特異点
帝魂
7話:特異点
隊長に送ってもらった俺は、すぐに3番隊の基地に行った。
「えっと…すいません!4番隊の秀人です!」
ドアの前で叫ぶとドアの向こうからドタドタと足音が聞こえてくる。そしてドアが空いたと思ったら…
「秀人〜!すまんかった!!俺が悪かった〜!許してくれ〜!もうあんなこと言わないからよ〜!!」
涙目で飛びついてくる仙一。そしてその奥に
「仙一?基地のドアを軽々しく開けるなって何回言ったら分かるの?」
何かものすごいオーラをまとった美奈子がいた。
「だって〜」
「だってじゃないわ!そのせいで私まで怒られるのよ!?次やったら100回平手の刑だからね!」
「そ、それだけは勘弁をーー!」
さっきとは違う意味で涙を流す仙一であった。
「で、なんだが…その…すまなかった!許してくれ!」
「秀人は悪くないって!俺らが言い過ぎてたんだから謝るのは俺らだよ」
「秀人は私達の為を思って行ってくれたんだよね?だからほんとは感謝しなくちゃ」
「違うんだ!あの時の俺は何っていうか…おかしかったんだ!どうかしてた!あの時俺は守りたいんじゃなくて逃げてた…だけどもう逃げない!」
「「秀人〜!」」
2人共泣きついて来た。仙一はともかく美奈子まで泣きつくとは、少し驚いた。
俺は美奈子達に今日あったことと後少しの世間話をして別れた。
4番隊の基地に帰ると俺は意識を失う用にベットに横になり、睡眠を取るのだった。
次の日
「秀人、次の任務なんだが、焔と向かってくれ」
「え?」
2番隊の隊長と?
まさか焔さんと一緒にとは…どうやら経験を積ませる目的で戦力としてではないらしい。
「ぼさっとするな、さっさと来い」
「す、すいません」
「たく、こんなたわけと一緒とか実際は嫌だが、まあ良しとしよう」
何かが心に刺さった気がした…
「今回の獲物はあれだな。調査隊によるとランキング20位と21位と24位みたいだな」
人型の悪魔が3体、しかも昨日倒したやつよりも圧倒的にランキングが高い!
「正直17位以下は全部同じようなもんだ。すぐ代わりも出てくるからな。まあ見てろ」
そう言うと、焔さんは歩き出した。
「ニンゲン?」
「ヒトリダ」
「クッテヤル」
「食う…か…まあやれるんなら好きにしろ」
焔さんがそう言うと悪魔の1体が飛びかかる。すると
[火柱]
直線の狭い範囲に絞られた炎がまるで地面から吹き出すように襲う。そしてその炎が消えるとそこになったのは黒い炭のような灰だけだった。
「ナニヲシタ、ニンゲン」
「ニンゲンヒトリゴトキノハズナノニ」
「何って、ただ燃やしただけだぞ」
「「コロス!」」
「さっきの光景を見てよく突っ込んで来たものだな」
[火突]
まっすぐな炎のレーザーが2体の悪魔に突き刺さる。そして悪魔は塵となって消えていく。
…まるでレベルが違う。おそらくさっきの悪魔は昨日倒したやつのような変形、もしくは特殊な技みたいな物があったはず。それもランキングからして圧倒的に強い物が。しかし、出さずに…いや、出す暇もないほど圧倒な力で死んでいった。これが…帝魂…
「言っとくが俺の能力が強いわけじゃねえぞ。一点に集中してるだけだ」
「い、一点に?」
「そうだ。範囲が広けりゃあそりゃあ当たりやすいが、範囲を絞って打てば、低出力でもかなり威力が出る。密度が上がるからな」
「なるほど」
範囲を絞る…か…
「何ぼさっとしてんだ?帰るぞ」
「は、はい!」
俺は今日、格上の存在、そして何かヒントのような物をもらい、基地へ帰還した。
焔さんと一緒に任務に行かせてもらった後俺は基地に帰って寝ることにした。たった2日間だが、とても濃い2日間だった。そんなことを考えながら俺は、意識を手放した。
総隊長から、帝魂に対して集合命令がかかった。…珍しい。何かあったのか?
「よく集まってくれたのう」
この場に8人の帝魂と幸樹の9人が集まっている。
「何で幸樹がいるんだよ」
「俺がいなかったらお前ら失礼を働くだろ!」
「俺らはお前より階級上だぞ?燃やしてやろうか?」
こいつならほんとにやりかねない…
「焔、落ち着け、燃やすな」
「分かってるよ、冗談だ、冗談」
「いや、さっくんが止めなければ絶対燃やしてたわね」
「…俺もそう思う。炎が広がらないように耐火の布を出そうと思ったとこだった」
「流石如月さん」
「みんな元気なようじゃの〜」
「で、総隊長、今回の要件は?」
「結論からいうかの、4箇所の特異点が見つかった。そこに向かってもらう」
「「「「「「「特異点!?」」」」」」」
聞き覚えの無い単語に、総隊長以外の全員の言葉が重なる。
「そうじゃ。4箇所だけ、空間に歪みが生じている場所があるんじゃ」
「…もしかして、悪魔に関連が…」
「さすが如月じゃのわしもそう睨んでおる」
「なるほど。だから8(9)人か。2人ずつでペアを組むのか」
珍しく御成斗(7番隊隊長 桜 御成斗)がまともなことを言った。
「じゃあ佐藤君一緒に行こう」
やっぱりそれが目当てか
「だめ!さっくんは私と行くの」
「うるさい!お前は女同士楽菜姉妹と行けよ!」
「なんでみんな私のことようって呼ばないの!?」
「私もみかって呼ばれない…」
「「「「「楽菜姉妹の方が定着してるから」」」」」
総隊長以外の帝魂は同意見のようだ。
「とりあえずペアを作るのじゃ。わしは一人で行く」
「え?でも人数…」
「幸樹は残ってくれるかの?」
「え?父さん?嘘…だよね?」
「総隊長…」
「特異点では何が起こるか分からない。幸樹は正直まだ危ない」
「俺は戦える!父さん!俺も行かせてくれ!」
「ならぬ!それに、帝魂が全員いない状況でまとめられるのは幸樹だけじゃ。何も弱いわけじゃない、幸樹には残ってみんなをまとめて欲しいのじゃ」
「分かったよ…父さん…」
「すまぬ、幸樹よ…頼りにしとるぞ」
「………うん!」
結局ペアは、第1特異点 焔、如月 第2特異点 楽菜姉妹、俺 第3特異点 御成斗、幸子 第4特異点 総隊長 というふうになった。この特異点に向かうことであんな事になるとは、今の俺たちは予想するすべもなかった……
「作戦はどうだい?」
「はい、滞りなく“渦”も作成しました」
「うん、いいね。君たち、頼りにしてるよ。“大罪の悪魔”達」
「「「「「「「もちろんです!魔王様」」」」」」」
「ふふふ、帝国直属防衛軍、せいぜい楽しませてくれよ?」