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インテリジェンス・アイテムと過ごす日々  作者: ラッキーな亀
第一章 青のペンダント
3/4

宝物庫(?)の宝物(?) その3

前回のあらすじ:


お嬢様が、家宝の「青のペンダント」らしきものを入手されました。

メイドは、それがこの家の当主の証であり、お嬢様が次期当主となるかもしれないと言いました。

執事は、「青のペンダント」らしきものを入手した時の様子を旦那様に報告しました。

それを聞いた旦那様は、先々代の当主が残したノートを持って、夕食に向かいました。


<執事視点>


 私がお仕えしているコーラムバイン家は、ウォルテア王国の辺境伯でミンガイル地方の領主となります。代々この地方を良心的に治めており、住民の評判はかなり良好のようです。

 隣接するリーワース王国のルズブリッジ領とは、友好的で交易もあり、現在のところ何も問題は起こっておりません。


 領内の産業は、農業が中心で、広大で豊かな農場を多く抱えております。また、保存食などの加工品も製造されています。

 また、観光にも力を入れております。自然豊かな山岳近くに温泉があり、年中を通して湯治客でにぎわっております。

 そして、かなり以前に滅びたという超古代文明の、名残とされている古代遺跡が存在していることも大きいでしょう。遺跡の一部は入場料を払えば見学もできるため、ここも観光の目玉となっております。


 なお、古代遺跡からの出土品を研究するために、遺跡の近くには国立の研究施設もあります。たまに出土品が見つかっても、そのほとんどは研究対象に指定されて国家の管理となり、一般公開されるのは一部だけとなります。もちろん、貴重なものは国外への持ち出し禁止となります。

 古代遺跡から魔道具・媒体(杖や指輪やアクセサリーなど)が呪文書などとともに発見され、超古代文明が使用していたという魔法の使用方法が再発見されてからおよそ八百年となります。しかし、その後もまれに発見される出土品たちの性能はどれも素晴らしく、「現在の我々は超古代文明を超えた、とはいまだに明言できずにいる」と研究者たちが悔しそうに言っているようです。


 ところで、出土品と言えば、こんな逸話がありました。

 二百年ほど前のコーラムバイン家の初代ご当主が、この領内の古代遺跡から、魔道具や媒体の主要部分の部品を多数発掘して、それを当時の王家に収めたことから、この領地を賜り、コーラムバイン家の始まりとなりました。

 この多数の出土品の提供により、それ以外の部分は当時の技術でも再現できたため、かなりの性能の杖や指輪の模造品が出回り、王国に多数の魔術師を生み出すことになったのです。その頃、王都の学園でも貴族教育の一部として、魔法の教育を取り入れることになったとのことです。



***



 コーラムバイン辺境伯家のお屋敷には、食堂にかなり大きなテーブルがあります。

 少し前までは、食堂での食事は、当主一家、上級従者、下級従者の三組に分かれておりました。

 しかし、先々代のご当主から「夕食では、当主一家と上級従者はまとめてテーブルに着き、その日の報告をしながら食事をとるように」と指示されたため、二組に分かれて食事をとることになっております。


 その日の食堂での食事は、いつもとさほど変わった様子もなく進みました。


 いつもと同じ席次であり、上座にはダスティン・コーラムバイン辺境伯、つまり現当主である旦那様がお座りになっております。

 当主席から見て左側には、つい先日に十歳になられた長女のデイジーお嬢様がお座りになっております。

 また、当主席から見て右側には、いつも微笑みを絶やさない奥様のアイリス様と、まだ三歳でご長男の、これまたいつもニコニコされておられて可愛らしいラルフお坊ちゃまがお座りになっております。

 そして、下座の方に、私を含めた当家の上級従者と認められた者たちが座ることになっております。


 ただ、いつもと異なる点として、上座の当主席の傍らには、食器類と少し離れた所に、少し色あせた、表紙に『あれとの付き合い方』と書かれたノートが置かれていました。


 さて、下座の席に着いた私と同僚たちは、食事をしながら順番にその日の領内の事柄を報告していきます。自分の番が近づくと、口の中のものを飲み込み、水を含むなどして口の中をきれいにしてから、報告に臨みます。

 そして、最後の報告者である私の番になり、下級従者たちからのその日の屋敷内の事柄についての報告をまとめたものをお伝えして、着席しようとしました。


 その時、旦那様からお声がかかりました。


「アルフレッド、デイジーとの宝物庫あさりの結果報告はしないのか?」


 少しばかり含み笑いになりながら、旦那様は、周囲の者たちにも分かるようご説明されました。


「デイジーの誕生日プレゼントとして、宝物庫の中から好きなものを一品だけ持って行って良い、と約束していたのだよ。それで、今日はアルフレッドと二人で宝物庫へ見に行ってもらったのだ」


「そのお話は、この後、旦那様から始められると思っておりました」


「良いから、さっき執務室で話したように、皆の前で経緯を報告してくれ」


 私は、お嬢様と一緒に宝物庫に入ったこと、急にカタンと物音がしたと思ったところ、いつの間にかテーブルの上に、青い宝石のついたペンダントが置かれていたこと、それをお嬢様が自室にお持ち帰りになられたこと、などを簡単に話しました。

 そこで、私の隣に着席していた執事仲間のサンセが、驚いた表情で口を出しました。


「おいおい、まさか先々代の青のペンダントが出てきたって話かい?」


 下座に座っていた上級従者たちだけでなく、周囲で給仕に専念していたはずのメイドたちまで、手を止めて、こちらを向いてしまいました。


「お嬢様が、次期ご当主に?」


「まだ十歳ですのに、もう将来が決まりましたの?」


「弟君は、どうなされるのかしら?」


 各々が驚きの表情で、思ったことを言い合い始めました。

 旦那様は、これまた分かっていたことだというように、仕方なさそうに肩をすくめておられました。しばらくしてから、手をたたいて皆の注目を引いて、おっしゃいました。


「そろそろいいかな? 正式なことは、この後でデイジーの部屋に行って、直にそのペンダントを見せてもらってからになるが、青のペンダントであれば、デイジーが次期当主だ。誰も反論することは許さない。既に私の中では、見つけたときの状況からして、おそらく本物だろうと思っているがね」


 それから奥様の方を見て、笑いかけながらおっしゃいました。


「ラルフには、デイジーの補佐官になってもらうか、あるいは、近くの貴族の所に入り婿として行ってもらうか、どちらかになる可能性が高い。だが、ないがしろにするつもりはない。まあ、悪いことにはならないだろう」


 奥様はラルフ様にちらりと視線を向けた後、静かにうなづかれました。


「では、食べ終わったところで、デイジーの部屋に行って、そのペンダントを見せてもらおう。ついてきたい者は、全員に同行を許可する」


 その後、夕食は速やかに終了しました。

 その時点で屋敷内にいたほぼ全員となったようでしたが、家宝を見てみたいという従者をぞろぞろと引き連れて、私たちはデイジー様のお部屋まで移動しました。


 そこで、旦那様が振り返って、皆におっしゃられました。


 「人数が多いので、まず、当主一家とアルフレッドだけが中に入り確認する。他の従者たちは、部屋の前に並んで待っていてほしい。後できちんと見せるから」



***



<少女視点>


 お父様は私の方を向いて、笑顔でおっしゃいました。


「さて、それでは、例の物を見せてくれるかい、デイジー」


「はい、どうぞお入りください」


 私は扉を開けて、家族と爺やを中へと促しました。


「あれは、そのテーブルの上に置いて……置いて出たのですが?」


 テーブルの上には、何もなかった。一緒に置いておいた読みかけの本もなくなっていた。

 私は、扉を開けて、メアリーを呼び入れた。


「メアリー、こちらに来て、一緒に確認してちょうだい。」


「はい? 何でしょうか、お嬢様」


「私は、夕食のために食堂に移動するとき、テーブルの上に、読みかけの本と一緒に、あのペンダントを置いておいたわよね? 覚えている?」


「本を置いていらしたのは見ておりましたが、あのペンダントを一緒に置いていたのですか? それは気が付きませんでした」


 そこで、お父様が確認されました。


「家宝かもしれないペンダントをテーブルに置きっぱなしにしたのかい?」


「え? あっ、確かに不用心だったかも」


「それで、一緒に本もあったが、それもなくなっていると?」


「はい……」


「ふうむ……」


 私の不用心のせいで、泥棒に入られて両方とも盗られてしまったのかと思うと、情けなくなって、うつむいてしまい、涙が出そうになってしまいました。


 しばらくしてから、それまで手に持っていたノートを開いて読みながら何か考え込んでいたお父様は、急にテーブルの上の方あたりに向かい、誰かがそこにいるかのように話し始めました。


「イブツよ。私はダスティン・コーラムバイン。お前のかつての主であるシュー・コーラムバインの孫である。さて、シュー・コーラムバインの忠実なる部下だった者よ。わが娘、デイジー・コーラムバインとは、まだ正式に主従の契約を交わしていないのではないか? 直ちにここに参じて手続きをせよ」


 お父様の言葉が終わると同時に、テーブルの上にペンダントと本が出現しました。


『失礼いたしました。イブツはここに』


 ペンダントにはまった青い宝石が、橙色や紫色の混ざったへんてこな色合いで輝いていました。

 ちょっと不気味ね……って、いけない、大事な家宝だっけ……って、そんな余計なことより!


「ええっ、喋っている?」


「え、誰がですか、お嬢様? 急に無くなったと思っていたものが現れたのでびっくりしましたが、誰もしゃべっていませんよ」


 私が驚いて声に出してしまっても、メアリーや他の皆は、何のことかというように首をかしげていました。お父様は、肩をすくめて話し始めました。


「デイジー、大丈夫だよ。私にも聞こえたから。お前の耳がおかしくなったわけじゃない」


『今のは念話でございます。耳は関係ございません。

先程のお話にありました人物名から、ダスティン様とデイジー様を対象にしておりました。

なお、シュー様はおられませんし、他の方はお話にありませんでしたから、対象外としました。

ところで、他の方にも聞こえるように調整した方がよろしいでしょうか?』


「イブツよ。この部屋にいる者たちには、君の念話を聞こえるようにしてくれ。

現在、この部屋にいる者は、私やデイジーの家族とそば仕えの執事とメイド、つまり現在の当主である私、および、次期当主デイジーの信頼している者となる。覚えておくように。

さて、デイジーとの主従契約だが、どうするのかね?」


『既に、主の条件を満たしておられることは、判定済みです。

あとは、イブツの宝石に血液を一滴ほど垂らして頂ければ完了となります。恐れ入りますが、デイジー様の指の先に少しだけ小刀などで傷をつけて頂いて、宝石部分に擦り付けて頂けますでしょうか』


 まさかの血液での認証って、やっぱり不気味な奴だ。これが家宝って少しがっかり!


「あなたとお話しするには、主人であることを証明するために、毎回、血をあげないといけないの?」


『いえ、初回だけです。その後は、お顔や体格や声などの外見的特徴から、そしてお付き合いが長くなれば、行動パターンなどからも判別できます。今は外見的特徴を中心に認識しております。』


 どうやら毎回ではないらしいので少し安心した。初回だけなら仕方ないか。


「わかりました。なるべくさっと済ませましょう。お父様、お願いします」


「うむ、これはあらかじめ火にあぶってから冷ましておいたナイフだから、変なばい菌はついていないはずだ。さっさと終わらせるからね」


 既に、お父様が懐からナイフと絆創膏を取り出して準備していた。

 私に近づいてこられたので、左手を差し出して目をギュッと瞑っておいた。

 小指の先が一瞬だけチクッとして何かに押し付けられたと思ったら、すぐに絆創膏がまかれていた。


「お、終わった?」


「ああ、よく我慢したね。偉い、偉い。」


 お父様が、大きな手のひらを私の頭に当てて、優しく撫でて下さっています。

 ちょっとだけ小さい子に戻ったようで恥ずかしいのですが……まだ十歳ですから、許容範囲でしょうか?

 私は少しばかり潤んでしまった目を軽くこすってから、胸を張って言い張りました。


「この程度の痛み、どうってことありませんでしたわ」


「うむ、さすがわが娘だ」


 イブツと名乗るペンダントの青い宝石が、再び橙色や紫色の混ざったへんてこな色合いでチカチカと輝いていたかと思ったら、徐々に普通の青色に戻っていきました。


『認証が完了いたしました。今後は、デイジー様がこのイブツのご主人様です。末永く、よろしくお願いいたします』


「よろしくね。イブツ」


 お父様が、小脇にかかえていらしたノートを私の方に差し出しました。


「デイジー、このノートを読んでおきなさい。これはイブツの前の主人であった君のひい爺さんの残したメモ書きで、イブツとの付き合い方についてまとめてある」


「わかりました。でも、これを読むのは後にして、まずは部屋の前で長らく待たせている皆に、イブツを紹介しませんと」


「それなんだが、イブツがインテリジェンス・アイテムであることは、この部屋にいる者だけの秘密にしておくべきだ。部屋を出たら、ただの当主の証である青のペンダントに過ぎないという態度を崩してはいけないよ。青のペンダントにイブツなんて名前があることも内緒だ。皆も分かったね? イブツも、他の従者の前では、なるべく話しかけないように」


 部屋の中の皆は、静かに一斉に頷いていました。


『そのご提案は、シュー様の時と同様です。妥当と判断します』


「ひいお爺様がそのようにしていらしたのでしたら、私もそう致しますわ」


「うん、では首に掛けて。さあ、皆にお披露目ひろめに行こう」


 私は、お父様から頂いたノートをテーブルの本のところに一緒に置くと、イブツを再び首に掛けて、ドアの方に向かいました。



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