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決断の天秤

長らく間が空いてしまい申し訳ありません。


現在少しずつではありますがこうして小説を進めておりますので、良ければ読んでいただけると幸いです。


現在までのあらすじ。

秋とリアは異世界の知識や今後の為になる情報を集めるべく商業都市トリスの大図書館にて情報を集めをしていた最中。スタンビートを壊滅させたのが秋だと知る竜人の少女ノワールが竜界へと秋を連れていった。

その中でノワールに『邪龍を倒して欲しい』とお願いされるが、秋はこれを拒否。

ノワールと秋は一戦交えた後。秋の勝利のまま竜界を後にするが、リアからノワールと『星王龍』との関係を示唆される。

そしてノワールと秋達は、話し合いの場を設けるべく近くのレストランへと足を運んだ……。

こうして近くのレストラン。初めてトリスに来た際に訪れたレストランに、秋目掛けて襲ってきたある意味では犯罪者の竜人ノワールと、リアの三人で席を設ける事になった。


各々が食事を頼むと、待っているのは静寂。テラス席も前と同じ環境だったが、その雰囲気は前とは180度違うものだった。


それに耐えかねて、あるいは好奇心に負けてというべきか、話を切り出したのは秋だった。


「それでだ。お前を連れて飯まで来たのは他でもない。———リア、確かこいつらの集落は、『星王龍』と交信できるって言ってたか。…どういうことだ?」


「ん。『星王龍』は、本でも書いてあった『四皇龍』の内の一体。大地・空・海・そして星を守護するべく世界に創造された龍。そしてその星にあるあらゆる知識を持つと呼ばれる。別名が『賢者の龍』———あってる?」

「はい。リア様の言う事は間違っておりません。そして我々の集落は、その『星王龍』を祭る祭壇を守護する事を長きに渡り受け継ぎ今も続けてきました」


ノワール・リア両名が語る『星王龍』のイメージは、その名前も相まって秋の記憶に刻まれた。星の王とまで呼ばれたその龍は、秋にとって何かとてつもなく大きな物に触れようとしているような禁忌の感覚さえ覚えた。


「はぁ……。なるほど、その『星王龍』がどんな奴かってのは分かった。だがリア、肝心なのは“そいつに会えるか”と“そいつが教えてくれるか”だ。会えなければ意味がないし、会ったとしても俺らが知りたい事を教えてもらえなければ意味がない。だろ?」

「ん。でも『星王龍』の神殿がそこにあるって事は……貴方。もしかして巫女?」

「え?…ええ、はい。私は族長の娘ですから…。一応、巫女という事になります」

「じゃあ聞く。もし秋が「星王龍に会いたい」と言った際。あなたは私たちを星王龍の前に会わせられる?」

「………答えは、はい。です。私の力と神殿があれば、引き合わせることは可能でしょう」

「————そうか…」


リアの問いに可能と答えたノワールを見て、秋は顔色一つ変えなかったが、それでも少しの功名に、足が進む事に嬉しさを覚えたのは言うまでもないだろう。


「で、もう一つは“話を聞いてくれるかどうか”だ。どうだノワール。そいつは俺らの話に耳を傾けてくれそうか?」

「…記録や文献では、迷える人の子に助言を施した。などといった人と会話する様子がたびたび描かれているのは知っています。それに私も成人の際、一度ではありますが星王龍の声を聴いております。その上で確約はできませんが、それでも話を聞いてくれる可能性は十分にあるかと思います」

「……ふーむ。なるほどなぁ…」


秋は考えた。決断するのにもう少し情報の整理が必要だと思ったからだ。それにノワールが嘘を言っているとも限らない。秋が知るノワールの立場を考えても、ここで『できません』なんて言えばそっぽを向かれるのは知っているのだ。それにノワールの側は何であれ邪龍を倒してくれればそれでいいと思っている可能性も否定しない。いざ邪龍を倒しても、向こうが約束を守らない可能性。それは秋がタダ働きをさせられているのと同じだ。そのリスクを背負ってまで強大な邪龍に挑むリスク。それを天秤にかけて決断しようとしているのだ。


とその時、丁度頼んでいたメニューが無事に皆の手元に届き、談合は一度打ち切られることとなった。秋は頼んだメニューを頬張りながら、決断の天秤を揺らし続けた。







皆が皿を空にし、リアは食後の飲み物を口にし、ノワールはその優雅な所作で口元を拭いていた。対して秋は二人よりも早くに食べ終わったので、食後のドリンクと共に最後の審判を下そうとしていた。


「さて、食べ終わったところで申し訳ないが話の続きだ。ノワール。もう一つ君に聞きたい事があるなら…邪龍っていうのはどれぐらい強いんだ?あとは能力なんかも———誤解の無いように先に断っておくが、まだ受けると決まったわけじゃない。確かに星王龍の知識は魅力的だが、会えるという確証も、知識を受けられる確証もない。君を信用もしてない。そのリスクを踏まえた上で邪龍がどれだけ強いかは、それを決めるうえでも重要な情報だ———最も、君がここに来るまでの間に俺らにしつこくお願いを繰り返さなかった所は好感触だった。狙ってやってたのか……まあいいか、とにかく頼む」


秋は気づいていた、ノワールが自身の願いを口に出さず、ただ要求する情報を開示している姿を、秋はそれを真摯だと受け取ったというだけのことなのだが、それが人にお願い事をするうえで重要な事だとお互いに知っているのだろう。


「はい。邪龍は、昔に我々の先祖が、星王龍の力を借りて封印に成功したとされる龍の一種で、その力の多くは『竜殺し』に起因します」

「竜殺し?」

「はい。これは【邪龍】と呼ばれるか否かを左右する能力の一つなのですが、【邪龍】は皆『竜殺し』の特性を持ちます。故に竜人族や竜であっても苦戦は必至。一撃で死に至らしめることも可能です。『竜殺し』は最も竜族に効くというだけで、人族や獣人族。大地や海までも腐らせる不浄の力であることは変わりないです」


『竜殺し』——その力は毒の様なものだ。最も効くのが竜族というだけで人や獣。大地や海までも腐らせる不浄の力。それを纏うか否かが【邪龍】か竜かの明確な違いという。




「そして今回封印が解かれた龍は、その『竜殺し』の力を霧と化してまき散らす事のできる邪龍。昔の祖先はその邪龍をこう呼んでいたそうです。『毒霧邪龍:バルディガラタ』と」







「バルディガラタの能力は竜殺しの力を含んだ霧———『瘴霧』をまき散らす事で自身に有利なフィールドを作り身を護ります。そして十分な霧が体内で生成されると一気に散布を開始します。この霧を竜族が吸うと、体の内側から蝕まれ、致死量を超えると死に至ります」


「おそらく今は有利なフィールド———自身の巣を作り終え、活動範囲を広げるべく瘴気を散布している段階に入っていると思われます。最も憶測ではありますが。私が知っている情報はこれで以上です」

「なるほどな……」


(アルタ。今の話を聞いてどう思う。勝てそうか?)

(現在の情報がすべて正しいとしても情報不足です。遠距離から魔剣で攻撃するにしても、その毒が魔力や金属さえ貫通するなら魔剣による攻撃は不可能に近いですし、魔術だけで仕留められるかどうかも分からないです。最も可能性としてあるのはマスターご自身による近接からの大物量———魔剣・魔術・スキルを総動員した攻撃でしょうか。ですがこれもマスター自身の身を案じるならあまりとりたくない方法です)

(なるほど…)


アルタの解析でも情報不足。やはり背負うリスクは大きいものだと秋は顔を細めた。がノワールが言った情報に関しては嘘偽りはない物として考えている。ここで嘘を言って討伐の難易度を下げ、討伐出来ないとなってしまえば彼らにとっても損となる。といった打算的な理由から彼女の言葉は真実だと考えているのだが。


(真実であったとしても面倒な敵に変わりはない…か。)


そう、“真実であったとしても”だ。面倒な敵に変わりない。


(それでも、前には進まないといけない————か。)


秋はようやく、決断の天秤からその手を離した。


お読みいただきありがとうございます。

カクヨムの方では少しだけ話を先行公開しています。

こちらでも近いうちに投稿致しますが、気になった方などはお手数ではございますが見ていただけるととても嬉しいです。

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