備えて
『で?こんなものを取り付けた次は何をするのかしら?』
竜状態のノワールの首辺りから胴体にかけて、その川装備を着用してもらう。自動伸縮機能のおかげか、竜状態のノワールでも難なくつけられることが出来た。ノワールの方も不快感を感じることはなかったという。
「ああ、そのバックルは収納するためのもの。そしてそこに収納するものは、魔力の回復を促進させてくれるものだ」
そうして秋が一言呟くと、秋は【帝王の宝異箱】に入れていた、昔の迷宮攻略を支えた影の英雄である魔剣たち———『回帰剣:ウィズダム』『福音刀:ウェルダント』『群癒剣:ウエルトバルト』『回復魔剣:ベルクーリ』『治癒刀:生玉』を順々に出し、それらを先と同じ様に『翔り妖精の颯』で飛行し一本ずつ収納していく。
『秋?…その魔剣は———』
「ああ、これが秘策。魔力の回復を増幅する効果を持つ魔剣。俺がスキルで創造した」
『魔剣創造のスキルを…創造?……秋、貴方は……規格外にもほどがあるわね…』
ノワールも絶句といったレベルだろうか。だが本題は残り20本もの枠だ———『回復魔剣:ベルクーリ』は双剣だが、回復機能という点においては形状に関しては関係ない。二つまとめて一つのストレージに収納した———そしてこれらの空きをどうするかを今秋は考えている………正確には、どんな魔剣を創造しようか。だが、
(やはり迷宮攻略の為の急造品だったからか、能力がバラバラで今役に立たない物もある。能力を一つにまとめつつ、何か能力を足す様な形では運用できないだろうか———)
秋のスキルも、スキルの扱い方もやはり過去と比べて大きく成長している。進化を遂げるたびにカタログスペック以外の所も強化されているのが秋には理解できた。だからこそ今なら、もっと強い能力を持つ剣を作れるという確信があった。
同様に効率を求めるのであれば、先ほどの5本———ベルクーリは双剣だが———は何かしらの形で混ぜ込んで使うのがいいだろうとは思っていた。5本の魔剣に込めた魔力は昔の秋の最大限。だからこそその魔力を無駄にする行為もまた少しばかり効率とは離れていると秋は感じていた。
(だからこそ————よし、決まった)
秋のコンセプトは固まった。後は実行するのみ————ノワールの背中で胡坐をかき、眼を閉じる。
そうしてイメージするのは群刀。あのイグナローヴの形を参考にしながら、ゆっくりと形を織りなす。その数は約20本。
秋から光が漏れだす。魔力が呼応する光。それらに吸い寄せられる様にさきほどノワールのバックルにしまわれた5種類の剣がカタカタ、フルフルと揺れ動きだし、そして秋の元へと飛んでいった。
秋の魔力に踊らされる様に5種の魔剣が20本の今もなお形作られる魔剣に合流すると、それらと共に円を成し始める。
ラストスパート。意志を込める段階は終了し、形を織りなすための大量な魔力が注ぎ込まれる。そして円を成した25本の魔剣群が徐々に回転を始め、その回転はピークに達した———。
「完成だ」
その言葉を最後にパーッと光が差し込み、それらは極光と化して生誕した。25本の新生回復魔剣の能力はこれだ。
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真魔群剣・イヴェルダント
魔力を真に司る魔剣。25本の魔剣は役割を持ち、個にして群である魔剣群は、その時々で能力を変え姿を変えて真の魔を追い求める。全にして個。全てが意志を持つ。認められる者は真なる者でなくてはならない。
魔力回復増量
一定範囲内にいる生物の魔力回復量を促進させる。
指定対象魔力回復
対象を指定して魔力を回復させる。
五変群魔
『魔力吸収』『物質魔力変換』『魔力貯蓄』『魔力譲渡』『魔力回復速度強化』の五つの能力を、25本の魔剣に割り振ることで発動させられる。なお割り振りは自由に行うことが出来る。
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「おお………これはまた……」
こうして秋の元には合わせて25本の魔剣がバラバラと積まれていた。ノワールの背には普通以上の風が吹いているのは当然だが、それによって魔剣が流されることは決してない。剣の素材は鉱石。それらが風に負けることなどないように、たとえ魔力で形作られてようとその様は変わらない。
そしてそれらの内から一本を手に取ると、魔剣が全て起動したのを感じた。一斉に浮き上がる魔剣。これは群刀ならではなのかもしれないが、魔剣はその強すぎる力から自我が芽生え、意志が目覚める時がある。そして群刀は確実に何かしらの意思が宿る。それらに共通する事は、自身で魔力を使い行動を行えるという事。つまり浮けるのだ———勿論例外は存在する。意志を持つに動けない魔剣。浮くことはできるが意志を持たない魔剣など———だからこそ先程持った一本の意思に呼応して皆が反応する。
「そうだな……試してみたい事がある」
そう、試してみたい事。それを試すべく秋はある物を『帝王の宝異箱』から出した。それは『魔剣:シュプナローグ』だった。
秋は意志を込める。25本全ての機能を、『魔力吸収』機能に設定し、シュプナローグを“食わせた”。
魔力を吸い上げるイヴェルダント。そして30秒と経たないうちにシュプナローグは茶色い錆となって消えた。魔力が亡くなれば魔剣ではなく、魔剣でなければ剣ではない。なぜなら【魔剣創造】スキルによって生み出された剣だからだ。
だがその魔力は絶大だった。そしてそれらの魔力を秋は、イヴェルダントの機能を変更して自身に流した。
「うっ…」
膨大な魔力を喰らった。その魔力なんと8万。あの時ゼウスの70万を死ぬ気で耐えたが、一瞬だけあれを思い出す魔力量だった。最も来るとわかっていれば飄々と耐えれたことには違いないのだが。
そして秋の魔力量は0から8万まで回復し、秋はイヴェルダントに命令を意志を送って、25本全てをホルスターに収納し機能を全て『魔力回復速度増加』に設定した。
◇
『ねぇ。リア、ああいう時秋は周りが見えないのかしら?』
「ん。ついでに聞こえない。私が困った顔しても大体そう」
『———でも、あれって魔剣……なのよね?』
「ん。秋の魔剣創造スキル。私はあれで助けられた———」
『………』
ノワールが無言の裏には、やはり秋と出会えてよかったという安心感が先行していた。魔剣を創造し、スキルを創造する。それは神の如き所業。だからこそ、ノワールの、竜人の強敵たる邪龍を倒せる。このホルスターだって、魔力回復速度の上昇だって、スキル創造だって、何を目的にしているかは十分に理解していた。
秋もまた努力している。邪龍を倒すために。
これが分かるだけで、ノワールは秋が何をしてもいいとさえ思えた。今はただ、秋の異常性に好奇心が湧いていたとしても、それを殺す事など造作もなかった。邪龍の元に一刻も早く秋を送り、そして討ってもらうのだ。邪龍を。集落の人たちに危害が加わる前に——————
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