表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
レディー・ガガ
196/317

196話

 キッチン担当になってから、色々と考え込むことが多くなった気がする。やはりお客さんと触れ合うことが少ないので、塞ぎ込みがちになってしまう。結果、自問自答を繰り返す日々。いいのか悪いのかはわからない。ゆっくり考えたい時もあるが、誰かと話して頭よりも体を使いたい時も。


「ジェイドさん。ちょっといい?」


 またもワンディ。ラテアートについて。しかし今度は先の件とはまた違い、お客さんからお呼びがかかったとのこと。もうすぐ閉店の時間。混雑時には無理だが、空いていればお客とスタッフが話し込むのはお国柄。


 はて、なんで呼ばれたのだろうか。確かラテアートの注文はスワンだったが、思い返せばフェニックスを描いてしまった記憶がある。それだろうか。飛んでいれば別によくないかい? そんな自分への言い訳と甘やかし。


「お待たせしました。ジェイド・カスターニュと申します」


 指定された場所。窓側の席。ひとり。


 街灯に照らされ行く人々を見送りながら、静かにカフェラテに口をつける少女。向き直り、緊張の面持ちでジェイドに話しかける。


「忙しいところに……すみません。とても素敵なアートだったもので。どのような方が作っているのか、気になってしまって」


 ミルクティーのような髪色に、透き通るような透明感の肌。ぷっくりと桜色の唇から、優しい声が紡がれる。鼓動も少し速い。


 可愛らしい子だな。それがジェイドの第一印象だった。少し物怖じしているその姿も。何もかもが可愛らしい。それと。


「いえいえ。手が空いていましたから。それよりその制服。ケーニギンクローネですね。初めて見た」


 モンフェルナ学園の姉妹校、ドイツのケーニギンクローネ女学院。自身もルカルトワイネなので姉妹校だが、パリで会えるとは。というかなぜ制服? いや、可愛いから許すけども。


 あぁ、これは……と少女は胸に手を当てる。


「一週間ほど、パリでお世話になるので。というかご存じだったんですか。もしかして、学園の——」


「あぁ。そうみたいだね。ちなみに私も留学で来ている。ベルギーのルカルトワイネ」


 ドイツ人とベルギー人がパリでフランス語で会話。不思議だね、とジェイドは笑う。言われてみればフランス語が多少拙い? という部分が。だが、全く問題ないレベルだし、最初は気づかなかった。まぁ、自身も母国語というわけでもないが。オランダ語が一番話しやすい。


 同じ境遇。そして飲食に関わる仕事。一緒ですね、と少女は握手を求める。


「ユリアーネ・クロイツァーと申します。ベルリンのカフェで働いています」


 細く小さな手。指先。それをしっかりとジェイドは握る……前に、手汗を拭う。少し緊張していたのは自分も同じ。


「よろしく。ユリアーネさん。ところでさ」


「……はい?」


 真剣な眼差し。威圧されるようにユリアーネは身が強張る。なんでしょうか?


 顔を近づけ、真っ直ぐ目を見てジェイドは問う。


「『愛』……ってどんなだと思う?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ