209話
実際、フランスでは飲酒以外にも喫煙は当然年齢による制限がある。だが、それに満たないはずのリセに通う学生達も、休み時間になると校外へ出て喫煙をする者が多い。それを取り締まる、などもしない学校がほとんどであり、半ば黙認されている状態なのだ。
なんにせよ、いつもまとわりつかれていたオードとしては、ありがたいような、ここからさらにややこしいことになりそうな、手放しでは喜べない複雑な状況。
「……ま、いっか。それで? なにか収穫はあったの?」
コトッ、と静かに後ろの棚にグラスをしまうジェイド。
「まだ始めたばっかりだからなんとも。それよりどうだい? カクテルを飲んでみるかい?」
なくなったオランジーナ。それを確認して提案。
カクテルぅ? オードは嫌味を含んで睨みを効かせる。
「飲めるものとかあるのかね……そもそもあんた作れるの?」
ショコラばかりで生きてきたヤツが、そんな簡単に作れるものなのだろうか。少し興味はある。飲んで文句を言うところまでは確定。
待ってました、とばかりにジェイドはさらに饒舌具合が上がる。
「普通ならダメだろうけど、ノンアルコールカクテルなら。それでもお客さんに出すのはまだ早いからね。友人にならいいって話だ。お任せでいいよね」
さらっと流しそうだが『友人』という表現の仕方はまだオードにはピンとこない。言い換えを希望したいが。
「……なんか引っかかる部分があるけど……メニューはどれ?」
とりあえず置いておいて、どんなものがあるのかは知りたい。
あまり覇気を感じないそのお客に対し、ジェイドは顔を近づけて持論を展開する。
「メニューはない。あるとこもあるけども、ないところも多いんだ。その時の気分に合わせて作るからね。知っているかい? 酒は薬でもあるんだ。ショコラもだったけどね。医者は患者の症状を見て適切なものを出すだろう?」
どんな病気なのか。痛みの種類、頻度、程度、その他諸々の病。それらから結びついた結果。そこから薬は選ばれる。
実際、バーテンダーはいい意味での他人と称される。近くないからこそ、一歩引いて冷静な判断。お酒を通してじっくりと話し合える。ここではそうもいかなそうな騒ぎだが。
言いたいことはわかるようなわからないような。そもそもあんたはバーテンダーじゃないだろう、とオードは反論したくもなったが、面倒なのでそのままにする。
「いや、別に気分もなにもないけど……強いて言うなら落ち着いたの」
こんな曖昧な注文でもいいのか、と顔を顰めつつとりあえず則ってみる。




