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C × C 【セ・ドゥー】  作者: じゅん
チャールズ・チャップリン
105/317

105話

 ここまで来てしまっている時点で、言い訳をするつもりはオードもない。というかできない。


「……わかったわよ。あたしも途中まで。いいところまではいったけど、そこで終わり。結局わからなかった」


「まぁ、とりあえず話してみてよ。一緒に考えればなにかわかるかも」


 どんな些細な情報でも、なにかの取っ掛かりになるかもしれない。一言一句逃さないよう、ジェイドは集中力を高める。


 ひとつため息を吐いたあと、ポツリポツリとオードは囁き出す。


「……あたしが思ったのは。おそらくマリーは、マリー・アントワネットのことではない、ということ」


 言った。言ってしまった。さぁ、ここまできたらなんとかして解き明かさねば。


 意外、というような驚きをジェイドは顔で表現する。

 

「ほう? どうして?」


 唇を舐めて、貪欲に情報を欲しがる素振り。自分にはなかった閃き。


 その根拠をオードは羅列する。あまり先頭に立って論じるのは得意ではないため、少し緊張。いや、なんでここで。


「まず、『アントワネットとは言っていなかった』ってところから考えてみて、その頃は同じような名前が多かったことに気づいた。てことは、なにか砂糖と縁のあるマリーがいれば、大ヒントだと」


「たしかに。言っていなかったね。なるほど、私は少し自分の作品に囚われすぎていたようだ。その考えはなかった。それでどうだった?」


 それは、様々な可能性を拾い上げていったジェイドにとって、取りこぼした盲点でもあった。


 しかし、急速にオードの声の張りが萎んでいく。


「……だれもいなかった。というか、この頃はみんな、砂糖だのミルクだのを混ぜていたから、決定的な人物が浮かび上がらなかったって感じ。以上、終わったわ」


 短く、水割りのような薄い結末だが、ここいらがオードの脳の容量のマックス。結局複雑にしただけかもしれないので、あまり言いたくはなかった。


 絡み合ったワードの端尾を繋ぎ合わせようと、ジェイドが奮闘するも、触れ合った途端にバチっとショートしてしまう。その閃光の中に答えがない。


「……その他にひっかかったワードはなにか、あったりしなかった? 私は『薬』が気になったね。元々は薬として飲まれていた」


 もうこうなれば、なんでもかんでも引き出しから出し合う。ヒントは多ければ多いほどいい。なにか合うものがあるかもしれない。若干ヤケになる。


「それはあたしも。それと、『神父と修道士』ってのが。なんか砂糖とは無縁、とまではいかないけど、普通なら素材そのものの味で食べているような気がして」


 ただ国王にカカオを紹介しただけなので、素っ頓狂なことを言っているのかもしれないが、体裁など今のオードは気にしない。答えが見つかればいい。過程がどうでも。

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