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金策




太陽が昇る。秋はわずかな太陽の光を感じ取ると、それを理解し瞼を開ける。と同時にリアも起きてきたのを見るに、少し起きるのが早かったのかもしれない。


「ん。秋、起きてた…」

「いつもより少し早かったか?」

「ん。私が秋の寝顔見てないから、早い。もっと寝てて」

「いやまた寝ろって言われてもなぁ…」


2人は起きるとゆっくりと体を起こしながら、テキパキとは言わないまでも少し気だるげに準備を進めていく。秋はいつも着ている『黒翼のコート』を羽織り、リアは『帝王の宝異箱』から取りだしこの町で買った服を着て朝食へと向かった。







朝食を食べて現在時刻は6時半といったところか、図書館が開くのは昨日と同じで8時ごろ。またしても一時間半程度ではあるが間ができた。


「そうだな…ギルドにでも行ってみるか、いいか?」

「ん。大丈夫」


こうして大通りを特に当てもなく歩いていた秋は、ギルドへ行くことに目的を変更して大通りを歩き始める。


もちろん大通りには数々の屋台が並び、朝食のおいしそうな香りが鼻を抜ける。


そしてこの人通りの多い大通りにも少し慣れてきたところで、ギルドの大きい建物と看板が見えてきた。


「ん。ついた」

「そうだな……一応何回は来てみたかったんだが…正直面倒な事になる予感がしてなあ…後回しにしていたんだが。まあここは俺たちの旅に必要な施設になることは確定なんだがなぁ…」


そう、秋がギルドを少しばかり避けていた理由としては“面倒だから”という理由が一番当てはまっていたのだ。確かにギルドは誰でも力さえあればそれを外貨に換えることのできる仕事ではあるが、同時にギルドの冒険者たちは間違いなく野蛮だ。それを相手にするのが面倒なのだ。


初日の昼食でも、店に入って昼食を食べているだけでも絡まれたのだ。ああいうのが一定数いる冒険者ギルドに、リアを連れていきたくはない。というのが本音だったのだ。


ちなみにだが、魔剣や魔防具などを売る。という手段は、簡単に莫大な外貨を稼げそうではあるが、ギルド以上の面倒事を起こしそうなので選択としては除外している。


それに秋程の実力があれば、適当にそこらあたりの魔物を殲滅して依頼以外でも魔石の買取は受け付けている。それを利用して簡単にギルドに買取を行ってもらうだけで生活自体はできるのだ。現に今も生活はできている。それにまだお金自体も余っている。


だが心配性の気がある秋にとっては、生活に必要な外貨という物が必要十分以上に貯まっていないのも問題視している。何かあった時使えないでは話にならないのだ。何かあった時でも使えるだけの額は持っておきたいという心持ちはあった。


(アルタ。今俺の『帝王の宝異箱』にある魔石で、売れそうなの残っているか?)

(少し微妙な所ですね……ですがギルドに少しばかり特異に見られても現時点では問題ないと思われます。ですので少しランクの強い魔石を売ってしまっても、問題ないかと、ギルドがマスターの事を弱いと判断するよりも、“依頼を受けていないだけでランク以上の能力がある人間”として認識させておく方向にもっていく方が今からでもこれからでも有利かと)

(了解。んじゃあ売れそうな魔石ピックアップして袋に入れといてくれ。頼んだ)

(イエス。マイマスター)


秋はアルタに『帝王の宝異箱』の中にある魔石の中から売れそうなのをピックアップして秋の左手に持たせた。と言っても前回の魔石売却の際にはほんの少し、様子見程度でしか魔石を売ってはいない。なんせ秋が、何百もの刀剣を駆使して出てくる魔物のほとんどを虐殺したのだ。その魔石のほとんどがアルタによって回収され、『帝王の宝異箱』に収納されている。今回の魔石は約20個ほど、前回のより弱いものもあれば強い力を持つものもあった。


そしてそれを持っていざギルドの中へと入っていく。秋はギルド会員証すら『帝王の宝異箱』に放り込んでおり、それもアルタの気づかいによって袋の中へと入れられていた。


そして秋は迷うことなくギルドの魔石買取の列へと向かう。受付の所は依頼を受ける旨を伝える冒険者がまだちらほら残ってはいたが、朝から魔石を買い取ってもらおうとする人間は少なく、列には一歩も止まることなく先に進めた。


「はい。こちらは魔石買取を受け付けております。魔石の買取でしょうか?」

「ああ、これを頼む」

「了解いたしました……では、少々お待ちください」


前回とは違い割とすんなりと通った。それに対して秋は少しばかり不信感を抱きながらも、アルタの言う作戦が当たったかと少しばかり思案を巡らせる。


「はい。魔石の鑑定を行っていますので、少しお待ちください。———前回は驚いてしまって申し訳ありません。何分ご不快にさせてしまったかもしれませんが、お許しいただきたいと思います」

「ああ、別に構わない。だが、一つ聞きたいことがある———ここでは、もし冒険者のいざこざがあっても、ギルドは基本的に干渉しないのか?」

「はい。ギルドに入る際にも説明はされてありますが、ギルドは基本的に冒険者のいざこざ等には一切関係しません。もちろんギルド内の器物が破損した場合など、例外を除いてではありますが冒険者同士で何かあっても、それは冒険者の責任となります。もちろん我々は関与しません。ですがそういう行動が原因となり、信用不十分でギルドを除名処分にされたケースもございますので、お気をつけください」

「ああ、了解した。何かあっても力づくで解決できるならそれでいい。うちは特に唯一のパーティーメンバー絡みでいざこざが起こりやすいからな、そういう事だ」

「ああ、なるほど…確かに冒険者方が見境がないですからね…」


こうして少しばかり受付嬢と話ができたタイミングで魔石の鑑定が終わった。


「今回の鑑定結果ですが、魔石計21個の鑑定で、合計金額が金貨8枚と銀貨3枚という結果になりました。売却しますか?」

「ああ、構わない」

「了解いたしました。それではお納めください。金貨8枚と銀貨3枚です」

「ああ……確かに確認した」

「それでは、今回のお取引誠にありがとうございます。またお越し下さい。魔石売却はいつでも大歓迎ですので」

「了解した。また来る」


こうして、ギルドの魔石買取の列から外れ、ギルドから出た。


(ふう…まあギルドに魔石買取を認めてもらえたのは大きい。これでいつでも魔石を金に変換することができる。これで金策に関しては大丈夫だろう。なんてたって魔石=お金に変わることがほとんど決定したんだからな)


そう、ギルドは実質、秋の魔石買取を認めたという事になるだろう。秋はまだまだ魔石を持っていることぐらいギルドは分かっているはずだ。それを売ってもよいという事なら、金策に関しては大丈夫だろう。


(まあ、おそらくギルドが思っている以上に俺は魔石を持っているのは間違いないだろうがな…。ま、それはいい。いくらでも保存する機能はある)


言わずもがな『帝王の宝異箱』だ。秋の旅の出需品だろう。


「んじゃ、図書館に行きますか」

「ん。行く」


こうしてユリアと秋は、二度目のギルド訪問で、魔石だけを売りさばいて帰ることと相成った。







少し時間は遡る。太陽が微睡んだ光をトリスの街に当て始めるころ、ノワールもまたその目を覚ました。と言っても家族の事を考えると満足に眠れないというのが本音であり、その証明が体に、少しうっすらとした、よく目を凝らして見つめないとわからないほどのクマが出ていた。


(今日は図書館にもう一度足を運ぶと決めていた———行くわよ。私)


ノワールはここ10日間探していた。それはスタンビートをただの一撃で葬り去った白色の魔力。その持ち主を探すべく、ここ商業都市トリスをくまなく探してもう10日。ギルドや大通りから大通りの外れの店など、様々な場所で『竜眼』を使用しながら、その人の持つ微弱な魔力を探しては探し、そしてスラム街まで手を伸ばしてもう10日。家族の安否や邪龍の脅威に自身の体も心を震わせながら、その震えを抑え暗い光を払ってくれる純白の極光をノワールは求めているのだ。


(今の時間は…っと、準備を済ませられればすぐに向かって大丈夫そうね。)


こうしてノワールは身支度を済ませてトリスの街へと出ていった。まるで何かに急き立てられるように、その街へと身を投げた。




お読みいただき誠にありがとうございます。

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