34.君子と悪人
今日は一話だけ...
「平原君、ありがとうございました!」
趙括は去る前にもう一度趙勝に礼を言って一拝した。趙括は本心から趙勝に感謝している。
趙勝は彼を城門まで送った。平原君の屋敷から城門まで、馬車の長蛇の列ができている。趙勝がいなければ、これほどの食料を運ぶことはできなかった。何せ、平原君とその門客たちは趙括に三十万石もの栗米を貸してくれた。
一人が一年に食べる栗米は二十四石くらいだから、三十万石の栗米は一万人に一年間も食べさせることができる。当然まだ畜生もあるのだが、一度に運ぶのは難しい。趙勝は牧場が三つあって、畜生も多い。
趙勝は家禽が嫌いで鶏などを飼っていなかったのは残念だった。しかし羊四千匹、豚千頭を趙括にくれると約束したから、間違いなく約束破らない。そういう人だ。
趙勝の動機は何にせよ、趙括を助けてくれた!趙国を救った!これらの食料があれば、廉頗将軍はまだ戦える。秦軍の食料がいくら多くとも、数年も持つわけがない。そうでなければ、歴史書に書いてあるように捕虜を殺すことはなかった。
趙括は時間が迫ったので、東武城に泊まろうとしなかった。趙勝も宴会が終われば、すぐに家臣を呼んで、馬車に食料を載せ始めた。同時に付近の城にも家臣を派遣した。趙勝はいくつかの城に自分の食糧庫を持っているのである。
趙勝の門客は多く、家臣も少なくはない。趙勝が派遣した家臣がほかの城から食料を馬車に載せると、その城にいる門客たちと共に馬服へ向かうのである。
趙勝の家の馬車は足りなくなったが、ほかの貴族が平原君が馬車を必要と聞いたら、馬車のみならず馭者まで貸してくれた。百姓たちは馬車の数に驚き、平原君の挙動が耳に入った。
さすがは平原君!格が違う!友の為に財を惜しまない!これほど友の為に犠牲してくれる人は、趙国のどこに二人目がいるのか?
趙勝は趙括と一緒に歩いて、趙括は嬉しそうに馬車に載っている食料を見た。
趙勝は傲然と馬車を見て、
「私はすでに彼らに出発の命令を出した。他の城の人たちも恐らく出発の準備をしているはずだ。もしかしたら道の途中で出会うかもしれない。それと牧場の方にも人を遣わしたが、多少は遅れるかもしれない。」
「ありがとうございます!平原君。」
「それと....」、平原君は少し遠くにいる集団を指した。彼達は馬に乗って、兵器を持っている。
「それだけの食料を運ぶことは非常に危険なことである。この人たちは私の門客たちだ。彼らがあなた達を馬服まで護衛する。他の隊にも護衛の騎士を派遣した。合わせて二百人もいるから、安心して良い。」
趙括は言葉が出ずに、しばらくしてから、
「あなた様の恩徳は決して忘れません。いつか必ず報います。」
趙勝は平気な顔をして、頭を上げた、
「こんな物は恩徳とは呼べない。遠慮するな、持っていけ!友達のためなら、私は命も惜しくない。」
「私は当然伯父様がどんな人かがわかる。しかし、伝えたいことがあります。」
趙括は周囲を見て、声を低くした、
「人は質にあって、数にあらず。人柄やその過去を問わず広く門客を集めることは、きっと悪人も混じれて、あなた様のいの..あなた様の評判を傷つけるかもしれません。どうか気を付けてください。」
平原君と馬服君は兄弟のような仲であるため、趙括が趙勝を伯父と呼ぶのは問題ないのである。
趙勝も傲慢な顔を変えて、笑いながら趙括の肩をたたいた、
「安心しなさい。分かっている!馬服子も道中気を付けて。」
趙括はうなずいて馬車に乗って、東武城を出た。
馬車の列は依然と城を出ているが、趙括の姿はすでに消えた。趙勝はヒゲを撫でながら、微笑んで遠方を見た。
「彼は仁義があり、悪人ではなさそうですね。」
いつの間にか、平原君の隣に老人が一人立っていた。
趙勝は笑いながら、
「そうだな、まさか趙奢にこんな息子ができたとは私も思わなかった。」
「ハハハ~」と老人もヒゲを撫でながら笑った。
「最初は彼を怒らせるために人を仕組んだのだが、まさかこの年でこれほど我慢できるとは...少し趙奢が羨ましくなってきた。」
趙勝はそう言って屋敷の方に歩いた。老人も彼の背後を歩いて、
「しかし、良かったではないですか?彼がいなければ、あなた様も長平を支援できなかったのではないですか?」
「そうだな...趙括はきっと私のことを名声しか気にしなくて、兵士たちの命を気にしていない人だと思っているに違いない。だったら私も彼の心の中の平原君を演じてみた。」
「はあ~...私の本当の甥はいつも私のことを警戒していて、ちょっとしたことですぐに謀反の罪を着せてくるかもしれないのだから、偽善者を演じなくてどうする?」
趙勝の困った顔を見た老人は、
「しかし今は違います。あなた様はただ趙括に食料を貸しただけで、送りに行くのは趙括である。趙王もさすがに子供を恐れるわけがありません。」
「しかし、あなた様は食料を贈ったが、この名望は趙括にあって、誰もあなた様に感謝しないでしょう。」
「ハハハ~~私は趙国の公子平原君だ!趙国は私の家だ!私はたとえ趙国のために戦場で死んでもよい、ましてや食料くらい。」
老人は真剣な顔で、
「もしあなた様が趙国の王であれば、趙国はこんな事にはならなかった。私は......」
趙勝は怒った様子を見せ、
「それ以上言うな!もしまたこのような事を言えば、私は私自身の耳を切り落とす!」
それを聞いた老人はため息をし続けた。
別の話に切り替えようとする趙勝は、
「だがしかし、趙括の言ったことも一理ある。公孫、私のために悪事をしたことがある門客を掃除してくれないか。また私の甥が安心できるように、少しだけ残してくれ。」
公孫はうなずいた。




