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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
オードリー・ヘプバーン
134/317

134話

 悩み方からして、ジェイドが気づいたことを悟ったクロエ。種明かしの時間。


「はい、ベネズエラ産のカカオを使っていますので、若干のナッツの香りがする、バランスのいいシェケラートになります。ですがウチは——」


 そう言いながら目線を壁に設置された、販売用の瓶に移す。


「一〇の産地ごとにショコラソースがありますから。スパイシーなドミニカ産、濃厚で舌触りのいいブラジル産など、気分や好みによって変えるのもありかもしれません」


 つまり、このシェケラートも数ある味の中のひとつ。さらにエスプレッソの豆も、もっと浅煎りに変更するなども可能。無限の味わいがある。


 圧倒されるジェイド。なんで売り物じゃないんだろう、と疑問しかない。


「……すごいですね。知識もそうですけど、意外性というか。なにが出てくるのか楽しい、というか」


 ショコラのワクワク感。長く触れすぎていて、忘れていたもの。元々は薬だったが、しっかりとジェイドに処方された。


 楽しい、という発言にふと、クロエはシェーカーを持って凝視する。楽しい。なるほど。


「たしかに、遊んでいるという感覚のほうが強いかもしれませんね。シェケラートもやり方は知っていましたが、初めてやりました」


「い!?」


 ジェイドは飲んでいたシェケラートを唇から離す。いや、美味しいからいいけど、実験台のようにされていた事実。


 その経緯をクロエは説明する。


「キーラさん……ウチの店長は、練習なんかさせてくれません。本番だけです。練習というものはないんです」


 なのでこれも本番です、と自信を持って勧めることができる。味見もしていないけど、なんとなくイケる気はしていた。


 まさか、と思い確認せざるを得ないジェイドは、一歩彼女に詰め寄る。


「え、いやでもほら、試しに作ってみる新作とか、そういうのもあるじゃないですか。失敗だって——」


「失敗したら、《失敗しました》っていう表記をして売ります。もちろん安くはしますが、それでも結構売れるんですよ。食べられないものは入ってませんし、わかって買っていくわけですから、ノークレームノーリターンです」


 最初の頃は、とは言いつつも若干の怯えがクロエにはあった。しかし、驚くほど否定の声は聞こえてこなかった。わかって買っているうえに、味が変わらないものも多い。なら安いのはいいものだ、と。


 そんなのアリ……? と探りを入れつつ、さらにジェイドは質問を重ねる。


「新人の頃のものも、ですか?」


 その通りだとすると、入社初日から作ることになるかもしれない。ボンボンすらまともにできないだろう、そんな状態でどうするつもりなんだ?

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