118話
「へぇー、今回はこんな感じなんだ」
リヨンでの仕事の移動中、タクシーの中でギャスパー・タルマは、ロシュディから送られてきた、『彼女達』の新作のショコラとカルトナージュの詳細を受け取った。テーマは『チャップリン』、その曲『スマイル』。
前回とは打って変わって、普通に売り出せそうなものではあるが、チャップリン家がどう出るか。静観しておこう。そして、よくないことを思いつく。
「さすがにこれはわからないだろう、桜といったら日本だ。誰と間違えるかな」
あのじいさん、マスターの鼻を今回こそ明かしてやろう。前回よりも難しいはずだ。まぁ、即座に解答に気づくのはさすがに化け物だけど、今度は流石に。自分だったら一年もらっても無理かもしれない。諦めて、思いつく歴史の人物全員言う。
《この箱の中に、ルビーショコラとビターショコラの二層のショコラが三個、入っています。さて、誰をイメージしたショコラでしょーか?》
上蓋の被さった写真と、取り外して花開いた写真も送信。ヒントを欲しがるじいさんの顔が目に浮かぶ。というか、外部の人間に漏らしちゃってるけどいいのかな。ま、いいか。ロシュディが送ってきたわけだし。責任は彼。
数秒後、着信音が鳴る。マスターだ。
「あ、早いね。さすがに」
いつも携帯を肌身離さず持っているんだろうか。ウキウキしながらメッセージを開く。
《チャップリンって教え子は言ってるけど、僕も同意見。てか、人っていうか曲じゃない? 『スマイル』》
「……」
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