表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
オードリー・ヘプバーン
124/317

124話

 二、三歩歩いたあと、足を止めるエディット。


「……いやいや、そんな風に見えます? 普通ですって」


 ほら、と両手を広げて開放感をアピール。ほら、ともう一度。


 だが、それでもワンディの疑念を抱く。その目には無理しているように映った。


「嫌なこと、その九割くらいはご飯を食べて寝れば忘れる。一割はそれを二回繰り返せば忘れる。残りの一割は——」


「残ってないです。一〇割超えてます」


 計算が合わなくなったジェイドは、すかさずワンディを止める。どこまで本気なのか、この人物は読めない。


 ん? と首を傾げて上を見上げるワンディは、うん、となにか合点がいったのか頷く。


「そう? まぁ、あいつに話を聞いてもらって、ショコラを食べればなんとかなる。ショコラは薬だったんだからね」


 万能薬である。なんだったら、口に含んで傷口に吹きかけてもいい。熱が出たら、固めたショコラを首に巻いてもいい。お腹が減ったら食べればいい。ね? 万能でしょ?


 そんなめちゃくちゃなまとめ方をしているうちに、目的地に到着。同じ七区、そんなに時間のかかるところでもない。


 老舗や新規参入の多い激戦区。そこで中堅クラスの規模を誇るショコラトリー『プロムナード』。散歩道、を意味する通り、高級感よりも気軽さ。毎日でも食べたくなるような、寄りたくなるようなお店がコンセプトだ。


 白と黒のショコラをイメージしたチェッカーチェックの床。ゆとりがあり、広々とした店内。ダウンライトには電球色を使っているため、温もりが溢れる。壁や柱まで白やアイボリーカラーで統一され、心も晴れやかに買い物を楽しめる。


 ボンボンショコラのショーケース。見本と、箱に詰められた販売用。芸術的な模様のサンプル用。当然試食用もあり、並べ方ひとつで、ボンボンだけで色々な顔を見せることができる。可能性はまだまだある。溢れている。


 そしてカラフルなショーケースも。パート・ド・フリュイ。フルーツ生地、という意味。ショコラではなく、フルーツピュレを固めたゼリーのようなもの。砂糖菓子なのだが、お土産用としてショコラトリーに置いてあるところは多い。


 そんなお店。もうこの時間は閉店しているが、気にせずワンディは入店した。


「こんばんは。忙しい時にごめんね」


 ひとり、店内のガラス清掃を進める女性。白シャツに黒いジレ。店員というよりコンシェルジュのような佇まい。その女性が一時ストップして体を一行に向ける。


「そう思うなら来ないでくださいよ。仕込みや清掃で本当に忙しいんですから」


 やや冷淡な口調だが、当然といえば当然か。閉店後に勝手に来る同業者ほど、厄介な者はいない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ