大罪
帝魂
5話:大罪
「仙一…本当に仙一なのか?」
「なんだ秀人〜、信じれないのか?」
「だって、仙一は死んで…」
「死んだところや死体は見たか?」
「いや、見てないけど」
「じゃあ生きててもおかしくないだろ」
生きててもおかしくない…か、ならもしかして!
「じゃあ美奈子も!」
「…美奈子は…」
流石にそんな都合のいい話はないか…
「基地にいるぞ」
「紛らわしいわ!」
でも話して確信した。こいつは間違えなく仙一だ。
「あとから詳しい話聞くからな!」
「ああ、ってかあいつどうしたんだ?」
強欲の悪魔は炎の中でなにか言いながら固まっている。
「強力な魔法が使える魔法使いの人間に神器の持ち主、さらにサラマンダーの契約者…ははは!何って素晴らしいんだ!」
不気味。それは不気味そのもので、とても怖かった。
「欲しい!欲しい!!欲しい!!!欲しい!!!!お前らすべて俺のものにする!絶対だ!俺はお前らが欲しい!」
「俺らを捕えられるかな!サラマンダー![スターライトメテオ]」
竜が炎を上に向けて放つと、その炎は星の形として降り注ぐ。
「違う違う違う違う。サラマンダーの強さはこんなんじゃない。全然生かせてないよ、君」
「なっ!」
「どうしたの?終わり?」
「ッ!まだだ![火竜の息吹]」
「同じ攻撃は効かない…!」
「一人でだめなら」
「二人でだ!」
<火竜の息吹>で目を遮り、その後ろから音波をナイフの形に変化させ凝縮された威力で後ろから刺した。
「…いや〜、見事だよ、君達。でもね、」
「ゴフッ!」
俺は殴られ、後ろに飛ばされる。その勢いでナイフも強欲の悪魔に対して更に深く刺さる。
「君らの常識は通じないよ?」
強欲の悪魔の傷口はすぐに塞がる。
「俺は悪魔だ、傷くらいすぐ塞がる。今のはチャンスだったのに、何もできなかったねー。残念、残念」
「まだ…」
「もうあんなチャンスあるわけ無いじゃん」
強欲の悪魔は一瞬で仙一に近づき!吹き飛ばす。今までとは比にならないスピードだ。
「仙一!」
「次は君だよ?」
俺の前に一瞬で来る。それを待っていた!
[サウンドブレイク]
俺のすべての力をここに込める!
強欲の悪魔はいきなりの爆発でダメージを負い、態勢を崩す。
おれはもはや立つことすら出来るか怪しい。だから任せた。
「仙一!!!」
[インパクトメテオ]
竜の口から岩のような炎が放たれる。おそらく最も強い技だろう。これで!
「……いい技だったよ…でもまだ生かせてないよ」
「あれで生きてんのかよ…」
「あの程度じゃあ無意味も無意味さ。じゃあ3人全員動けなくなったとこで、君達をもらっていこうかな」
「まあ待て、悪魔よ」
絶望的な状況で聞こえたその声は
「隊…長?」
「秀人、よくこらえた。あとは任せろ」
「…帝魂ね〜。欲しいけど、今はまだその時じゃない。ここは引くしか無さそうだね」
「逃がすと思うか?」
「良いのかい?少しでも殺気を感じたり、君が動いたら、この人ら死ぬよ?」
「っち!わあったよ、さっさと行け。ただ、次あったら殺す」
「怖いな〜、じゃあまたね〜」
「お前ら、無事か?…ってどう見ても無事じゃないな。報告は落ち着いてから聞く。迎えの車は用意したから、帰るぞ」
隊長のおかげで俺達は生きて帰られた
「俺は総隊長に報告に行く。お前らは休んどけ…無事で良かった」
そう言って隊長は基地を後にした。
俺達はそれぞれの基地で体を休めている。仙一はどうやら3番隊らしい。
…俺は勝てなかった。俺は自分ならできる、必ず勝てる。そうどこかで、慢心していた…もしもあそこで隊長が来ていなかったら俺たちは一体どうなっていたのか…
分からない、考えたくもない!今すぐ思考を放棄したい!…でもそれは俺自身が許してはくれない…
仙一…仙一と話せば少しは気が紛れるかもしれない。
…3番隊の基地に行ってみよう。
ベットの上、私は寝転がっていた。
私は何もできなかった。あんな気配は初めてだった。あれで17位、まだあの上に16体もいる。そんなのに私が戦っていいの?私なんかに戦う資格があるの?私なんかに…
「ら、雷子ちゃん?」
「え?わあぁ!びっくりした〜いつからいたのよ」
気がつくと千紗が隣にいた。
「つい…さっき…雷子ちゃん怪我したって聞いたから、その…心配になって…」
「この程度大丈夫よ!すぐまた任務に行かなきゃね!」
そう言って私はベットの上で状態を起こし、少し痛む体に鞭を打つように無理やりベットからおり、扉を開けようとする。すると
「雷子ちゃんは…もう諦めちゃうの?」
千紗はどこか悲しそうに、そして残念そうに聞いてくる。
「諦めるって何の事?私は明るく過ごすだけよ!」
「さっき雷子ちゃん…もう強くなれない…もう…限界って顔してた…」
困った、完全にばれてる。…もう正直に言おう!
「だって任務で私は何もできなかった。相手は17位よ!上に16体もいるのよ!でも本当に…何もできなかったの…だから」
「だから…諦めちゃうの?」
「!!!」
千紗がいつもより早口で、そして怒っているような感じで言った。
「………私に…私にどうしろって言うのよ!!!!」
「!?」
「だめなのよ…私くらいの実力じゃ…私には魔法しかない、でも魔法も通じなかった…私のとっておきでさえも…それでも諦めるなっていうの!!!?まだ強くなれるから頑張れっていうの!!!?」
「うん」
「どうしてよ!!!」
「私…実は…雷子ちゃんにあこがれてたの」
「!?」
「とっても頑張り屋さんで…いつも明るくて…才能もある…だから諦めてほしくない、私のあこがれであってほしい!私が…頑張れるために」
「そんな勝手な…」
「じゃあ雷子ちゃんはもう戦わずに怯え続けるの?」
「そんなわけ無いじゃない!」
「じゃあ頑張るしか無いじゃない!言い訳してないで!」
そう言われて私はハッとなった私は弱い自分、何もできない自分がいやで帝防に入った。それなのに私は自分から何もできない自分に戻ろうとしていた。
「千紗…ありがと…」
「雷子ちゃん…あの…泣かないで?…雷子ちゃん…らしく無いよ」
私は気がついたら泣いてしまっていたようだ。
「そうね!私は私らしく笑って無いとね!」
そう、私は一人じゃないし、まだ戦える。強くなれるんだ!
「えっと…すいません!4番隊の新町秀人です!仙一と話したくて来ました」
反応はかえってこない。
「あの〜…」
ガン!
急に空いた扉で壁とサンドイッチ状態になる。
「少し出るの遅くなった!すまん!…ってあれ?秀人?…帰ったか?」
「お、おい…ここだ…速くドア閉めてくれ…」
「おおーそんなとこに、すまんすまん」
「お前…ほんと…はあ〜…」
「秀人、体は大丈夫か?」
「ああ、それより少し話そう」