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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
オードリー・ヘプバーン
170/317

170話

「虹……」


 そこまでは辿り着かなかったジェイド。だが、



 『なにか』



 この瞬間に思いついた、ような気がする。


「雨と虹。正反対ではありますが、雨が降らないと空に虹は見えないですから。さらに、今はもう空にいるチャップリンですが、いまだに我々の視線を浴びているような気がして」


 クロエの独自の解釈。今なお愛される喜劇王という存在感。彼のカリスマ性が、みなの想像の純度を引き上げている。


(正反対……)


 ここにも『なにか』ある。せっかくショコラを作ってきてくれたクロエに悪いと思いつつも、ジェイドは自身の思考を優先する。もっと深く。鋭く。広く。埋まったお宝に指が触れた感覚がある。


 一応クロエも生徒。ということは弟子。ワンディとしては、勝手に育っていくのが逞しくもあり、切なくもある。


「だから虹。非常に簡単に作れる。誰もが楽しめる、どこからも誰からも輝いて見える彼を表しているようだ」


 ホースから水を放てばすぐ会える、そんな親しみのある七色の彼。時代を超えて我々を楽しませてくれる。


 少しずつまとまりつつあるジェイド。ショコラを口にすると、ほのかに甘く、優しい、それでいてしっかりと食べ応えのある重さ。


「スイスといえばミルク……あっさりとしつつも、コクがあって後味はクリーミー。味もスイスに寄せていますね」


 普通に売ってほしい。フランスやドイツのような、ガツンとくる衝撃ではなく、少しずつ波紋のように広がるスイス独特の余韻。ロッキングチェアで揺れながら食べたい。


「はい。広大な牧草地で育った乳牛のミルクは、非常にスッキリとしているのが特徴です」


 ミルクショコラに適した土地、脂肪球の大きさなども関係しているのかもしれない。クロエが自信を持ってお届けできる組み合わせだ。


「たしかに。いくらでもいけるね。さすがスイス。酒に合いそう。で? どう?」


 もうなんでもありなワンディではあるが、しっかりと捉えている。目線を移す。


 その先にはゆったりとショコラを味わうジェイド。舌の上で転がる甘い虹。溶かしながらその問いに返す言の葉。


「これ、持ち帰りもらえます?」

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