207話
「ほえー。なにか役に立つ情報でもあればと思ったけど、中々難しいねぇ」
なにかしら手伝えるものがあれば、と色々と画策してみたが不発に終わったポーレット。中々に難しい技術のようだしで、唇を硬く結ぶ。
その心意気がジェイドには嬉しい。
「そんなことはないさ。先人達はすでに様々なことを成功させている。新しいものを、という意志は大事だが、すでに存在するベーシックの中にヒントがあることも多いからね」
仲間が支えてくれている現実。その間に自分は映画を観ながらショコラを食べる。だけ。楽をしつつの勝利を目指す。勝利、という明確な基準はないが。
そう言われるとポーレットも単純に破顔。上手いこと踊らされていることには気づかず。
「うーん……しかし形そのままのショコラ……どこに行けば買えるのか……」
そして気になる。画像を見ていたら食べたくなる。これ人類の知恵。
含浸しているものであればそれこそ数多く売られているが、真空を使った技術は特殊ゆえにパリでもあまり見かけることはない。年に一度のサロン・ド・ショコラにも出品されるかは不明ゆえに、ショコラ先進国のフランスですら実物を拝んだことがある人間は少数。
指を唇に当ててジェイドは思考を巡らせる。自分だけでは考え付かなかった角度からの打撃。なにかのきっかけになるかもしれない。
「それに関しては私にもどうにもできない。できないが——」
「が?」
あまり興味はないけども。一応ポーレットは聞いてあげる。
自分だけではどうにもならないけれども。さらに仲間に頼る気満々のジェイドがボソッと呟く。
「……なにか替えのきく技術があるかもしれないな。そこから当たってみるか……」
「お? お?」
役立っ……た? わからないがポーレットには好感触。
すでにエンドロールも終え、スクリーンには他作品の紹介動画が流れ始める。その中でジェイドはレディー・ガガの魂の歌声を思い返しながら、テーマである『愛』のパズルピースを埋める作業を開始した。




