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小鳥のおうち

作者: 真城

「おはよう」


子どもが鳥籠に被せてあった新聞紙をヒラリと外した。

夜寝るまでに新聞紙で鳥籠を暗くして、朝起きたら新聞紙を外す、はどちらもこの子(私の飼い主)の仕事だ。


「ピヨっ」


私は元気に挨拶がわりのサエズリを返した。

クチバシをモゴモゴして、口元の羽毛を膨らませる。


『まだノンビリしたいよー。』小学生の表情は正直だ。

それでも私と遊びたいのか、鳥籠の扉を開けて、洗濯鋏でとめてくれる。


私はささっとカゴの屋根までよじ登る。

玄関先には、斜め前に金魚が泳ぐ水槽がある。

金魚はパパさんが様子を見に来るから、その時に肩に飛び移ろう。


「おはよー」

「バサっ!」


キタ、パパさんの肩に飛び移る。


オカメインコなのに飛ばないのかって?

私は「手乗り」なの。勝手に飛んだらみんなガッカリじゃない?


まぁ、ママさんに風切り羽根を多少切られているっていうのもあるけど、ヒトの肩から落っこちて怪我しない程度のには飛べるのよ。


「ザーッ」


パパさんが台所の流しの蛇口をひねって、水道の水を出してくれた。

さあ、今日はどちらの腕を降りたらいい?パパさんの肩を右に左に行ったりきたり。

毎日かわるのよ、どちらの腕か!


「さあ、どうぞ。」


水の流れのそばに、今日は左手を寄せてくれた。

私は左腕を駆け下り、止まり木のように人差し指に止まって水を飲む。


ひとくち、ふたくち、うーん、汲みたてのお水は最高!

飲み終わってプルプルっと全身の羽毛を立てて身ぶるいすると、冠羽をピタリと倒して、パパさんの肩にもう一度駆け上がる。


「満足したかー?」


私は返事のかわりに羽繕いをはじめる。


「おはよう、また朝からブルブルして、ホコリふるっているの?」


ママさん、毎朝の挨拶だけど、ムカッとくるわー。

冠羽がピシッと逆立つ。


「あら、今朝も頬紅がステキねー。」


うんうん、そうでしょ?

全身の羽毛を膨らませて、ちょっとリラックス。


私もホコリが嫌いだから、ブルブルっと全身の羽毛を振るうんだけど、まぁ、キレイ好きのママさんは私の鳥籠の中まで掃除機かけてくれるところは感謝している。

挨拶がてら、パパさんの肩からママさんの腕にジャンプ!


「どうしたの、オムレツ食べる?」


「ぴーぃ」


はい、いただきます。

ママさんは朝ご飯の並ぶテーブルに私を連れて行ってくれた。

私はトコトコテーブルに降りた。


パパさんはいつの間にか庭のバラを切って戻ってきた。

淡いピンクの一輪。香りが弱いから、パパさんとママさんはあまり喜ばないけど、小学生の女の子にはストライクな色合い。


「キレイね。」


そうね。

台所に直径4cm程のバラが飾られた。

バラの葉っぱは美味しくないから食べないけど、この子を笑顔にするものは大好きよ。

テーブルから、お着替えを済ませた子のブラウスの肩に駆け上る。


「ねぇ、学校に行く服だから、『落とし物』しないでね。」


何ですって?冠羽が最大に立ち上がる。

クチバシも全開の臨戦体制よ。


「フンっ!」


クチバシでかわいいほっぺにパンチをお見舞いした。


「あーっ、怒った。話わかるのね。」


アタマにキタ。鳥類はどこでも落とし物するものよ。まだわからないの!

今度はお耳に体当たり。


「ごめんごめん。」


そっとトーストの耳が差し出された。

しょうがない。勘弁してあげるわ。



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