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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
オードリー・ヘプバーン
132/317

132話

 閉店時間におしかけたにも関わらず、オリジナルのショコラメニューを振る舞ってくれる。感謝しつつも、首を傾げるジェイド。


「……なぜ、こんなに色々としてくれるんですか?」


 店長同士が友人だから、とまとめるにはいささか強引だ。弱みでも握られているのだろうか。


 シェーカーに氷を入れながら答えるクロエ。元の無表情に戻ってしまった。


「……特に理由はありません。強いて言うなら、食べてもらって感想を聞かせてもらえるから、ですかね」


 冷淡だが、少し熱量もある。美味しい、と言ってもらえたら嬉しい。


「でも、アイディアとか他店にバレてしまってもいいんですか? 最初は懐疑的でしたけど……」


 今回のダイキリもそう。ワンディならやりかねない、明日には何食わぬ顔で新作と打ち出している可能性を、ジェイドは否定できない。


 その点については覚悟しているクロエ。しかし仕掛けもある。


「よくはないです。でも、ほんの少しだけカカオの含有率や、産地を変えるだけでも全く違うものになります。ショコラの面白いところです。なら、他の店舗でどう進化していくか、見てみたい気持ちもあります」


 ショコラ界全体、というと壮大すぎることはわかっている。だが、それがきっかけでなにか、面白い流れになったら、自分に返ってくる。ならば問題ない、と割り切っている。


 一歩も二歩も引いて俯瞰する彼女に対して、感嘆するしかないジェイド。


「……すごいですね、私はそんな余裕、持ってませんでした」


 真似されたらどうしよう、ではなく、真似された後のショコラの発展を楽しむ。もうすでに誰かが踏み入ってレールを敷いているかもしれないが、新しい景色が見えるかもしれない。一点しか見えていなかった自分が恥ずかしい。


 だが、手を動かしながらもクロエは否定。砂糖をシェーカーに。


「余裕があるわけではありません。カカオについて、ショコラについて、もっと知りたいだけです。この店のオーナーに教えていただくうちに、奥深さを知ることができました」


 このメニューもそう。店にはないが、作ってはいけないというルールはない。店員達だけの特権。感想をもらえるならさらにありがたい。知識が増える。


 オーナー、という単語に飛びつくジェイド。少しだけワンディから聞いている。


「メートル・ショコラティエの方ですね。いつかお話ししてみたいです」


 そこになにかヒントがあるかもしれない。ピアノの調律からだってショコラのヒントがあったくらいだ。より高度な知恵を貸してもらえる説が濃厚。


 しかしクロエは少々呆れた表情に変化する。


「よく二日酔いになっているので、できるかはわかりませんが」


 ダイキリの酒も彼のもの。だからこそできたレシピではあるが。

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