表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
オードリー・ヘプバーン
133/317

133話

 苦笑しつつも、ジェイドが気になるのは手元。まさかシェーカーを使うとは。


「それで、私のショコラとは——」


「はい、このビアレッティのモカエキスプレス。本来ならエスプレッソマシンで淹れるのが一般的ですが、そんなものはないので、直火式です。これを氷が入っているシェーカーに注ぎ、ミルクも同量。そして振る」


 氷・砂糖・エスプレッソ・ミルクが混ざり合う液体。さらに豆知識として「砂糖をまず最初に入れてください。クレマが分厚くなります」とクロエ。シャカシャカとシェイカーを振り、急激に冷やすと共に空気を含ませる。


 飲んだことはないが、知っているかもしれないドリンクに、ジェイドの心臓がトクン、と小さく跳ねる。さらに最後に残ったショコラソースを組み合わせるなんて。


「……これってもしかして」


 振り終えると、クロエは静かにシェーカーをボンボンショーケース上部の平らな場所に置く。レジ上は酒飲み達が好みの味を作ろうと悪戦苦闘しているため。


「はい、シェケラートです。が、少し違います。グラスもフルートグラスがいいでしょう。ここに当店オリジナルのショコラを適量。その上に静かにラテを注ぐと——」


 グラスの底にはソース。雑にならないよう、スプーンの皿裏を使ってゆっくりと液体を注ぐと、フロートするようにグラス内に広がるカフェラテ。そしてクレマ、つまり泡の部分が上にくる。


「……層、になってますね」


 美しく芸術的でもあるドリンク、シェケラート。簡単に作ったはずではあるが、ジェイドは心を撃ち抜かれたように見惚れる。三層に分かれたそれは、飲むことを躊躇うほどに。


「はい。糖分による液体の比重が違うので、いわゆるプースカフェスタイルになります。どうぞ」


 スッとグラスを差し出すクロエ。中が少し揺れるが、混じることなくまだ層を保つ。


 とはいえ、飲み方がわからないジェイド。ひと呼吸置いてから問う。


「これは、このまま?」


「まずは、ラテの味を。そして少しずつショコラソースを溶かしながら。徐々に変わっていく味も楽しんでいただけたら」


 注ぐのに使用したスプーンも差し出すと、クロエはオススメの飲み方を伝授。いいところで混ぜて、と。


 その通りにジェイドはまずひと口そのまま。ラテとクレマを一緒に。そしてスプーンでかき混ぜると、層はなくなり一色に。勿体無い気持ちを抑えて喉を鳴らす。


「……美味しい。エスプレッソの苦味、そのあとに少しずつ甘さとコクがきます。このショコラは……」


 ただのショコラではない、と確信。甘さだけではない、ほのかにウッディな香ばしさ。ということは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ