表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
チャールズ・チャップリン
110/317

110話

「さて、その顔は解けた、って感じだね」


 翌日。シフトには入っていなかったが、閉店時間を見計らって、ジェイドはWXYへ。ワンディとも連絡を取り、答え合わせの時間。一週間きっかり。また以前のように、カフェスペース。


「はい、マリーとは、『マダムルイーズ』、そしてグランド・シャルトルーズ修道院の『エリキシル・ヴェジタル』をイメージしたショコラ。『原点に立ち返る』ことの重要性、でしょうか」


 矢継ぎ早に回答を並べた。小出しにしてもしょうがない。違ったのなら仕方ない。ジェイドは座りながら背筋を伸ばす。


 だが、同じようにワンディもあっさりと認める。


「うん。だいたいは正解。それと、全ては繋がっているということ。今日の頑張りは明日の自分に、今日の怠慢は明日の自分に。まぁ、気を抜くなってことなんだけどね」


 実は、頭を悩ませるような、難しい意味を込めていたわけではなかった。たどり着くまでは難関だったが、答えとしてはごく普通。ただ、遠回しに言いたかっただけ。そのほうがストレートに言うより伝わると考えた。


「ありがとうございます。勉強させていただきました。それでオーナーに提案していただきたいショコラなんですけど——」


 と、告げてカバンからジェイドはひとつ、箱を取り出す。


「え、もう?」


 予想だにしていなかったため、言い出した張本人のワンディも驚く。今日はもう帰る気満々だった。


「善は急げ、なので。ワンディさんの気が変わらないうちに。今日の頑張りは、明日の自分の楽に繋がりますよ?」


「言うねぇ……」


 躊躇うワンディを気にせず、逸る気持ちを抑えられないように、テーブルに箱を置いた。かなり軽い音、そして手のひらサイズ。


「……まぁ、いいか。じゃあ見せてもらおうかな」


 予定にはなかったが、遅かれ早かれだ、と結論づけたワンディは、身を乗り出して解説に耳を傾ける。


 ジェイドは、箱をスッと押して差し出す。一見すると、薄桃色の五角柱。


 五角形の上蓋が覆い被さる。上蓋には桜柄の生地によるカルトナージュが施されており、中身は見えない。上蓋はそのまま外囲いとなる部分にすっぽりとハマっており、人間が掴んで外そうと思わない限り、外れないようになっている。

 

 しかし、リアクションに困ったワンディは、この後の楽しみ方を持ち主のジェイドに求める。


「これは……どういう」


「自分らしい新作。みんなを喜ばせるもの。それを考えた時、正直言って、なにも浮かびませんでした」


 求められたものとは少し違うが、ここに至るまでの経緯をジェイドは語る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ