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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
オードリー・ヘプバーン
146/317

146話

 ……ピタリ、とオードの動きが止まり、ジロッと目線だけ流す。


「……なんであんたはあんたで別のもの頼んでんの? あたしの悩み相談なんでしょ? あんたは関係なくない?」


 一応は依頼主である自分はまぁ……わからないでもない。いや、ちょっと無理やりな気もするが。そこへ二個ぶんの料金を取られることになるというのは、うん、まぁ、おかしい。


 キョトン、とした顔のジェイドだったが、あぁ、とひとり合点がいった。


「なるほど。いや、私のは単純に興味だ。気になっていたんだ。なら食べてみたいだろう、世界一の味を」


 世界一……いい響きだね、と店構えをもう一度網膜に焼き付ける。いつか。自分も。こんな感じの店を。


 しかし一切解決していないことを、オードは理解している。


「で、なんであんたのぶんまで奢らなきゃいけないわけ?」


 そこ。全く繋がっていない。ひと口くらいだったら食べさせてあげても、という気もあったが、まさかのがっつりと一人前。ひと口ぶんもあげる気がなくなった。


 ツッコまれたジェイドは、うんうんと唸りながら、それっぽい口上を並べる。


「それはほら、あれだよ、相談料だ。一応、私もプロだからね。バイトだけど」


 お金をいただいて、お店の顔として販売している。それはつまりショコラのプロ。なら、しっかりと責任を持ってお金を取るのが筋というもの。これだ。


 当然、オードとしても納得はいかない。


「さっきは診察料とか言ってなかった? なんで相談料まで追加されてんの?」


 それの答えとしてトントン、と頭を右手人差し指で叩くジェイド。目線は空。


「なんかね、インスピレーションが降りてきそうなんだ。ピスタチオとショコラ。なにかありそうなんだよ」


「そりゃあるでしょ。すでに発売してんだから」


 オードの指摘通り、ピスタチオにショコラをコーティングしたものはスーパーでも市販されている。特別真新しいものではない。


 はぁ、とジェイドのわかりやすいため息が宙に舞う。


「……わかったわかった。オードにもあげよう。それでどうだ」


「いや、だから全部あたしのお金だっての」


 なんかもう、せっかく来てこんなことでケンカするのも、列に並んでいる他の人達に悪いのでオードが先に折れる。はいはい。


 そうして回転は早く、購入したグラスを持って歩き出す。やはりクリスマスマーケットが近づいてきているためか、人口密度が上がっている。その間を縫うように目的地へ。


「なんだかんだ言ってオードは優しいからね。ありがとう」


 いい終わりにひと口、ジェイドが食べる。ピスタチオのフレーバーが強いが、香ばしさとのバランスがいい。コーンとの相性も。若干の塩が飽きさせない味。これは売れる。

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