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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
オードリー・ヘプバーン
119/318

119話

 さて、どうしようか。ジェイド・カスターニュは自宅のキッチンにて、とりあえず悩むフリと、本当に悩むを両方してみた。自分なりのショコラ。誰のものでもないショコラ。そのきっかけは掴むことができた。


 『音楽』、それをショコラに。そうすれば、誰とも被らないでしょう? いや、たぶん。


 もう一度、自身が考えたショコラを作ってみる。難しいものではない。ビターショコラにルビーショコラをコーティングしたもの。見た目は桜の花びらだが、味わいには苦味。お店のショコラを使うわけにはいかないので、簡易に作ったものだが、充分に美味しい。


 このショコラの名前は『スマイル』。チャップリンの曲からイメージしたショコラ。春の新作、というのにも合致しているので、今度こそはと意気込んだが、「チャップリンは権利関係がややこしいのでダメかも」という結論に。そんな……。


 で、なぜ『フリ』なのか。それは、答えはわかっているから。映画の曲。それがいい。ストーリー性もあり、気持ちも込めやすい。チャップリンのように、色々と要素があればビターにしたりルビーにしたり、表現しやすい。次の候補はこの人物。


 オードリー・ヘプバーン。

 

 ご存知、ベルギーが誇る大女優。ジェイドと同じくブリュッセル出身。だが、ショコラにしてみたら、と考えたときに、大きなライバルがある。


 それは『オードリー・ヘプバーンのガトーショコラ』というものがすでに存在していること。彼女が子供達に作っていたショコラ。レシピも公開されている。作ってみる。うん、美味い。腕がいいのかレシピがいいのか。


 オードリー・ヘプバーンと音楽、どういう関係が? 実は映画『ティファニーで朝食を』にて、オードリーはギターを弾きながら、窓辺で歌うシーンがある。わずか一〇小節。となると、一〇粒のショコラ? 一〇種類の味? はたまた一〇色のショコラ?


「……全然出てこない、というより、全部アリな気もする……決めきれない」


 そして大事なポイント。オードリーは音域が狭い。わずか一オクターブと一音しかない。歌の部分は違う人物の吹き替えにするか悩んだほどらしい。結局は彼女でも歌える音域に変更して、ということらしいが、意外な事実だった。


「……つまり、一オクターブと一音はキーで言うと一三個……そのショコラ……」


 また候補が出てきた。一三種類のショコラを作る? できなくはないが、少しマニアック過ぎないか? 曲のオクターブなんて気にする人がどれだけいる? オクターブを感じながらショコラを食べるだろうか? いや、ない。


「……あーッ! ……休憩、休憩しよう。そうだ」


 熱いコーヒーを淹れ、『スマイル』を食べながら、曲を聴く。


 《私達は目指す、あの虹の終わりを》


 歌詞を聴きながらまた疑問が浮かぶ。虹、虹の終わり。虹の終わりってなんだろう。その曲の名前は『ムーン・リバー』。はたして私は、虹の終わりにどこへ行き着く?

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