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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
オードリー・ヘプバーン
168/317

168話

 その告白にジェイドは目を剥いた。


「え、チャップリンを……ですか? でも売るのは——」


「はい、売るつもりはありません。身内で食べるためにです」


 安心してください、とクロエは落ち着ける。財団のこともすでに把握済み。


 少しやる気の戻ってきたワンディ。身を起こしてニヤリと笑う。


「へぇ、いいね。ライバル心剥き出しだ。私とキーラみたい。というのも私と彼女は——」


「どうでもいいです。お二人ぶん作ってきましたので、どうぞ」


 いらぬ知識は最初からお断りするクロエ。というかもう酔った彼女から七回は聞いたこと。


 受け取ったジェイドは真上、横から余すところなく観察してみる。結論。


「小さなハットボックス……に、ボウタイのようなリボン」


 つまり名前が出ていた通り、これは彼の特徴を表しているわけで。


「すでにチャップリンぽい。いいね」


 するりとワンディも参戦。若い者のアイディアを楽しむ準備はできた。


 ゴクリ、と唾を飲み込むジェイド。なんとなく緊張する。自分のショコラに自信はある。だがなんとなく、このショコラもすごいものという予感。


「では開けます」


 ハットの部分を上に持ち上げると、中には袋に入った板状の、つまりタブレットショコラ。ほんのりと優しい褐色。


「……これは……」


 先に声を上げたのは以外にもワンディ。タブレット。が、割れている。もちろん、持ってくる際に割れてしまったわけではない。ジェイドのものも同様になっている。


 そして詳細をクロエの口から。


「ミルクショコラです。マルトーで割った形にしました」


 マルトーとは金槌。出来上がったタブレットを、あえて不均等に割って袋詰めしたもの。それが彼女にとってのチャップリン。


 頭がついていかない。美味しそうなショコラをあえて割る。ジェイドの頭には疑問符。


「マルトー? なぜ——」


 と、ここで今日初めてワンディに目線で話題を振る。酒癖の悪い、適当で行き当たりばったりで、他人の迷惑など気にしない無責任な彼女に。いや、ちょっと言いすぎたか。


 テーブルをトントン、と軽く指先で叩き、考えをまとめるワンディ。ミルクショコラ。マルトー。そしてチャップリン。なるほど。


「そういうこと。まるでブロンデルね。そしてブロンデルといえば——」


「スイスです。ミルクショコラといえばここ。そしてコンチングの生まれた場所」


 推理で大体は読まれてしまったが、先を継ぐのは作り手のクロエ。

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