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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
オードリー・ヘプバーン
140/318

140話

 クラシック畑でずっと育ってきたフォーヴには、新しいショコラを考えるなど初めて。ショコラが好きだった作曲家はたくさんいる。有名なところでいうと、ショパンにヨハン・シュトラウスにサリエリにプレヴィンなど。そこでハッとする。


《……もしや、ショコラの表面に楽譜を書いて、なんの曲か当てるゲームを——》


「全然違う。けど、面白そうだ。それいただき」


 できたら最初に彼女にあげよう。いいアイディアをもらってご満悦のジェイドは枕をギュッと抱きしめる。


 会心の答えだと思っていたが、即否定されてしょげるフォーヴ。となると、最後の可能性。


《……ショコラと一緒に、なにか付加価値のあるものが入っている?》


 おまけつき。たしか日本のお菓子には、チョコレートと一緒に様々なシールが付随しているものがあると聞いたことがある。ランダムに封入されている、とか。


 違うといえば違うのだが、このままいくと時間がかかりそうなので、ジェイドは答えのほうから徐々にすり寄ることにした。


「彼らはショコラティエでもなければパティシエでもない。ショコラ好きのイラストレーターなんだ。それが転じて店を持つまでになったみたいでね。コレクターアイテムとして集めている人が多いんだ」


 となると、かなり絞れてくる。イラストを使う部分。フォーヴもピンときた。


《なるほど、包み紙。それがランダムに入っているということか。おそらくロシアから影響を受けたのだろう。たしかに、なにが出るかわからないというのは友人同士でも盛り上がるね》


 一九世紀以降、ロシアでは社会風刺などを新聞以外にも、お菓子のパッケージなどで表現する文化が存在した。特にその中でもショコラの包み紙は、ニュースと同格に並べられるほどの価値があり、重宝されてきたのである。


 情報社会となったその後も、その時代のレトロなデザインは人気を博しており、独創的なイメージはロシアで引き継がれている独自の意識となっている。それをフランスのショコラにも移植した結果、ショコラティエ達では不可能な見地に達した。


 どこから新しい風が吹くかわからない。ジェイドは世界の深さと広さに脱帽。


「そういうこと。毎日勉強だ。こんな方法があるのかってね。だが、来れてよかった。友人もできたし」


 イラストレーターからショコラの新しいスタンダードが生まれてくることもある。もしかしたらスポーツ選手や、大工などからも生まれるかもしれない。頭を柔らかくしよう。


 勝手に心配していたフォーヴだったが、楽しそうにしていてなにより。


《へぇ。キミはこっちにいた時も、そんなに人とつるむことはなかったのにね。性格も明るく、誰とでも会話するのに、特定の誰かというのがいない。私くらいなものだったか》


 コミュニケーション力は高いのに、なぜかひとり。そんな印象だった。不思議ではあったが、フランスでは上手くやれているようで安心。あまり電話ができないのも、充実している証拠か。

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