クラスメイト編第九話『進み続ける舞台』
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そして太陽は再び上った。陽は朝と夜に必ず棒をしっかりと握り自分のステータスを強化すると同時に、イメージを強化してトレーニングを重ねている。前回見た勇者の剣術。あれに打ち勝つにはどうすればいいかを脳内で描き、その描いた軌道通りに振ったりなどといった現実的な部分までを見据えて訓練をしているのだ。だがそこには明確な理由があった。
(やっぱりな、何か目標を見据えていたり、意識して他人の剣術や槍術。斧術の振り方を真似ると明らかに違う。ステータス増加の効率が少し変わる気がする…)
実際にそうなのだ。間違いない。陽の言っている事は正解だ。この『棒術』というスキルにある隠れた特性。それは棒を振うとステータスの増加が行われるという事。だがただ振うだけなのと、強くなろうとする確かな意志によって振るわれたその棒は、ステータス上昇の効率を上げるのだ。
(よし、強くなれるというのであれば俺は歓迎だ。どんどんやればいいだけだからな)
こうして陽はまた棒を振う。ステータスは現在こうなっていた。
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吉鷹陽
15歳
学生
ステータス
筋力:1470
体力:1400
魔力:1260
魔耐:1200
俊敏:1410
スキル
・棒術
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◇
―――あれから五日が経過した。
まだ五日だ。勇者はひたすらに訓練に明け暮れていた。更に魔物の知識や教養を深めるべく、座学まで取り入れられる事となった。
今では異世界に行っても学校と変わらない生活を送るようになってしまったと陽は思いながら、今日もまた訓練場に赴いた。
◇
訓練場に着くと、各々が武器を持ち素振りや各種訓練やイメージトレーニングなどをしているのが目に見えた。イメージトレーニングは主に魔術組が使っているのだが、武器を持っている連中は真面目な奴で素振りをしていたり、他の奴らは喋っていたりチャンバラごっこをして楽しんでいた。まあ最もそのチャンバラでも勇者がやれば少し様になっているのだが。
そして訓練が始まると、武器の振り方の指導や、立ち合いなんかをやらせるようにもなっていた。初めは団長直々に一人ずつ回っては5~15分間の立ち合いを行っていたが、騎士との立ち合いになり、そしてそこにクラスメイトすらも交じり始めた。
そして肝心の陽はと言うと。
「あのー……」
「ん?どうした?」
「どうしたじゃないでしょう。騎士団長」
「今は私との打ち合いの場だ。ほら、構えんか」
「いやほら、そこはしっかりと他の勇者たちとやるんで…」
「いやいや、遠慮しなくていい。ほら、打ってこい!」
「はぁ…………」
この陽と騎士団長のやり取りに、周囲の騎士もクラスメイトも苦笑いだ。何故なら皆知っているのだ。団長の頭のおかしさを。ひたすらに打ち合っては痛めつけられを繰り返すその様をほとんどのクラスメイトが体験し、そしてその痛みを知った。だからこそ騎士団長とは二度とやりたくないと後を絶つ者が続出。当然陽もそのようにふるまっていたのだが、騎士団長が許してはくれなかったのだ。そしてこの現状である。
「貴方は騎士団長でしょう?私なんかじゃなくてもっとほら。勇者の職業を持っている優雅とか…」
「そこは騎士に任せている。安心してくれ」
「いやいや、それなら聖騎士の職業を持っている雄介とか」
「そこも騎士に任せている。安心していいぞ」
「………………」
もう逃げ場はないと悟った陽が、本当に諦めた顔をして騎士団長ガルと向き合う。この時点で全員の苦笑いは生暖かい目線へと変わっていった。
ちなみにだが優雅・雄介の職業や茉奈・夕美の職業等、強いと思われる職業については自然的にクラスメイト内で情報共有がされていた。これは周知の事実だ。
ある程度強い職業から強そうな職業、名前面から能力が推察できそうなものなど、陽は友達との会話の中で少しづつそれを探っていたのだ。
「ほらどうした。構えろ」
「はぁ……あんまり痛くはしないでくださいね」
「善処しよう!ハッハッハ」
「はぁ…」
こうして陽は騎士団長ガルへと向かっていく。結果は言わずもがななのは誰もが察する事が出来るだろう。
◇
10分後。勿論コテンパンにやられて地面に倒れている陽の姿を、クラスメイト皆生暖かい眼で見つめていた。
「お前らぁ!そんな目で見んじゃねぇ!辛れえんだぞこの人の相手ェ!」
そういうと騎士やクラスメイトの皆が笑ってくれたので陽はひとまず安心。だがガルはそうはいかなかった。戦闘中に起こっていた陽の急成長に少しづつ思考の渦が広がっていった。
(ヨウ・ヨシタカ。彼はこの五日で見違えている。振り方の切れ、力強さ。全てが一回一回戦うごとにどんどんと強くなっていく……。彼の武器。そこから走る感情には、必死。決死と言った感情が混じっている様にも感じる……ますます彼が分からなくなっていく…)
そう、陽のその木棒からは強い意志を感じていた。これはあくまでも戦士としての勘だが、戦士故に勘を信用しているといってもいい。そして明らかに変わっているその振り方。キレ。素早さ。そして形。生きるために、力をつけるために必死で。それでいて生きるための技を磨こうとしている印象まで覚えた。なら、彼のそこまでの原動力はなんなのか。どうして彼にそこまでさせるのか。王国騎士団長はそれが唯一気になっていた。
「光よ。『キュア』」
そして結果が分かっていたかのように夕美が前に出て光初級回復魔術の『キュア』を唱える。ここまでがもういつも通りになってしまっているのは残念と言うべきなのかもしれない。
「いつもありがとう、夕美さん」
「ううん。大丈夫。そっちこそ訓練頑張ってね」
こうして一言交わしてお互いの訓練に戻る。これがいつもの風景と化していた。そしてそれを見つめるもう一つの眼。何を隠そう茉奈だ。茉奈もまた陽の動向を常に警戒している者の一人だった。
(陽君。彼はこの世界で何かを知っている。何かを知ってそれでいて行動している。彼の動向を見張っていれば、私達にも必ず真実が舞い込んでくるわ。だから、必ず…)
こうして少しづつ陽の周りも動きを見せ始める。こうして少しづつ、だがゆっくりと。自体は陽の望む混乱へと発展していくのだ。
◇
「勇者の迷宮攻略の派遣を1週間後に決めた。勇者の訓練も座学も順調に行っているという事だ。だからこそ、勇者たちにはそろそろ外に打って出てもらいたい。出来るか?宰相」
「はい。ではそのように準備を整えましょう」
こうしてまた、王国と勇者は次のステップへと進んでいく。勇者は止まってはいられない。常に嵐の中にある。これが誰の残した言葉なのか誰も知らない。だがそれは真実であることを、ほかならぬ勇者自身が知るときまで、もうそう遠くないのであった。
◇
「と、ここまでが今の状況じゃな」
「ほう?秋が救おうとしている陽とやらも頑張っておるそうじゃないか。それに彼の覚悟は見ていて心地よい。やはり秋の学友という所か、何か似通っているものがあるわい」
「ああ、これを見ているだけで時間を忘れそうじゃよ…。暇つぶしとはこのことを言うのじゃな。全く、本当に見ていて飽きないぞい……」
こうして、その二人をのぞき見しては茶をすする神が二柱いた。全能神ゼウスと時空神メリッサだ。彼らもまた異世界の物語を楽しむ観客であるという事。現在は秋の観察を一時中断し、時空神の能力で過去の時間軸での映像を楽しんでいるところだ。白い世界で唯一鏡の様な宙に浮く物体に、異世界での様子が写されている。そこにのみ色がある状態といえよう。
これもまた『神界忌録』に違反しないかと言われれば違反ギリギリという所だろう。だが相手も同じことをしているのに対し、こちらは最高の神の名を持つ八神に名を連ねている。神の序列はその名で決まる物ではない。それにゼウスは八神の名を捨てたいと思っている神の一柱だ。もう一柱はメリッサ。つまり二人にとって八神の称号など何の意味も持たないのだ。だが。
「ん?ああ?今いいところだってのに!なんだい!全く……嗚呼?『八審神議会』を開くだぁ!鬱陶しいねぇ!参加しないと伝えとくれ!」
「おお?どうした?映像が止まったぞ?おいメリッサ。何故止めたのじゃ?」
「嗚呼!?…今呼び出しがかかってのじゃよ。内容は『八審神議会』の開始だとよ」
「―――――糞じゃな。正直言ってあ奴らにはもう関わりたくもない。儂も何度も『八審神』の座を返上すると打診しておるんじゃが…適当な奴を入れて回せばよかろう。それに儂の事をやっかんで姑息な事をするクソガキが後を絶たん。儂はいつもの様にバックレるからメリッサだけも行って―――」
「そういう訳にはいかないんですよ。ゼウス様」
そうして現れたのは、白の世界に似合わない紅い鎧を着た一人の青年だった。
「ああ、誰じゃお主?何許可なく儂の世界に入っておるんじゃ、返答次第ではただじゃ置かんぞ」
「申し訳ありません。私は戦神の使い。名をアビールゲルと申す者です。メリッサ様もご機嫌よう、少しの間お邪魔させていただきます事をご容赦ください」
「それで?戦神の使いが何の様じゃ?『八審神議会』絡みか?」
「ええ、戦神様からの言葉を伝えますと。『今回の議会は八審神全員が参加する事を強制する。この決定は神裁者オーディン様を含む過半数である6名全てが認定。これにより2人の強制参加を命じる』との事です」
「分かった。では『儂は行かん』と伝えておいてくれ。どうせそれで八審神を抜けさせられた所でどうでもよい。誰か適当な奴を入れろとも伝えておけ」
「私は少し考えておくよ。行かなかったらゼウスと同じ理由だと伝えておけ。私もそんな組織には興味の欠片もない。勝手にやっとけ。私を巻き込むなと伝えておけ」
「まあ伝言は伝言ですので一応。ああそれともう一つ。今回の議題は『『神界忌録』の大幅な違反者の対策』についてです。それでは」
「………!!!!」
「そうかい、分かったよ。もういけ、邪魔だ」
「了解いたしました。それでは失礼いたします」
こうして戦神の使いは去っていった。そしていつも通り白の世界に戻った二人だったのだが。
「さあて、これでも面白い事を探すのに私は忙しい。少しの間この画面から離れてしまうのは大変残念なことだが、次の暇つぶしも探しておかねば、久しぶりの集まりだ。私は行くよ。お主はいつも通り欠席という事で良いか?」
「…………儂も行く。今回の議題が気になってな」
「おお!こいつは珍しい!……少しばかり荒れそうだ。面白くなってきたじゃないか!」
「…はぁ。お主は相も変わらず楽しそうじゃのぉ…」
「私も、一応秋の事な気になっているぞ?その金髪のクソガキの事もな。だからこそ行くんじゃあないか、たまたまお前も来るから面白くなりそうだと期待しただけだ。勘違いするな」
「それ、どう転んでも同じような気がするんじゃがのぉ…」
こうして神々の間に秋を思う二柱の神が参加を表明した。この先ゼウスとメリッサはどのようになるのか。秋でも陽でもない。第三の物語の幕がここで挙げられた。
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