149話
「今のところはこれというものは。決めあぐねている、ということは、なにも決まっていないということさ」
あっけらかんとジェイドは進捗報告。色々なところにヒントがあるのはわかる。だが取捨選択に戸惑う。捨てていいアイディアなのか、残すべきか。引越しする時も思えば結構悩んだなぁ。
ここで叱咤激励でもするべきなのかどうかはわからないが、オードからしたらダメならダメで他の方法を捻り出すわけで。連続して期待を裏切られた結果、あまり過度にはしないほうがいい、という結論に至った。
「ふーん。ま、あたしができることといえば、カルトナージュしかないわけだから。効果的なアドバイスを求められても無理無理」
できることとできないこと。人にはそれぞれある。自分にショコラ作りは荷が重いし、コイツにカルトナージュもそう。完全分業制。適当に待つ。
なかなか力を貸してくれそうにない相棒に対し、初の共同作業を思い起こさせるジェイド。
「だが前回の角砂糖の件。二人だからこそ解決できたわけだ。あれだよあれ。私達ならなんとかなる」
ほら、ゆっくり深呼吸して、と催眠術でもかけるかのように優しく語りかける。
だが、オカルトの類も一切信用しないオードには全く効かない。
「あたし、なんかやったっけ? あんたが結局解決したんじゃない? いまだによくわかってないし」
少しだけ悔しそうにしたあと、話を進めるジェイド。
「オードが修道士とマリーに気づいてくれなかったら、きっと正解できなかった。それに、花をイメージしたカルトナージュ。あれは見事だ。仕掛けまであるなんてね」
予想以上、想定以上のものを作ってくれた。桜をイメージしたもの、とそれだけで。どこかでいい閃きでもあったのだろうか。
「純粋なのとは違うけどね。なんとなく、いけると思ったから」
収納されていた花びらが開く演出は、カルトナージュというよりかは手芸の一種。まぁ、オードにはルールなんてない。あっても知らん。
やはり彼女しかいない、とジェイドが心に決めた瞬間だった。自分の勘が怖い。
「ショコラはショコラだけでは完成しない。料理は容器も込みで料理だからね。今後も頼むよ」
「いいからなにかアイディアを出せ」
遅々として進まない作品。だが、オードはこういう時間も案外悪くない、と考えを改め始めた。




