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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
オードリー・ヘプバーン
130/317

130話

「……これは一本取られたね。ストローだけに。盲点だったよ」


 なにやらうまいことを言ったらしいワンディは、満足のいく結果。さて、あともうひとつ。


 しかし、当のクロエは不満顔になる。


「……私だけ、提供するのも面白くないですね。チョコレート・ダイキリは、仕事終わりに飲もうと思っていたもの。それを横取りされたわけですから」


 仕事終わりの一杯。明日への活力。それを強奪され……まぁ、自分が提供したけども。面白かったのでよし。


 空気が朗らかになったのを感じ取ったエディット。憎い演出に満足しつつも、自分の雰囲気が場を壊していたことにようやく実感。


「あ、そうなの? ごめん。奢れるもの、なにかあれば言って。元はと言えばあたしのせいだし」


 迷惑もかけてしまったし、営業終了後だから面倒かもしれないけど。なにかしたいし、しなきゃという気持ちが込み上げる。いつもならむしろ、貯金しようと支払いを渋って店長に任せようとするが、憑き物が落ちたように爽快。


 カバンから財布を探すフリだけしようとしていたワンディは、奇貨とばかりにそっとしまう。


「結局なんで元気なかったの?」


 そして続け様に今回の件について。元気になったのならそれでいいけど、まぁ聞かないのも悪い気がして。


 気持ちの整理はついたが、ピクっと動きを止めたエディット。重たい口を開く。


「……まぁ、早くも留年が見えてきまして……」


 内容としては、学生のあるあるな悩み。フランスは九月から始まるが、つまり三ヶ月しないうちに学業についていけないと。


「まだ始まったばかりなのに? まぁ、なったらなったで就職まで一年長くウチで働けるね。前向きに考えていこう」


 大学には行っていないワンディ。驚きつつもポジティブに。なるようになる。しかない。


 フランスの大学は三年、大学院は二年であるが、留年になる学生は非常に多い。一年次から留年も日常茶飯事で起きており、半分程度しか二年に進級しないというデータもある。学費が無料というのもあるが、単純に講義の内容が難しい。始まってすぐに来なくなる者も多い。


 そんな中、一年目にしていきなりつまづいたことが、エディットとしてはかなりダメージの大きいものだった。各講義一年を一学期と二学期に分けて、それぞれ一〇点満点の合計二〇点。その中で半分の一〇点を取ればいいわけだが、大学の難しさは高校とは比較にはならない。ギリギリの一〇点ですら上位一〇パーセントということも。


「……色んな講義で、なに言ってるのかも全くわからなくて……」


 そして思い出し、また押し黙る。五年で卒業できる割合は、さらに減って二割ほど。大多数は留年を経験する。


 周囲も沈黙し、空調の音が静かに流れる。あまりにも早すぎる気もするし、追試もあるはずだが、今のままでは望みは薄いだろう。

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