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16話


 そうして謁見は終わった。……謁見の間を出てから、最初に通された部屋に戻り、またメイドたちにがしっと掴まれて、メイクを落したり髪型を戻したりドレスを着替えたりとしてもらった。

 ……その間もわたしは、どこか上の空だった。……だって、わたしが陛下の身内なんて……それに、大聖女ステラの血も引いているなんて……。考えたこともない話だ。ともかく、数日時間をくれるっていうのだから、ゆっくり考えてみよう。

 コルセットとハイヒールから解放されたわたしは、ノースモア公爵家に帰ろうとメイドたちに挨拶をして部屋から出ようとした。扉を開けるとディーンとバーナードが待っていて、馬車のお願いしなきゃなと口を開く前に、ディーンが小さく眉を下げ、こう言った。


「あのさ、荷物はこっちに持ってくるから、ちょっとここで過ごしてくれないか?」

「えっ?」

「ごめん、陛下が君と食事したいって。オレも付き合うから」


 わたしは目を大きく見開いた。陛下って、さっき謁見の間でお会いした陛下の他にいないよね。……なにを考えているんでしょうか、陛下。

 ……っていうか、待って。アルストル帝国の陛下って何歳? 祖母が同じってことは、わたしと陛下の関係って……従兄妹? そしてディーンは公爵家の人だから、こっちも身内!? なんだろう、この一気にロイヤリティな感じ。……ダメだ、混乱している……。


「……ええっと、食事だけよね? 食事が終われば公爵邸に帰れるの?」

「いや、与えた数日間は王城にいて欲しいってさ」

「わーぉ……」


 思わずそんな声を上げるわたしに、ディーンは苦笑を浮かべ、バーナードは肩をすくめていた。


「……メイド、クビにならない?」

「……王族をメイドとして雇うわけないだろ……」


 ……いやいや、わからないじゃないか。もしかしたら……いや、やっぱり無理かな……。


「……あのさ、その前に……わたし、関係図がわからないのだけど……。説明してくれる?」

「いいよ、……部屋に入ってもいい?」

「あ、うん」


 そういってディーンとバーナードを招いた。……わたしが招くって言葉を使うのはなんだか違う気がするけれど……。メイドたちはディーンたちに恭しく頭を下げて、「お茶とケーキをお持ちします」と部屋から出て行った。

 ディーンとバーナードは椅子に座り、わたしも椅子に座った。


「なにから聞きたい?」

「……まずは、陛下の年齢とディーンたちの年齢!」


 ……正直にいえば一番気になっていたことだ。だってあまりにも若そうに見えたから……。


「陛下は二十歳。オレとバーナードは十八歳」

「わかっ! 思ったよりも若い!」


 二十歳で国を統治する王になるなんて……。陛下ってもしかして、苦労性なのかしら?


「ちなみにバーナードは伯爵家」

「あ、本当に貴族だったんだ」


 十八歳で騎士団に入っているの? もしやふたりともかなりの実力者? いやそもそも公爵家の子息が入団しても良いの? ……うーん……。まぁ、実力主義なのかもしれない。そして、バーナードの家の爵位判明。ディーンとバーナードは幼馴染だから、てっきりバーナードも公爵家なのかと思っていたわ。


「……それにしても、お前が王族の血を引いているとはな……」

「わたしだってびっくりだよ。大聖女ステラのことは、ダラム王国でも聞いたことあるけど……伝説扱いだったし」

「大聖女ステラは、国母でもあったから……。彼女は当時の陛下との間に三人の子を産んだ。娘、息子、娘の順でね。シャーリーさまは一番下の娘。現陛下は長男の子。結構年齢に差があって、長男と次女の間で十年くらい差があるよ。長女と長男は四歳差だったかな」


 ええと、じゃあ長女と次女の差は……。十四年くらい? かなりの歳の差ね……。それじゃあ長女はもしかしてノースモア公爵夫人!? 優雅そうな人だとは思っていたけれど、まさかの王女さまだったのか……。


「アクアは、自分が誘拐されたことを覚えている?」


 ディーンに問われて、わたしは首を左右に振った。ディーンとバーナードは「そうか……」と口を閉ざした。わたしが覚えているのは、拾われた頃の記憶から。


「……ダラム王国の神殿に拾われてからの記憶しかないの」

「……そうか。あの事件はあまりにも悲惨だったから、自己防衛として記憶を封印してしまったのかもしれないね」

「そ、そんなに悲惨だったの……?」

「知りたい?」


 ……わたしはもう一度首を横に振った。これから陛下と食事をするのに、食欲をなくすようなことを聞くつもりはない。気にならないわけではないけれど……知るのが怖い。


「……君の外見は、ステラさまによく似ている。そして、君がオレに回復魔法を掛けてくれた時、その力の強さにもしかしたら、と思ったんだ。だが、君はオレのことを覚えていないようだったし……」

「え、わたしたち会ったことあるの?」

「あるよ。君が三歳くらいの頃にね。……まぁ、記憶がないのなら覚えてなくても仕方ないけどさ……」


 ……会ったことあるんだ……。ごめん、全然覚えていない……。ダラム王国からの記憶しかない……。その悲惨な状況をわたしは目撃してしまったのかな……? そうだとしたら、記憶がないのも納得は出来るけど……。ダラム王国はなぜわたしを誘拐したのかしら?

 ……ただ、神殿で暮らしている時、自分の目の前で誰かが苦しむ姿を見るのはイヤだった。それはもしかしたら、記憶の奥底にその記憶が眠っているからかもしれない。


ここまで読んでくださってありがとうございます!

少しでも楽しんで頂けたら幸いです♪

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