表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
チャールズ・チャップリン
106/317

106話

 その単語についてジェイドが記憶を弄りつつ、言の葉に変換する。


「あぁ、たしかコロンブスが見つけて、それを国王に献上したんだっけ。それがヨーロッパでのショコラの起源に——」


「?」


 固まったジェイドを、不思議に思いオードは見つめる。また? 以前にもウチで。突然機械が故障でもしたかのように、ピタリと動かない。


 が、その実、他の機能を全て停止して、ジェイドは脳にそのぶんのエネルギーを凝縮。答えを導き出すために。


 起源。


 起源。


 起源。なんの? 起源とは、なんの起源だ? それは、本当にショコラなのか?


「? どうしたの?」


 もうオードが見ているだけで、三〇秒はジェイドは瞬きをしていない。


「?」


 髪に触れてみても、なんの反応もない。今ならイタズラし放題か? と悪巧みしていると、唐突にジェイドは口を開く。


「……たしか店長は『ずっとこうあってほしい』って言ってた……」


 もう何度目かの内容の確認。擦り切れるほどに思い出していた。はずだった。だが、たったひとつの単語のおかげで、それが全く別のことに聞こえてくる。


『修道士』


 様子のおかしいジェイドに、少しオードも顔が引き攣る。


「え? あぁ、まぁ、そうね。薬のように元気づける、って意味じゃないの?」


『元気づける』


 どんどんとパズルが埋まっていくような、そんな感覚にジェイドは溺れる。答えはもうとっくに出ていたのかもしれない。


「……待って、ということは、もしかして……」


「なに? どうしたの?」


 ふと声のする方向を見ると、当然ながらオードがいる。なにかがカチリと埋まった音が、ジェイドには聞こえた。


「——そうか、そういうことか! もしそうならたぶん——」


 慌てふためいた指先で携帯を操作するが、反応が悪い。自分の思考にネット回線が追いつかない。いや、単純に押しミス。


 この状況がつまらない人がいる。オードだ。


「……なに? どういうこと? ひとりで納得して。説明して」


 当たり前だが、全くピンとこない。なにか繋がるようなワードがあった? 修道士、薬、酒、それからそれから——


「やはりそうだ! 間違いない! 『マリー』とはオードの読み通り、他の王族の娘だ! アントワネットではない!」


 なにかジェイドは当たりを引いたらしいが、自分だけ先に進んで置いてけぼり。あたしも引き上げろ! と、オードは割り込んで話に加わる。


「でもアントワネットの結婚相手のルイ一六世とか、自分の親のフランツ一世の妻子を調べたけど、それらしき人物は——」


「いや、ひとりだけいる。ルイ一五世の娘、この子。彼女は——」


 今までの加速を脱ぎ捨て、一旦ジェイドはゆっくりと深呼吸した。瞬きも呼吸も忘れていた。ドクドクと心臓が速く脈打つのは、感動もあるだろう。最後にひとつ大きく吐いて、画面をオードに見せた。


「王族唯一の修道女だ」


 間違いない! と、断言する。


「……」


 ……はぁ? だからなに?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ