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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
オードリー・ヘプバーン
125/318

125話

 だが、その厳しい言葉もワンディはヒラリと躱す。


「そんな冷たくしないでよ。キーラはいる? 頼みごとをしたいんだけど」


「? 今日は休みですよ? 連絡とかしたんですか?」


 一日を通して不在。その女性は再度清掃に戻る。キュッ、という布とガラスの摩擦音が店内に響いた。


 ギョっとした表情を浮かべたワンディだが、たしかに、と手を叩いた。


「それがねぇ……していないんだよ。まいったねぇ、ウチの困ったちゃん達を連れてきたはいいものの、キーラがいないんであれば……」


 チラッと二人を見る。


 見られても困るが、少し助かったかも、とジェイドは結論を導いた。友人はいない、今は掃除中。ならば。


「帰りましょうか、仕事のお邪魔になっても悪いですし」


 最初から乗り気ではなかった。それよりも、新作ショコラのことを考えたい。オードリー・ヘプバーン。映画館でレイトショーでもやっていれば。


 しかしそれでもワンディは食い下がる。ここまで来て手ぶらで帰るのもなんだ、アレだし。


「ならクロエに聞きたい。なにか新作ショコラで考えてるものとかある? こっちのジェイドが、色々作ってみてるんだけど、思い浮かばないらしくて」


 と、アイディアの強奪を決行する。真正面から。一歩ずつ近づき、クロエと呼ばれた女性の目の前へ。


「……本気で言ってます?」


 眉を歪めてクロエは訝しむ。なにを言っているんだろう、この人は。


 だが、その光景に一番緊張している者がいる。


「……いや、おかしいでしょ……」


 たしかにアイディアの参考になるものがあれば欲しいし、思いつかないのもジェイドには事実。だが、自身の店長のやっていることのリスクが高い。色々とアウトな気がする。


 またも手を止めるクロエ。ワンディよりかなり背が低い。頭ひとつは小さいため、見上げる形で却下する。

 

「言うわけないですね。なんでむざむざヒントなんか。自分で考えつくから意味があるんでしょう」


 それも同じ区のお客さんを取り合う仲で。仲間と言っても、やはりライバルというほうが当然近い。売上の貢献になるような真似は、この店に対する裏切りにもなる。


 ピン、と張り詰めて空気の中、悪い笑みがニタリ。


「その言い方は、なにかあるんだね。一個! 一個でいいんだ。そこから殻を破るかもしれないし」


 噛み砕いて言葉を理解した結果、ワンディにはそう聞こえた。一番高いヤツ買って帰るから! と、金額で釣ろうとする。

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