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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
レディー・ガガ
191/317

191話

 えぇ……と渋い顔をしつつも、それが望みならば応えるのがフローリスト。深呼吸をしたシャルルは準備に入る。全く了承したくないが。


「……ちなみになんで僕が——」


「いや? 面白そうだったから」


 言ったあと「あたし、性格悪くなってる?」と自戒したが、オードにはそれ以外に理由はない。理由なく言ってしまっているあたり、性格が曲がってきたのかもしれない。その要因はいくつか思い浮かぶ。ヤツ。


「大丈夫かな……」


 ソワソワと作業を見守るしかできないベル。本来なら自分が、と言いたいところだが、今の自分には全く思いつかない。ゆえに黙認。


 『恋』や『愛』を表現する花は多い。そもそもが花を贈る行為そのものが、かつてオスマン帝国の『セラム』という習慣に基づいている。それは想い人に様々な贈り物をするものであったが、その中に花も存在した。そこからきている、と言われている。


 困ったことにはなった。が、そういった注文は今後増えてくるだろう。いい経験だ、とシャルルは切り替え、イメージを膨らませる。


「恋、想い、愛……」


 中々に自身には不足しているテーマ。しかもシャルル・ブーケの『恋』。思い浮かぶのは……イスに座って縮こまる少女。


 その視線の先のベルは、ちびちびとコーヒーを口にしたりと落ち着かない様子。


(うわぁ……自分のことみたいに緊張する……いや、自分のこと、だったらいいけど……)


 そんなことを考えながら。


 どう見ても両想いなのだが、その寸前で止まっているであろうことは、すぐにオードには判別できた。というか誰にでも……いや、ジェイドにはわからないかもしれない。あいつはそんなヤツ。


「なんだかねぇ……」


 これは充実した日々と言っていいのか? わからないが、少しずつ実を結び出した自身の成果。


 三区にあるピアノ専門店『アトリエ・ルピアノ』。そこに商品を置かせてもらえることになった。ピアノをイメージしたカルトナージュ。厚紙を切って布を貼るフランスの伝統芸能。将来の夢。


 ショコラティエールを目指すジェイドとは、名前を売るためだけの関係。あいつが勤める老舗ショコラトリー〈WXY〉で地位が上がって、新作を作ることができるようになった時。その箱をカルトナージュで。お互いにメリット。


 しかし現実は。見本品として二作、最新作『ムーン・リバー』は情報なし。ただ、アトリエの従業員が気に入ったため、ピアノのカルトナージュ依頼。それはありがたく引き受けた。


 それ以外にも花屋やパン屋にも営業を持ちかける。実力があれば仕事が舞い込んでくる、なんて世界ではない。普段あまり使われない世界に広げていくことが重要。さて。どうなっていくかね。


「恋。恋……」


 少しずつ落ち着きを取り戻し、シャルルは花を思い浮かべる。自分に咲くアレンジメント。素直に。正直に。

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