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115話
勢いよくWXYのドアを開け、ジェイドが店を出ると、左手には壁に寄りかかって待つオードの姿。それを確認しすると、笑みが溢れる。
「ふっふっふ」
「で、どうだったの」
とりあえず結果を先延ばしにしようとする気配を感じ、オードは催促する。ただ、なんとなく予感がする。そしてだいたいその勘は当たる。
もったいつけるようにジェイドはオードに近づく。
「聞く? 聞きたいかい?」
「さっさと言え」
無駄な時間だ、と待たされたオードは切り捨てる。
妙に明るく、ジェイドは軽い口調で饒舌に語り始める。
「いやー、さすがチャップリンというか名曲というか。その曲に込められた意味。映画での演出は素晴らしいね。無声映画は初めてだったが、とても楽しめたよ」
「おい」
論点をすり替えようとする動きに、オードは警戒する。まぁもう、わかっている。
「それに今回のショコラ誕生には、ピアノが欠かせなかったね。調律というものに初めて携わってみたが、なかなかに奥が深い。ショコラもだが、ピアノもいいものだね」
「……やったな?」
「……まぁ、詳しく説明するとだね」




