ヒロイン絶賛夢見中
「ここは……?」
イリーナは目を開けると雲1つない青い空と生い茂る美しい草原が広がっていた。
そこにポツンと誰かが立っていた。
「あれは……私、前世の私だ。」
目を凝らすとそこにはイリーナの前の身体広瀬奈美がこちらを見つめて立っていた。
「どうして、ここにいるの?死んだんじゃないの?」
10メートル程の距離をゆっくりイリーナは詰めていく。
「あなたに押し付けてごめんなさい。」
奈美はそうイリーナに声かけた。
とても思い詰めている表情だ。
「あぁ、あなた身体は前の私だけど中身は今の私なのね。なんだかややこしいわね。」
そう言って少しイリーナは笑った。
二人の魂が入れ替わっている状態で対面しているらしい。
「どうしてごめんなさいなの?」
イリーナは問いかけた。
「私の運命を押し付けてしまった。」
その応えにイリーナは少し考えた。
「………あなた、この世界の仕組みの事を知ってるの?」
イリーナの問にしばらくの沈黙の後、また応えた。
「全て悟ってしまった………。それまで違和感はたまにあったわ、でもあの夜にその違和感が確信に変わった。」
今にも泣きそうな様にイリーナは少し心配になった。
「お父さんとお母さんのどっちにも似てないでしょ?初めは孤児や捨て子で拾ってきた子なのかなと思ってた。あの夜に聞いたの、私は捨て子だったのかって。そしたら神様からの贈り物だって。」
イリーナは続きを促す様に見つめた。
「初めは冗談かと思ったの、でもある日突然天から神様が降りて来たらしいの。そこで神様が赤ん坊の私を差し出しながら言ったんだって『この子は将来大きな運命を全うするだろう。運命に甘んじ身を任せ立派に育てるのだ。』ってね。それを聞いた瞬間雪崩のように頭の中に様々な絵が入ってきたの。この国の王太子様や他の男の人と恋に落ちたり、そして私と王太子様のせいで王太子様の婚約者様が酷い目にあってたりね。絶望した……自由に友達や恋人も作れない。夢だったパン屋を継ぐことさえできないって……。そんなの…生きてる意味ないよ!!」
言い切ったと同時にその場に崩れ落ち泣き出した。イリーナは駆けつけ抱きしめた。
「…………なるほどね。」
イリーナは独り言ちた。
年頃の娘だ。まだ見ぬ恋の相手に幻想を抱いたり、その幻想を同じ年頃の娘に話し互いに花を咲かせたりとお多感な時期だろう。その最中に決められた運命を急に押し付けられたら泣きたくもなる。
「だがら……嫌になって……あの夜死にたいって思ったの。そしたら、声がしてね?運命に甘んじたくないのかと……。その問にはいって…そしたらっ……!!」
「この場所で知らない女の人になってたって訳ね。」
イリーナは続きを繋げるように言った。
「ごめんなさい。私が死にたいって思ったから…関係ないあなたが運命に従うハメに……。」
その言葉にイリーナは優しく抱きしめ背中をさすりながらこう応えた。
「いいよ、辛かったね。苦しかったね。大丈夫よ、だっていっぱい考えて考えて最後に死にたいって望んだんでしょ?それなら仕方ないし、まさかこんな結果になると思わなかったんでしょ?だからあなたを責めないわ。頑張ったね。もう謝らないで。」
イリーナは強く抱き返されて少し苦しくなったが異議を唱えなかった。
「どぉじて、ゆるじて…ぐれるの??」
顔が涙やよだれでぐしゃぐしゃな様をみて。(前の私って泣いたらこんなに酷い顔なのね………。)とイリーナは思いながらも優しくていねいに言った。
「どうしてって、そりゃびっくりはしたけど怒ってもないし憎んでもなかったから…。それに、お姉さんは強いから運命になんか負けないわ!絶望を希望に変えてやるんだから!!」
イリーナは深く深呼吸をし、最後に言った。
「あなたの仇は私がとる。だから、安心しておやすみ。もう何も心配ないよ大丈夫。」
今まで泣いて許しをこいていたがその言葉を聞き。
「ありがとう……ありがとう。」
お礼の何度も述べながらその身体は光輝きイリーナを飲み込みやがて草原全てを飲み込む程の輝きになった。
◇◇◇
「……っ!!」
イリーナはあの夜と同じ様にベッドから飛び起きた。
「イリーナ!目が覚めたんだな!!どこか痛くないか?苦しくないか??」
「あぁ、よかった、よかったわ。このまま眠ったままなのかと思ったのよ。」
ベッドのそばにいたイリーナの両親が涙目で心から安堵している。
(私、あのあと眠ってしまったんだ。じゃああれは夢??だとしても約束は必ず守ってみせる。)
「…ねえ、私どのくらい寝てたの??」
「14日と半日です。」
そう告げたのはガイ達の後ろで立っていた男である。
「じゆうよっかぁああ?!」
イリーナはベッドに急に立ち上がり叫び出した。
「何?!14日って、どんだけ寝てたのよ!!ロングスリーパー過ぎない、私??しかも何も食べずに寝続けてたの?!何で生きてんの、ヒロインだからか?!ヒロインすんごいなぁ!!」
太陽の光でキラキラ光るキレイな銀髪を遠慮なくかきむしりながら叫ぶ。あの夜の再来である。
その場にいた皆が荒れ狂うイリーナをしばらくあ然と眺めていた。