変わった日常
漸く本編に入れました。
遅くなり申し訳ありません。
宜しくお願いします。
すみません、少し修正致しました。
厚い雲に覆われ、今にも雪が降り始めそうな空を教室の窓側の一番後ろの席からボーと眺めている男子がいた。悠也だ。担任が休みの間の出来事や新しい年がきたから新たな目標を立てましょうとか言っている。そう今日から3学期が始まり、悠也とっては両親が亡くなって最初の年越しを終えていた。
両親の事故から約2ヶ月。
あの後、病院側から連絡を受け、両親の親友で悠也の幼馴染みの一希達家族がやって来た。病室で泣き崩れた悠也を引き取り、その後もショックで放心したまま使い物にならなくなった悠也に代わり、葬儀や事故などの手続きを何も言わず引き受けてくれた。また両親達も何かあったらいけないと生前に色々やっていたらしくそう時間を要することなく落ち着きを取り戻していっていた――
悠也の心を置き去りにしたまま――
「――と言う訳で、先生の話は以上だ 明日からは三学期が始まる 気を引き締めて行くように」
『はい!』
「では、今日はここまで 気をつけて帰るように」
「起立! 礼!」
『ありがとうございました!』
――どこ行く~? 明日から行けなくなるしカラオケ行こ~
―ーさっぶ! コンビニ寄ってこうぜぇ~ 賛成~
ザワザワ ガヤガヤ
「悠也、帰ろうぜ?」
「……あぁ 終わってたのか…」
今日は始業式の日。早めに帰れるのは暫くない、よって他のクラスメートたちは早々に帰っていく中で、悠也は今気づいたとばかりに声をかけてきた一希の方に向き直った。
一希は何か言いたげに悠也見ていたが、小さく息を吐いただけで言う事はなかった。あの日以来、何もかもをやめ自分の殻に閉じこもてしまった悠也を1番近くで支えていたのは一希とその家族と――
「オッス! 迎えに来たぜ」
「……勝手に教室はいんなよ また言われるぞ……」
いつの間に入ってきたのか、いつものニカッとした笑顔で一希の横に並んでいる拓斗と、小言を拓斗にいいつつ、いつも通り気だるげな感じでやって来た奏――
幼馴染だった――
だが、悠也の心は動かぬまま。
生活と呼ばれる事は1人で出来る悠也なので、3人が様子をみつつ危ないと思ったら一希の家に引っ張て行くか、無理やりはいるという事を何度か繰り返している状態だ。冬休みの間は行っても出かけないし大丈夫だと言う悠也に押し切られる形で締め出され、様子だけ毎日見に行くという感じだった。
あの日以来何もかもが変わってしまった
いつもなら、このメンバー(いつ面)で帰っていたが、今は違う。
「……悪いけど、今日も1人で帰るわ……」
「なんでだよ……! そう言って全然一緒に帰ってねぇじゃん! 休みの間中だって遊んでないし……!」
「落ち着け拓斗 悠也、久々に一緒に帰ろうぜ……? 帰るくらいいいじゃねぇか」
「そんな気分じゃねぇんだ…… じゃあな……」
「ちょっ……! 悠也!!」
そう言って悠也は右手でカバンを掴むと立ち上がり、拓斗の声を無視するようにその横を抜け、教室を後にしようとした時、黙ったままだった一希が悠也の左腕を掴んだ。いつの間にか、教室には誰もいなくなっていたようで3人だけになっていた。
「……離せよ」
「いい加減にしろよ……! いつまで、そうしてるつもりなんだよ! あの人達がそんなお前見て喜ぶとでも思ってんのかよ……!」
「っ!!」
そう怒鳴った一希は悠也を睨み付けた。だがその眼の奥は苦し気で、悠也を思っての叱咤激励というものだろう。だが、今の悠也には逆効果だった。掴まれていた左手を思いきり振り払い一希の肩を逆にガシッと掴んだ。結構な力がこめられているようで一希の顔が顔が痛さで少し歪んだが、悠也から視線を逸らすことなく睨み続けている。対して、悠也は顔を拭いているため表情を読み取る事が出来ない。
「……んな事、お前に言われなくたって分かってんだよ! けど、どうやったって受け入れれる事が出来ねーんだよ! お前らは…… 良いよな…… 親がいて…………」
「悠也……」
悠也の声や身体は微かに震えていた。
「今は…… ほっといてくれ!!」
「っ! ちょっ! まて!! 悠也!!」
「悠也!!」
「……待て」
一希の肩を突き飛ばすと、そのまま教室から飛び出して廊下に出ると拓斗と一希の声に振り向く事なくそのまま帰っていった。そんな悠也を追いかけようとした2人を止めたのは奏だった。それに、真っ先に噛み付いたのは拓斗だった。
「なんで、とめんだよ!」
「今行ったって、これの繰り返しになるだけだ 今は何やったって悠也は聞いてくんねぇよ……」
「けど!!」
「あいつだってこのままじゃ駄目だって分かってんだ…… だから、今は待ってやろうぜ?」
奏の言葉にまだ何か言いたそうな拓斗が口を開く前に、一希が一つため息をつき苦笑いを浮かべた。
「……だな 悪い、俺熱くなって見えてなっかた……」
「……ふぅ、確かにな~ わりぃ でも、一希って冷静に見えて一度火がつくと周り見えなくなるからな~ ギャップって奴だな!」
「何言ってんだ 一番周り見えてない拓斗が言ってじゃねーよ…… いつも俺がどんだけ苦労してると思ってんだ……」
「ホントだよ…… お前だけには言われたくない」
「ぐぐぐ……」
「「「……ふ、はははは」」」
先程とは打って変わって、3人の間にはいつもつるんでいた頃の雰囲気が戻っていた。
「は― 久々だな この感じ」
「後は、悠也だけだな」
「だな 俺達は待つだけだ…… 帰ろうぜ」
「おう!」
「そうだな って、あいつカバン忘れてやがる」
「ホントだ 帰りに届けてやろうぜ」
「帰ってたらいいけどな……」
悠也の忘れて行ったカバンを一希が持つと、3人は帰るために教室を後にした。
その後、寄った悠也の家には誰もおらずおいて帰ろうかとも思ったが貴重品も入っているだろうと思い、悠也のカバンは一希が持ち帰る事となった。幸い、連絡手段である悠也のスマホは本人が持っている事が分かったので、メールを入れて悠也が取りに来る事を待つことに。
3人は、少し言ったところの十字路で別れそれぞれの家に帰っていった。
その後、悠也が一希の家に来る事はなく、一通の「明日受け取る」と言うメールが来ており一希は家に入れたのか?と思いつつも、そのメールに「分かった」と送ったのだった。
その少し前に、とんでもない事態が悠也の身に起きており、それに巻き込まれていく形となっていく事など、知る由もないのだった。