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15話


 ……でも、こういう人って結構いるもんじゃないの? だって、ダラム王国の神官長も拾われてきた子って聞いているし……。……静まり返った謁見の間で、ただただおろおろするしかなくて、どうすればいいのかわからなくて、とりあえず陛下を見る。すると、陛下がゆっくりと息を吐く。


「聖女、リリィよ。例の物を」

「かしこまりました、陛下」


 聖職者のローブを着た女性がわたしに近付いて来る。この人が七人のうちのひとりか……。めっちゃ美人。思わず見惚れちゃう。わたしよりも年上かな。落ち着いた雰囲気がありながらも、凛と背筋を伸ばしている女性。

 彼女の手にはなにか……よくわからないものがある。なんだろう、アレ?


「アクア。すまないが、その板に触れてくれ」

「……は、はい……」

「大丈夫ですよ、すぐに終わりますから」


 にこりと微笑む聖女。リリィって呼ばれていたよね。わたしは彼女と、彼女の持っている半透明の板を交互に視線を動かしてから、こくりとうなずいた。彼女の差し出す半透明の板に手を乗せた。すると、身体の中になにかが走る感じがした。え、え、ナニコレ!?

 それは一瞬のことだったけど、なんだか背中がぞわぞわしちゃったわ……。鳥肌が……。リリィはじっと半透明の板に浮かび上がった文字を読んで、目を伏せた。それから、陛下へと身体を向けて言葉を紡ぐ。


「……間違いありません。アクアさまは大聖女、ステラさまのお孫さまです」

「……え?」

「……わが国では、出生時にひとりひとりのデータが記録されている。それは魔法で管理されており、魔力をデータ化することでひとりひとり違うデータが出る。魔力の波長は全員違っているからな」


 ……ってことは、生まれた時にいつの間にか登録されて、そのデータとわたしの魔力が重なったってこと……? ひぇぇえ、さすが帝国! そんなことが出来るんだ……! ……ん? ちょっと待って、大聖女ステラさまのお孫さまって言っていなかった……? ってことは……。


「……あの事件の時に誘拐されていたのか……。歓迎しよう、アクア。いや、本名で呼んだ方が良いか?」


 あの事件……? 誘拐……? え、全然記憶にない……それに……。


「ほ、本名?」

「はい、こちらをご覧ください」


 リリィがすっとわたしに板を見せてくれた。そこに、わたしのデータが載っていた。

 リネット。……それが、わたしの本名……?

 大聖女ステラの娘、シャーリーの娘。ステラの孫。聖属性だが他の属性の適性も有。大聖女と同じか、それ以上の神力しんりょくを持つ。……魔力でそんなことまでわかるの……?


「……アクアでお願いします。なんか、ピンと来ないので!」

「良かろう。ではアクア・ルックスとしての身分証を用意する」


 ……アクアとしての身分証を用意してくれるのか。ありがたい。……それにしても、このデータすごいなぁ。これ当時の身長体重? 五歳までのデータが見られるみたい。……ん? ってことはわたし本当に十五歳だったのか。正直年齢しか覚えてなかったとはいえ、それが本当かどうかも怪しかったもんなぁ、十年前。まじまじと眺めていると、今度はディーンが一枚の小さなカードを私に渡した。


「これに魔力を込めてみて」

「? う、うん……」


 カードに触れて魔力を込める。ピカッと光った。すぐに消えたけど……。真っ白だったカードは金色の縁取りがされて、左側にわたしの顔が映っている。そして右側には……わたしのデータがずらずら並んでいる。年齢やら身長体重まで……ひぇぇええ、これ公開情報なの!?


「隠したい情報があるなら、隠蔽の魔法を使うといいよ」


 ディーンがアドバイスをしてくれた。……あ、でも……。


「隠蔽の魔法ってどう使うの?」

「隠したい場所を強く願えばいい」


 こくんとうなずいて、身長はともかく体重が隠れるように祈った。すると、体重のところがすぅっと消えた。……わー、こんなに便利な魔法を今まで知らなかったとは……! 勿体ないことをしていたような気持ちになった。


「……あの、これは?」

「それが身分証だ。……一度だけ、君の本名を呼ぶことを許して欲しい。――お帰り、リネット。君の帰還を心より歓迎する」


 そういって優しく微笑む陛下は、心底喜んでいるように見えて、わたしは首を傾げたくなった。さすがにこの場所で首を傾げることは出来ない……。しかも優しかった表情は一瞬で、次の瞬間には真剣な表情を浮かべていた。

 そして、わたしが戸惑っているうちに陛下は言葉を掛けてきた。


「さて、アクアよ。君には選択肢がある。君はノースモア公爵家でメイドとして働いているようだが、そこを退職し神殿に身を置くことも出来る。君の能力は神殿でこそ活かせると思うのだが……。無論、無理強いはしない。私の所有する屋敷を任せることも考えている。君は身内だからな。そこでなにか新しいことをすることも可能だ。ただし、その場合は護衛をつけさせてもらう」

「え、ちょ、ちょっと待ってください。いきなりそんなことを言われても……」

「……それもそうだな。では、数日時間を与えよう。その間に考えてくれ」

「わ、わかりました……」


ここまで読んでくださってありがとうございます!

少しでも楽しんで頂けたら幸いです♪

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