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クラスメイト編第十四話『迷宮攻略』




朝がやってきた。


陽は起きると、早速一階にあるラウンジに足を運ぶ。朝食までの時間はまだ少しあるので、陽は自室にこもるのではなくクラスメイトとの行動を選んだ。何かヒントとなるものを見つけるためというのもあるが、結果的には何の収穫もなく朝食の時間へとなった。


とりあえず席に着く。陽はいつも一人で行動しているように見えるが、それでも喋ることの出来る友達はいたし、むしろ陽は気兼ねなく誰とでも喋れる人間の部類に入る。だが陽には二面性と呼べる物が現代の時から存在し、その二面性すらも相性として合致していたのが仲岡秋という人物であったというのは言うまでもないことだろう。


そして日本人の性なのだろうが、見知った人なんかが食事の席の近くにいないとストレスを抱えてしまう点に置いていえば、陽は間違いなくここにいるクラスメイト達と似ているところである。


「よう!なんだか元気のねえ面してんなぁおい!」

「ああ?当たりだろ?皆そんな顔してるぜ?」


今こうして陽が話しかけているのは立花俊平。普通の男子生徒という印象だが、陰気臭さはない。普通の男子生徒Aといった感じの赴きだ。


「まあなぁ。迷宮が何なのかわかってねえ奴もちらほらいる。俺たち今からどこに行かされるのかってな」

「まあ、迷宮なんて単語を知ってるやつはそれこそオタクぐらいなもんだろ…あれ?もしかしてこの世界。オタク最強なんじゃねえのか?」

「あーそれな。言えてるわ」

「だろ!?俺この世界に来た時からずっと思ってたんだわ!」


などと、他愛のない会話を繰り返せるほどにはちゃんと友達として、喋れる人間としての関係を成り立たせており、その関係の数はそこそこに多い。その中で得られる情報というのは、とても貴重な価値を持っていると陽は思っている。


「そうかぁ…まあ、確かにそうだろうよ。ここにいる奴らはそれこそそこそこ不安に思いながら生きてるんだって事。いくら王国の庇護下にあるからって、そこで不安を抱えない奴はいないさ」


そう、これが陽と他のメンバーとの違い。“王国の庇護下”という言葉を使っているうちには、陽と他のメンバーは相いれない存在となっている。それが陽には分かっている。その言葉を聞くたびに、少し胸が痛くなると同時に、動悸が早くなっていった。







朝食はビュッフェ形式での食事となっており、騎士たちも勇者たちもそれぞれ好きな物を皿に盛って食べていた。全てはこの攻略のためだ。


そして今、宿の外でのミーティング。騎士団長のガルが先陣に立って話を進めていた。


「初めての迷宮攻略だが、君たちならきっと大丈夫だと信じている!では、行くぞ!!!」

「「「「おう!!!!」」」」」


こうして、第一回迷宮攻略がスタートした。







迷宮の入り口。そこは無法地帯。異界への入り口であるという事とは裏腹に、しっかりと整備された施設の中に入り口として存在していて、人の手でしっかりと管理された迷宮口になっていた。


この迷宮入り口を管理しているのは、冒険者を管理する『冒険者ギルド』だ。冒険者ギルド。それはどの国にも属さない完全中立を保っている組織。どの国の寄付金も受け付けず、どの国の権力の参入をも許さない。その言葉の通り完全中立を保っているこの異世界でも数少ない組織の一つだ。教会ですらも国との癒着は計り知れない中で、このギルドは完全中立を保っている。それが並大抵の実力と力を持って成しているか、その努力と苦労。そしてそれを成すための力は計り知れない物だ。


そしてそのギルドの管理のうちの一つが、迷宮。迷宮の主な攻略者は冒険者。つまりは冒険者を管理するギルドの管轄となったわけだ。まあここまで来るのには国とギルドの計り知れない衝突の数々があったわけだが、それを超えて今は冒険者ギルドが基本的な管理を担っている。


そしてそんな迷宮入り口にあたる施設に、ついに勇者パーティーが到着した。


「お勤めご苦労」

「いえいえ、こちらはギルドの仕事を果たしているだけでございます」


こうして挨拶も定例となっている。ギルドの受付嬢もこれには少し茶化したような笑みを浮かべている。迷宮に来て訓練するのが騎士団の中でも恒例となっている以上、ガルと受付嬢とはそこそこに会う機会という物がある。だからこそガルの人柄やそう言った所を知っているからこそ取れる態度なのだ。国とギルドの関係者が出会う以上ギスギスする関係にならないのはガルのその人柄のおかげといっても差し支えないだろう。


「今回は……ああ、例の件ですね。了解いたしました。準備はしておりますのでこちらに」

「ああ、助かる」


こうして、施設の中には酒場や武具屋など、様々な施設が並列してそこに収められており、そういった店で酒を飲んでいる冒険者や、迷宮攻略のための武具等を買い合わせている冒険者たちを後目に、勇者たちは迷宮入り口へと入っていった。


(この目を向けられながら勇者しばらくは過ごしていかなくちゃいけないのか…ああ、これはしんどいな。早く来いよ…秋)


そう願いの様な物を打ち立てながら、久しぶりに吐く弱音に陽自身の心もまた驚きながら。陽もまた奥へと進んでいくのであった。







ここに来る前に行われていたミーティング。そこでは迷宮内部での行動の仕方や、クラスメイト40名弱全てが一斉に行動できるわけでもないので、組み分け等など様々な事がガルから話された。


「まずは迷宮内部でだが、当然ながらこの40名弱のメンバーで一斉に迷宮に潜ることは不可能となる。そのためこちらで班を分けさせてもらった。班のメンバーはこちらで決めさせてもらっている。班のメンバーは人班辺り4名程となる予定だ!そこに騎士を1~2名程つけての訓練となる!まずは班に分かれてくれ!」


こうして班が分けられていく。その班を取り仕切る騎士たちが勇者たちの名前を呼び、そこに集まって班が取りなされていった。


(なるほど。あの幼馴染グループは団長ガルをメンバーに組む…か。了解した)


陽はさりげなく班のメンバーと他の班のメンバーも確認しておく、中でも一番目立ったのはやはり団長ガルが率いる幼馴染四人組班。優雅・茉奈・夕美・雄介のメンバーで構成された班。やはり特筆すべきはと職業という名の歴然とした強さの才能だろう。陽が推察した王国の意図としてはやはり今後メンバーの主軸となれるであろう職業のメンバーをひと固まりにしてどれぐらい実戦で活躍できるかどうかを見定めるためだろう。だがもう一つ気になる班が存在していた。


「ヨウ・ヨシタカ!シュンペイ・タチバナ!アイ・アシダ!アヤカ・カワバタ!いるか!ここに集まってくれ!」


「おおっ、お前と班が同じとは!見知ったやつがいて助かったぜ!」

「おお。俺もお前がいてよかった。喋れる奴がいないと心細いもんな」


陽の班は朝食の時に話した立花俊平と、もう後二人は女子らしい。


「すいません!川端綾香です!」

「芦田亜衣です!」


こうして現れたのは二人の女子生徒。陽の班のメンバーだ。


「よし!揃ったね。じゃあまずは自己紹介からさせてもらおう。この騎士団長の副団長をしているアランと言う!今回はこのメンバーの騎士となった。皆よろしく頼むよ」

「「「「はい!」」」」


そう、まさかの陽の班の騎士。それがなんと副団長。つまりガルの側近だという事だ。


(副団長…。いや、まさかな、偶然…で、あってほしいもんだがなぁ…)


陽は目立ちすぎている事を自覚している。こうして副団長がつけられたことも、何かの偶然だと信じたいが、無意味に信じるという事は、戦いをやめるという事だと陽は知っている。だからこそ、考える事をやめない。続け続けるのだ。


(疑うな、考えろ…。王国に何かしたわけじゃない。何かしたとしたら騎士団長ガルにだ。だからこその措置だと考えれば辻褄が合わせられるんじゃないか?騎士団長なら、副団長を動かせるんじゃないのか?)


「なぁなぁ。俺たちの班に副団長だってよ。他の班は騎士二人とかなのによ。もしかして期待されてるんじゃねえの?」

「ああ、そうだなぁ…」


(いや、そうじゃないと不自然だ。自然な形に収めるとしたら、騎士団長が動かした。って事になるのか…)


実際に答えを言ってしまうと、正解である。立花俊平の言っている事は間違いではない。だが期待している相手が違う。騎士団長は期待しているのだ。吉鷹陽という人間に。


(まあ、今考えていてもしょうがない。損得計算であったとしても、迷宮という未知の訓練場で、何が起こるか分からない状況下で、こうした思考の片手間で挑もうとしている方がおかしいし、それに、ここの訓練は間違いなく、自分の糧になりえる。多少騎士に見張られていたからと言って、手を抜いていい訓練では、ないよな)


「じゃあ、皆いいかな?迷宮に入る前に約束の確認だ。先ほどのミーティングでも行ったと思うが、迷宮では何が起こるか分からない。だからこそ班のリーダーである僕の命令は絶対だ。いくら勇者と言えども、この約束を守れないようなら命の保障はない。僕は君たちの命を保障しない」


この厳しい言葉に、班の中でも緊張感がグッと高まる。


「そして次に、絶対に警戒を解いちゃいけないよ。魔物は確かに低能だが知能はある。それに君たちは初めて迷宮に入る、言ってしまえばビギナーだ。そういう人が起こすミス。それは警戒を解いての不意打ち。迷宮の罠や状況の変化に耐えられない・対処する術がない。こういったケースだ。覚えておいてほしい。今僕が言った約束は全てこれを起こさせないためにある。分かったね」


「うす」

「はい」

「分かりました」

「は、はい!」


「じゃあ、大丈夫だ。まあ安心してくれ。さっきまで散々に怖がらせたかもしれないかもしれないけど、今回向かうのは迷宮の中でも精々1~2。騎士団長が向かうところで精々が3階層と言った所だろう。安心してくれ。今の約束を守って攻略すれば絶対に生きて帰ってこれるよ」


そのアランの言葉に緊張が程よい感じにほぐれて、班の雰囲気が緊張一色だったのが少し緩和された。俊平と陽は顔を見合わせてお互いの緊張具合を確認したり、女子生徒二人は緊張を互いに慰め合ったりなど様々な形で迷宮に挑もうとしていた。


「さあ、そろそろ順番が回ってくるよ。準備はいいかい?」


班分けが終わり注意事項が終わり、10程度のある班の内もう7班が出発した。その中には騎士団長ガルの班も確かにある。そして8班目。ついに陽たちの班だ。


「さあ、行こうか」


アランの言葉で、8班目。陽たちの班は迷宮攻略に向けて一歩を踏み出すことになった。







迷宮入り口を通ると、そこは薄暗い、灯りが一定間隔に置かれているただただ長い回廊を通り抜ける。すると固い、けどそのままの岩肌からまるで毎日手入れされているかのようなタイルの様な、継ぎ目のない真っさらの床が出てきた。


「そう、ここからが迷宮の入り口。分かれ道やトラップ、命を奪う魔物が出てくる迷宮の本当の入り口。さあ気を引き締めよう。ここからは何が起こってもおかしくはないからね」


こうして迷宮への侵入に成功したのだった。







こうして迷宮を歩くこと5分間。ついに遭遇した。アランが散々に言葉に出した“魔物”という存在に。


「シッ……今僕たちがいる角の向こう側、足音が聞こえる。あれは人間の足音ではない。多分だが魔物だ。それもゴブリン」


その声を逃さず聞いたメンバーたちはそうそうたる趣きで次の指示を待つ。


「まずはそうだね……最初は僕が倒そう。見ていてくれ」


そして、アランがゆっくりと歩きながら角を曲がり、ゴブリンとが真っ先に見える対面の位置にまで出ていった。


「グギャ?ギ、ギギ?」


ゴブリンの声。その声はやはりどこか魔物という言葉を根底から思い出させるような不快感をはらんだ声だった。


そしてアランに向かって突進する人型に足歩行の魔物。ゴブリン。手には小さな棍棒の様な物を持ちアランに突進する————そして、アランに一刀両断された。


「まあ、こんな感じかな。ちなみにあの棍棒で殴られたとしても、ゴブリンは精々が痛いぐらいで済むから、死ぬという事はない。だから安心して望んでくれ。さあ、次に魔物に出会った時は君たちにやってもらうよ?誰からやる?」


そうしてアランが班のメンバーに問いかけると、三拍の間の後、肯定を示す声が上がった。何を隠そう陽の声だ。


「……俺がやってもいいか?」

「ああ、構わないよ。次の魔物はヨウ。君がやるんだ」

「ああ、分かった」


「陽。一番乗りか、テンパって痛い目見るなよ~?」

「んなことしねえよ!」


ちなみにだが、陽は鉄の六角棒を、俊平は斧を持ち込んでいる。二人の女子生徒は両方とも杖や指輪を持ち込んでいることから、魔術師であることが分かる。


「じゃあ、行こうか」


こうしてアランの足音が、また動き出した。







こうして迷宮内をさ迷う事5分。先ほどと同じような形の角からの足音。ついに敵が現れた。


「シッ。足音だ。それもさっきと同じゴブリン」

「…うす」

「その様子だと、覚悟はできてるみたいだね」

「いつでも大丈夫です」

「…いい眼だ。じゃあ、行こうか。3、2、1で飛び出して、僕の隣を走るんだ。そしてゴブリンに近づいたら、その棒術で敵を殴り飛ばしてやってくれ。魔物の死体は一定時間すると迷宮に飲み込まれる。だから遠慮なく。ドンとやってくれて構わないよ」

「了解っす」

「ほかのメンバーは僕とヨウについてきてくれ。いいね?」

「「「はい」」」

「じゃあ、行くよ……3、2、1。走れ!」


そして、角にいるゴブリンめがけて走り出す。同時に邪魔にならないようアランと少し距離を取りながら抜刀


(…!!彼。やるね。抜刀と同時に距離を取る。それは武器の間合いを分かってないとできない)


アランは少し驚いた。武器の間合いまで考えて行動できる勇者を、訓練中に見たことがない。ほとんどの生徒は武器と武器を訓練中にぶつけている絵をよく見ていた。


勿論、これには理由が存在している。そう、あの素振りにも近いあの訓練だ。狭い室内で棒を振り回すわけだ。つまり棒の長さと適切な距離を考えて振らないといけない。そういった所から生まれたのが間合いの概念。勇者がまた成し得なかったことを、陽は自らの訓練で気づき、学んだのだ。


そして速度はトップスピード。ゴブリンが気付いた時にはもうその鉄の六角棒の射程圏内。


(ここだっ!!!)


抜刀していいた六角棒を斜め上から振り下ろす。認知外からの最高出力。そしてゴブリンは横の力の運動で壁際まで一気に吹っ飛ばされる。


「グギャ———」


横に吹き飛ばされるゴブリン。陽はここで終わりではない。追撃。壁際まで寄り掛かったゴブリンに対して行うのはあの時見た職業『槍術』の勇者が見せた最高出力の突きの一撃。


—————ブシュッ。


ゴブリンの脆弱な肉を貫通し、壁際に血の染みを作り上げた。結果追撃によってゴブリンの命は奪われ、陽の六角棒は初めて、武器として敵の血潮を浴びることとなった。そして




————【一定条件を達しました。『棒術:槍型』を会得しました】




こうして、陽はまた一つ強くなっていくのだ。




お読みいただきありがとうございます。

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