表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
オードリー・ヘプバーン
142/318

142話

「というわけで、思いつくことがあったらじゃんじゃん言ってくれ、私の天使よ」


「気持ち悪っ」


 本日も他力本願でショコラのアイディアを創造するジェイド。自分だけでどうにかしよう、なんてカッコいい考えは脳の片隅にもない。地球上の生物・無生物関係なく自分の師匠。地球の後輩。それを率直な感想で返すオード。


「カルトナージュはともかく、なんであたしがショコラまで作成しなきゃいけないのよ。それはさすがにあんたでしょ」


 ほんの少しだけ、歩み寄ってはみる。自分が有名になるならなんでもする。だが、ほんの少しだけ。こいつといると面白い。かもしれない。かも、だからね?


 凱旋門の見えるシャンゼリゼ通り。学校終わりになんとなく、二人で歩く。車の往来の激しいこの通りでは、歩道の並木道は職人によって美しくカットされる。すでに道行く人々は厚着をして、冬の到来に備えており、抜けるような青空ではあるが、寒々しさも見え隠れしたパリの午後。


「別に身構えて作ろう、なんて思わなくていいんだ。私も自然に任せている。ただ、いいアイディアが生まれたら頼むよってこと」


 あの手この手でジェイドは取り込もうとする。いいアイディアはどこに転がっているか、どこから生まれるか、誰が持っているかわからない。ならば、最初から両手を広げて全部受け止める構え。


 その点については理解するが、オードが気になったこと。


「で。あんたが言ってた『オードリー・ヘプバーン』のショコラは——」


「おっと。それ以上は秘密だ。秘密というか、なにも。だが、それ以上に大事なことに気づいたんだ」


 妙に気取りながら、役者のように台詞を語るジェイド。木に手をつき、もはや演じる。


 さっさと答えを欲しいだけだったオードは、若干面倒になってくる。むしろ答えもいらない。


「は? なに?」


 一応聞く。


「みんなの悩みを解決できるような。そんなショコラが作りたい。新作は二の次だ。焦ってもいいものはできない」


 クロエと関わってジェイドが気づいたこと。それはショコラティエールとしての本質。もちろん、新作を考えることがそうではないとは言わない。楽しんでくれる人だって、どこかにいるかもしれない。だが、幸せになるような。食べた人がほんの少しだけ、重かった気持ちが軽くなるような。それをショコラで届けたいだけ。


 という、憑き物でも落ちて晴々としたような、インドのガンジス川で悟りでも開いたかのような、達観した目の前の少女に対して、ただただ怪しむオード。


「……なんかすごくまともなことを言っている気もするけど、まぁいいや、ならほら、あたしの悩み。解決してみてよ」


 こうなったら乗っかってしまったほうが早い。ボロを出すまで踊ってやろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ