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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
オードリー・ヘプバーン
180/318

180話

 元々、ジバンシィの創業者、ユベール・ド・ジバンシィはオードリー・ヘプバーンとは人違いで出会った、と言われている。同じヘプバーンではあるがオードリーではなく、キャサリンと会う予定だった。しかしオードリーの魅力にいち早く気づいたユベールは、数多くの衣装を提供した。そのひとつがこのドレスである。


《なるほど。エンディングは確かに白いコートになっている。対比ってことか。で、なんで中身までわかるの?》


 最初と最後でオードリーは大きく異なっている。頷きつつも、またさらにギャスパーは疑問を持った。自身もまだ、なにも正解は知らない状態。


 さらにシシーは推理を大きく展開していく。


「大きく対比しているケーキといえばそのふたつ、なおかつアメリカで生まれたものですから。合っていましたか?」


 違うかもしれないが、おかしいところはひとつもない。合っていなくてもいい。ただの直感。外れる時は外れる。


 急いで『WXY』のオーナー、ロシュディから送られてきた内容をスクロールして確認するギャスパー。まさか、とは思う。まさか画像だけでここまで。そんなことがあるのか? が。


「……合ってる」


 寸分違わぬ読み通り。まるで制作時に隣にでもいたかのように。前も感じたが、ドイツ人怖い。


「そして——」


《まだあるの!?》


 ここまででも充分驚きだが、まだ彼女は気づいたことがある、とギャスパーの脈拍が上がる。


 それについてはマティアスのほうから、まずいつも通りヒント。


「アイスっぽい容器にあった花。不思議だと思わなかった?」


 ワンポイント、文字通り華やかさを添えるカルトナージュ。そこにも意思が込められている。


 だが、ギャスパーにとっては見た目の補正以外には捉えられなかった。


《花? オードリーは可憐な花だから、とかじゃなくて?》


 歴代でも五本の指には入るであろう、輝きを放つ女優。ならば花で飾るのもなんらおかしくはない。どれだけ意図が介入してくるのか。


 ここはマスターであるマティアスがそのまま、自分の番とでも言わんばかりに主張。


「ゼラニウム。オードリーを表現するなら薔薇とか。彼女の名前の入った薔薇もあるくらいだし。もしくは清廉なイメージのある百合とかね」


 なんとなく、引っかかる種類の花のチョイス。無視するにはちょっとモヤモヤとする。


《……そう言われるとたしかに。ゼラニウム……なんで?》


 同意見のギャスパー。その妙に、不安のような緊張感が増す。


 ここでシシーにバトンタッチ。もう最後まで読み切れている。


「ゼラニウムにはいくつか意味がありまして。『育ちの良さ』やそれ以外には……『偽り』」


 かつては上流階級の人々が多く育てたことで、前者のような花言葉を持つようになったが、後者のような意味もある。このカルトナージュが意味するもの、それはおそらく後者。

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