる。いや、もうちょっといくか? なんせ世界で最も古いのだ。紀元前の話。その五倍くらいはするかも。


「さらにはピカソにとって最後の絵だとしたら?」


 思いつく限り値段を釣り上げる。こうなるとビセンテにも、正確な値段がよくわからなくなるが。


「プラス五百万。いや、なんなのこれ?」


 なんだかオードもさらに適当になってきた。ものすごい遠回りに歩かされているようで、ゴールというか本質が逆に見えなくなってきている。


 それでも口を止めないビセンテ。しかし手も止めずに、ポツポツと入ってくる注文をさばき切りながら。


「ピカソの絵が全て焼かれてしまって、現存する最後の一枚になったら? それが沈没したタイタニック号から出てきたら? 不思議だろう? たった一枚の紙切れに『情報』が足されることによって、価値は株価のように急騰する」


 積み重なれば積み重なるだけ。天井知らずで無理矢理に価値は揺れ動く。

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