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ヒロイン絶賛混乱中

「はぁ~疲れた……。」

仕事とスーパーの帰り道、広瀬奈美はため息交じりに呟いた。

両手には中身がいっぱいの買い物袋、おそらく買い溜めだろう。


(最近やっと宿泊客が増えて嬉しいけど人員が少ないから大変なのよねぇ。)

奈美はとある都会にあるシティホテルのフロントスタッフで働いている。


(でも明日から3連休だからやっとゆっくり出来るわ、よし引き籠もろう。)


連休もあってかいつもより上機嫌な奈美はマンションの階段を駆け上がる。

その時悲劇が起きた。

駆け上がる最中に踏み外し転落してしまった。

両手がふさがっていたのもありどこにも掴めずそのまま後頭部から落ちてしまった。


(あ、これ死ぬやつ。)

そして奈美は意識を手放した。


◇◇◇

「……っ!!」

ここは魔法が存在するグランドール王国。

その中央街に位置する巷で有名なパン屋を経営する家族の家である。

そのパン屋の看板娘である銀髪ショートの少女が深夜にいきなりベッドから飛び起きた。

キレイな黄金の瞳は焦点が定まっておらず今は涼しい季節にも関わらず汗がしたたっている。息もかなり上がっているようだ。


「えっ……何?生きてる??どうして??」

うわ言のように呟いたと同時に少女の目の前に突如、スクリーンが映し出された。

「なに……これ??」

そのスクリーンに触れようと手を伸ばすと文字が浮かび上がった。


-地球の広瀬奈美は死にました。それと同時にこの世界のヒロインが死を望み死にました。よってあなたの魂はこの世界のヒロインの身体に転生しました。これからはヒロインである『イリーナ』としての人生を歩んでください-


「……………はっ?」

そう、この少女は冒頭で出てきた女性こと奈美である。


「しんだ??ひろいん??てんせい??いりーな??」

奈美はまるで初めて覚えた言葉のようにたどたどしくつぶやいている。


しばらくの沈黙のあと

「死んだって何?!後頭部からダイレクトダメージ食らったからか?!そんで死を望んだって何?!望むだけで死ぬの??エスパーかよ!!」

いきなりベッドの上で立ち上がり月明かりでキラキラ光る銀髪を遠慮なくかきむしりながら叫び出した。落ち着いてきていた呼吸もまた荒くなる。


「オーケーわかった。大丈夫、奈美落ち着いて。やれば出来る。私はもう26よいい歳した大人。大丈夫だいじょ……ばない!!やっぱり落ち着くまで慌てふためこう!!」


···10分後


「ふぅ、落ち着いた。まずは現状把握ね」

とあたりを見回していると。


ドタドタドタ………バンッ!!


「イリーナどうした!!泥棒か?!」

「イリーナ大丈夫なの?!」


40手前くらいのガタイのいい茶髪の男と男と同じくらいの歳の細身のスラッとした赤髪の女がいきなり部屋に押し入ってきた。

かなり焦ったようすだ。


イリーナこと奈美が二人を見てあ然としていると


ポンッ


スクリーンに文字がまた浮かび上がった。


-イリーナの父親ガイ、母親セレナ。呼称「お父さん」「お母さん」-


(…なるほど。)

とっさにスクリーンの文字を読み納得した。


「大丈夫だよ。大きい虫が窓から入ってビックリしたの、驚かせてごめんね?お父さん、お母さん。」

「なんだ、そうだったのか。てっきり泥棒でも入ってきたのかと思ったよ。」

「もう、イリーナったらいつまでもお転婆なんだからっ。」


二人は安心した表情になりそのままおやすみと声かけ部屋を後にした。二人にはイリーナのそばにあるスクリーンは見えてない様子だ。


「まあ、こんな夜更けに叫び散らしたらそりゃ起きるよね………。」

ベッドに座り直した奈美はスクリーンを改めて見直す。

「今の私にはこいつが頼みの綱か、どうやって使うのこれ?」

スクリーンを睨みまた呟く。どうやら独り言の多い少女(26)のようだ。

そう、うんうんと考えているとふと右下に家のマークがあった。何気にそれを指先で触れてみると画面が変わった。イリーナの個人情報が事細かに映し出された。


「まるで履歴書ね。」

まじまじと読んでいたらまたいきなり立ち上がった。

「待って、イリーナ美人過ぎない?!私こんなにかわいいお顔なの??ヒロインすごっ!!」

奈美はイリーナの顔写真を見て静かに叫んだ。肩にギリギリかからないキレイな銀髪に黄金色のしたぱっちり二重の瞳、ふっくらとした薄ピンクの唇、透き通った白い肌。こんなに可愛らしい顔をしているのに何故死にたくなったのか不思議で仕方ないらしい。

「いや、他にも知らなければいけないことがたくさんあるでしょーよ。奈美しっかりしなさい。」

そう言うとまた座り込みスクリーンをいじり始めた。


-1時間後


「ふぅ、大体おおまかな事はわかったわ。イリーナって私より結構年下なのね……15歳か。」


ベッドに横たわり大きくため息を吐く。

奈美がスクリーンをいじりわかった事はいくつかある。


まずはこの国はとある乙女ゲームの物語である事。

ヒロインが貴族の学園に入学し攻略対象者と恋愛をするという王道な物語だ。

次に魔法の属性、8つの種類があり『風、炎、水、土、雷、光、闇、無』である。

最初の5つが大半を占めており光と闇は特別な血筋により代々受け継がれるらしい。

「んで、私はその中で一番珍しい無属性って訳ね。流石ヒロイン、見た目だけじゃなく能力もすごいわね。」

無属性とは無が故に全ての属性魔法が使える稀有な属性らしい。

「でも、魔力に目覚めるのはいつよ?」

貴族であるなら5歳の時に神殿で魔力を覚醒させ自身の属性がわかる様になっている。しかし平民は魔力に目覚めたら診断してもらうのである。

「早くしないと学園生活が始まっちゃうわよ??」

そう、なぜ平民のヒロインが貴族専門の学園に入学できたかと言うと。

先程も出たように無属性の魔法はとても稀有な存在であるため異例として国が入学を勧めたからである。

その学園はというと王国一の大きい学園

ニュートラル学園である。

16歳から19歳までの間ほとんどの貴族の令息や令嬢がここで寮生活をしながら学ぶ。

他国からの留学生も多数いるほど有名でもある。

「そこで、王太子様や他のイケメン君達にチヤホヤされたりイチャラブしたり悪役令嬢に意地悪されたりするのね………。」

少し考え込んだ後

「いや、ムリムリ。平民が王太子と結婚??何の教養も教育もないのに??婚約者いるにも関わらずイチャラブ??馬鹿なの?そりゃいじめられるでしょーよ。他のイケメンも何故止めに入らないでヒロインを可愛がるのよ?おかしいでしょ!!」

乙女ゲームを全否定するような正論をスクリーンに向かって言い放った。

「学園に入ることは絶対だから………よし、悪役令嬢と仲良くなって断罪イベント?ってやつをさせない!!しかもこの令嬢ちゃんはこの国の宰相の娘で有力な公爵の令嬢ちゃんで次期王太子妃でしょ?だったら仲良くなっといたらウチのパン屋ひいきにしてくれるわよね?王族御用達になったりして。決まった、最終目標は王太子と令嬢の結婚とこのパン屋を無事に継ぐ!」

これまた盛大に独り言を目をキラキラさせながら放った。

「だから、奈美(前世)を捨てるのは辛いけど…でも考えても仕方ない、イリーナ(ヒロイン)として生きよう。そのためにもこのわけわかんないスキルのヒロイン補正と魅了を上手いこと使いこなさないとねぇ。」

そう言ってその2つのスキルを調べようとしたら異変起きた。


「何??身体が急に熱く……」

ベッドの上で急にうずくまり出した。


-自身をヒロインとして受け入れたため、魔力に目覚めます-


(目覚めるの今なのね。)

その独り言は声に出ずにそのままイリーナは意識を手放した。

別のサイトにも同じもの載せてるのをこちらにも載せてます。

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