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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
レディー・ガガ
215/317

215話

「綺麗な緑色……飲むの勿体無いくらい……」


 飲むのは自分ではないが、オードは率直な感想が口をつく。見入るほどの美しさ。


 どこにでもある酒と。どこででも買えるシェーカー。誰にでもできるシェイク。それを褒められてビセンテは多少恥ずかしさも覚える。


「いつでも作れる。これが『アフターエイト』。仕事終わりにちょっと飲もう、という意味だな」


 今はまだ時間にして早いけれど。まぁ、意味としては間違っていないってことで。


「『アフターエイト』……」


 なんだか不思議な名前。味わいや色などではなく、時間をテーマにしたカクテルにオードは関心を持つ。


 ひとつは完成。そしてもうひとつにビセンテは移る。


「オードさんへのカクテルは、ベイリーズ、コーヒーリキュール、ホワイトミントリキュールを同じようにシェイクして。で、カクテルグラスに注ぐ」


 先ほどとは使っている酒が違うだけで、やっていていること、動きは全く一緒。だが今度はカクテル・グラスに注ぐ。


 このタイプのグラスは量も少ない。これくらいなら飲んでも酔わなそうだな、とオードは安心。


「今度は乳白色……このカクテルの名前は?」


 先ほどの透き通る緑とは透明度も色も違う。なぜこれを自分に?


 ボトルを元に戻しながらビセンテは解説する。


「これも『アフターエイト』、色も味もグラスもなにもかも違うが、紛れもない同名のものだ」


 その言葉に衝撃を受けたオード。グラスを持ってまじまじと観察。


「これが? 全然違う……」


 似ているところなどひとつもない。でも同じ。なぜそんなことになったのか知りたい欲が出てくる。


 初めてオードの強い感情を悟ったビセンテ。


「面白いだろ。もちろん、同じカクテルでもバーテンダーの腕によって味は違うし、違う酒で代用したりってのもあるが。全く見た目さえも違う、でも同じ名前」


 逆にほぼ同じでも全く違う名前のものもある。そしていまだに増え続けている。昔であれば一般的でなかった調味料などが、スーパーや通販などで簡単に手に入るようになったことで、また広がりを見せる。


 そこになぜか誇らしげにワンディが割って入る。


「だねぇ。でも全く同じってのはそうそうないかな、そしてさらに——」


「まだあるんですか?」


 まるで科学者が実験するように。目の前で起きることに自然とオードはワクワクする。


 さらにもうひとつグラスを準備するビセンテ。先ほどと同じショットグラス。そこに再度注ぐ。


「コーヒーリキュール、ホワイトミントリキュール、ベイリーズの順にグラスに静かに注ぐと、比重の違いでプースカフェスタイルにもなる。また見た目が変わる。味は一緒だけどね」


 今度は混じり合うことはなく、しっかりとした三層。グラス内で下からブラウン、緑、白と神秘的な輝きを放つ。見た目にも楽しい、飲んで美味しいカクテル。

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