迷宮攻略.4 ~「完璧主義者」~
恐らくですがまた更新頻度落ちます。申し訳ありませんが気長に待っていただけると大変うれしく思います。
こうして早朝、まだ太陽が出始めてから少したっていないが、それでも朝焼けの木漏れ日が少し家の中に入り、その朝日が体を撫でると、まるでそれがスイッチになったかの様に秋は目覚めた。
「おはよう、アルタ。というかお前寝てるのか?」
『そんな事を聞くとは珍しいですね。どうしたんですか?』
「いや、今日は調子がいい」
『奇遇ですね。私も調子がいいです』
「スキルに調子とかあるのか?」
『はい。それと先ほどの質問の答えになりますが、一応眠ることもできますが娯楽としてですね。ですので寝なくても過ごせるが正解です』
「そうか、ありがとう―――よし、じゃあ行くか」
『了解しました。マスター』
こうして木漏れ日の様な朝日を浴びて目が覚める。『黒翼のコート』を羽織り直し、借りている家を出たのであった。
◇
案の条簡単に迷宮に到着した。三日も通うともう慣れたようなもので、魔物も秋の事を覚え始めているのか勝手に避けている。この三日で西の森の力関係は逆転したといってもいい。それは魔物のレベルが魔力の質や大きさで判断されているというのも一つの要素だろう。
そしていつも通り、深緑の森の中にただ白い、汚れ一つ存在しない迷宮の入り口がその口を開けていた。
「アルタ。前回は40階層まで行っていたが、魔物の数はやはり復活しているか?」
『はい。おそらくは、しかし私たちが倒した魔物の数ほどではないかと、魔力の吸収が間に合ってないため魔物の生成が出来ない物と判断します』
「そいつは上々、じゃあやろうか。『魔剣海戦術』を」
『了解しました』
そして前回と同じ様に入り口の前に座り込むと、魔剣創造スキルの能力で保存していた魔力回復用の魔剣全てを取り出し、アルタにリンクさせる。
『リンク全て成功。飛ばします』
魔剣群の魔剣はこの西の森へ飛ばし、残りは秋の周りに突き刺す。魔剣が己の役割を理解し、魔力を吸収・生成し主にである秋に送り飛ばす。
更に魔剣群の魔力が指揮官剣を伝い全て余すことなく秋に献上される。西の森の魔力が勢いよく流れ込んでくる。
『全てリンク完了しました。魔力効率1万あたり3分のペースです。全て問題なく作動しております』
アルタのアナウンスでニヤリと笑うと、五つの魔剣群を取り出す。その魔剣群は黒と白の配色が施されている前回の魔剣に似ているが、性能は化け物レベルで強化されている。
『それがマスターの強化された新しい魔剣群ですか』
「ああ、お前に苦労させないつくりになっている自信作だよ」
『それは期待しております。マスター』
勿論、アルタの期待に応えるどころかその上を行けるポテンシャルを秘めている。能力は前回の能力を全て引き継ぎ、一本の指揮官剣に黒と白の魔剣が6本づつ、13本の構成に変わりはない。だが変化はアルタがリンクさせた瞬間に起こった。
―――ヴィイイイイン
一斉に赤のラインが迸る、剣の塚から剣の先まで、血管の様に赤の文様が赤く蠢く。黒と白の魔剣に迸るそれは、見れば見る程不気味さやおぞましさを表している様だった。
この新生魔剣群の能力。それは魔力を吸収する事の出来る能力、そしてもう一つの強力な能力は、ほかならぬアルタ自身が驚いていた。
『これは……魔剣生成能力を魔剣自体に備えたのですか?』
「ああ、魔物や迷宮から魔力を吸収し、それを使い魔剣を創造する事が出来る。そしてそれを群体に加える事で自らを強化する事が可能だ」
『これは……思っていた以上のポテンシャルですね。マスター』
「ああ、更に魔剣自体の耐性や攻撃力、鋭利さなんかも数段挙げてある、もうあのキメラ如きに苦労することはないだろう。その先までは保証できないが」
「いえ…これほどの武器をいただいて、攻略できないわけにはいかないですね…では、早速参りましょう。そうですね……この武器なら、あの40階層まで15分という所でしょう」
そうして新しく強力になった新生魔剣群と、新しく能力も全て強化された人工知能型スキルであるアルタが組み合わさり、再び迷宮に牙をむく、迷宮が耐えられるのかどうかは、神のみぞ知るという所だろう。
◇
『13階層攻略』
『19階層攻略』
『20階層ボス攻略。攻略時間26秒』
『27階層攻略』
『30階層ボス攻略。攻略時間35秒』
『34階層攻略』
『39階層攻略』
『40階層ボス攻略。攻略時間59秒』
『これは誤算でした……まさか、9分と47秒でたどり着けるとは、これもマスターの魔剣のおかげです、ありがとうございますマスター』
「いやそれは全く問題ないんだけど…まさかここまでアルタがこの魔剣の力を発揮するとは思っていなかった…一群体で平均5、6本の魔剣増やして攻略とか考えてなかったぞ…」
『お褒め頂有難うございます。マスター』
「ああはいはい。そろそろ追加入るぞ、攻略は順調か?」
『はい、大丈夫でございます』
そう、進化したアルタ・セラフィムにチート武器なんかを渡してはいけなかったのだ。出てくる魔物を惨殺し、迷宮の魔力をたらふく食わせ増殖させる、さすがに迷宮も泣いていることだろう、まさか迷宮の半分を10分以内で攻略されるなんて思ってなかっただろうから。
ちなみにだが今回の新生魔剣群の生成魔力は10万。今の魔力回復量が3分で1万だということを考えると30分に一回生成される、現在は五組だけだが、増殖している事で現在アルタが操っている魔剣の総数は90本を超える。
だが秋には考えがあったのだ。それは旧式の魔剣を今回の新生に生まれ変わらせることで、魔力消費を抑えながらこれからの迷宮攻略に生かそうというプラン。ちなみにその際の魔力は3万でいい。つまりは10分に一回誕生されるという地獄が待っているのだ。
「アルタ。強化完了した。リンク頼む」
「了解しました。リンク完了、突撃させます」
そしてもう一組、これで魔剣の総数は100本を超えた。合計6組の化け物たちが迷宮を侵略しているのだ。たまったものではないだろう。
「さて……どうするか…」
『今日中に完全攻略を目指すというのもありだと思われますが』
「ああ、一応はそのつもりだ。だがこれだけというのも暇な気がしてなぁ…」
『では、どうぞ魔剣たちの視界を借りて迷宮内を探索してみてください。私の方で知らない魔物等出ましたら説明いたします』
「そうな暇あるのか…?いや、アルタは完璧主義者だからな、出来ると言ったら出来るんだろう」
『イエス。マスター』
こうして秋は魔剣の一本とリンクして迷宮内部を感じてみてみる。
『そうですね…この40階層はなんといってもうっそうとした森やジャングルなどに生えているような木々がいくらでも生えており、魔物たちはここで生態系を作り生活し、迷宮を守っているのです、例えばあそこにいる四本足の獣、あれは見張りです、あの見張りが倒されるとあの見張りを見張っている魔物に群れを呼ばれて逆に狩られます。ですが』
―――ブシュっ!!
その四本足の木々に立っている獣を剣で串刺しにする。そして当然と言うべきか
―――カキャァァァァ!!!
その見張りを見ている魔物が察知して叫ぶ、集めってくる群れ、総勢50はいるその群れを
――――グシュグシュグシュグシュ!!!
その木々の上から待機していた総勢100ちょいの魔剣が上から串刺しにする。
『こうして狩っては魔物の魔力をいただいていくわけです。あとは例えばあの妖精。フェアリーの特徴通りここでも魔法を使い攻撃してきます。おそらく風魔法でしょうでしょうか、エアカッターみたいなもので体を切り落とす凶悪な魔物です』
―――ブシュ。
『ま、体が鋼鉄でできた剣が、なまくら風の刃如きで切れるなど、思い上がりも甚だしいですがね、身の程という物をわきまえていないのです。あの低俗な魔物どもは』
秋はその説明を脳内再生されながら、三人称になっている魔剣との感覚や視覚を共有していた。
(さすがアルタだ。ちょっと怖いまであるな、これは…)
秋も少しビビるぐらいなのだから、アルタの覇気やここで操れている実力は紛れもなく本物といえるだろう。
そしてアルタ率いる魔剣群は、無事に44階層を瞬殺したのだった。
◇
『さて、なんとなくですがやはりそうですね、この迷宮は10階層ごとにある程度の強さのレベルや迷宮の構造が変わるようです。二日前に探知した魔力の流れ的にも、やはり50階層がネックでしょうか、あそこからはやはりレベルが段違いに変わることでしょうから』
アルタは念話で秋に今の状況などを事細かに伝えながら、気が付けばその階層の攻略が終了しているというこの状況に、秋はようやく慣れ始めてきたところだ。
現在攻略中の階層は48階層、魔物の種類的にはやはり森やジャングル等木々に囲まれている階層だという事で、その森の性質を生かして狩りや生活を行える魔物が多い、木々を巧みに使う四足歩行の群れ型の魔物は先ほど倒したそれだが、森の中をまさしくシロクマの様な魔物が貫禄ある趣きで歩いていたり、群れという所でいうのならば蜂の様な魔物が群れを成して襲ってきたのだが、勿論瞬殺されていた。当たり前という言葉を使うアルタにももう秋はすっかり慣れてきていたころだ。
『さてマスター、マスターももうこの景色に飽きてきている頃かと存じます、ですのでそろそろボス部屋に参りたいと思います。49階層は、そうですね…まあ、1分あれば大丈夫でしょう。ではご覧くださいな、マスター』
そういうと魔剣群たちの赤光が極めく。黒と白を飲み込む赤のコントラストは、更に輝きを増していき、黒と白を飲み込もうとしている。
『では、参ります』
そう、魔剣制御においてアルタの持つ力を使って魔剣制御のスペックを魔剣が耐えられる最高までフルブーストしたのだ。赤光は蠢き煌めく。そして勢いよく動き出す、最高スピードはプロ野球選手が投げる最高球速に近いレベルでの制御を可能にしている。そしてこれがどのような効果を生むか。
――ブシュシュシュ!!!
そう、その速さは破壊力であり貫通力、たかが肉の塊程度簡単に内部から食い荒らすことができる。先ほどの魔物は地上に存在しているゴリラの様な魔物だったが、残念な事に丁度お腹の部分に風穴とも呼べるべき大きな穴が開いていた。これには同情するレベルだ。
そして驚くべきことに、指揮官剣以外の白黒魔剣群一本一本を時速150kmでカーブなど完璧な制御をさせるアルタ。あくまでも超人的なパワーと耐久力を持つ鋼鉄の化け物だから出来るという前提を差し置いたとしても、コンマ何秒かの遅れで制御に支障をきたすこの動きをいとも簡単に成し遂げる事の出来る力、やはりアルタ・セラフィムというところだろう。
『48階層攻略完了です、時間は……51秒。まあまあといった所でしょうか、では行きましょう。マスター』
そう、この迷宮では、アルタの能力の前に膝をつくしかないのだ。
◇
49階層も瞬殺、48階層の惨劇を見ると当たり前といえば当たり前なのかもしれないが、それでも瞬殺という事実には重くのしかかる。そしてボス戦。ボスの扉を瞬間で見つけることに成功したアルタは、勿論全戦力を集めてボスの扉を開けた。
暗い部屋、おそらく丸い形になっているその部屋は真っ暗で。だが後ろから徐々に灯りがともっていく。そして徐々に見えていくボスの形。奥にいるこの森の階層の最強の存在、その姿は地面にはなかった。何故なら空を飛んでいるからだ。その姿は鳥。それもただの鳥ならまだしも、その姿を見て最初に思い浮かぶのは鳳凰。あの中国で四神と呼ばれるあの大鳥。鳳凰の様な風貌をしていたのだから。
「ピギャアアアアアアアア!!!!」
吼える鳳凰。だが魔剣にも負けてはいない。鋼鉄の化け物は主の命令を受け突進する。作戦は20・30階層を攻略した王道陣形。だが魔剣の性能が上がった今ではその王道陣形でさえも超強力な必殺とも呼べる技になる。だがこの魔物は空を揺蕩う大鳥。そして今までの様に甘くはない。
「ピギョアアアアアアア!!!」
鳳凰は一瞬でその魔剣の危険性を察知すると、一瞬で羽をはばたかせとんだ。上へ下へ、左右へと逃げながら追っている魔剣群たちをかわす大鳥。だがアルタも負けてはない。勿論数十の魔剣を何体も動かしてあらゆる角度から追撃を開始する。
だが鳳凰は逃げているだけではない。鳳凰の紅翼を飛ばして魔剣群を撃ち落とさんとする、当然魔剣には刺さらない…はずなのだが。
(不味いっ!!!)
アルタは紅翼の羽を回避した。超合理的思考を旨とするアルタが避けた理由。それは害になるから、つまりあの紅翼の羽は鋼鉄の魔剣群に刺さる可能性があったということになる。
(主からいただいたこの剣に傷をつけるわけにはまいりません。最も刺さるといっても多少傷を負わせる程度でしょうが……私が主にお見せしたいのは圧倒であり圧勝。これはそのための必要なプロセスです)
鳳凰の追撃は無尽蔵に湧く紅翼の翼により魔剣群たちは追っては追われての大激闘、森の戦闘とは一転空中でのハイスピード戦闘へと展開されていく。
徐々に増えていく紅翼の羽。その羽は固く用意に砕くこともおることもできないため、鳳凰の羽の魔力が尽きるまで鬼ごっこに付き合わなくてはならないのだ。
そして、そのせいで魔剣群の追撃に僅かな隙が出来たことを知る鳳凰。鳳凰は一気に踵を変えると、その小さな口を開ける。鳳凰のその赤い体からも炎を連想させるように、この大鳥は炎を攻撃手段に持っているのだ。
『ゴガガアアアアア!!!』
先ほどとは違う低い声と炎が奏でる唸り声。その両者の声は魔剣群に迫っていき、やがてこのフィールド全てを蹂躙した。
炎の温度は摂氏3000℃。鉄の剣であれば瞬間でドロドロに溶けているレベル。いやそれ以上の業火がこのフィールドを蹂躙した。
全てを燃やす終焉の業火。それがこの盤面の全てを無へと帰す。だが
『キメラにやられたあの屈辱から、私は主にお願いしておいたのです。固い剣をと』
終焉を迎えたのは魔剣群たちではない。鳳凰の方だという事を最後に知ったのは、外ならぬ鳳凰だった。
首・口内・体の側面。ありとあらゆるところで剣が刺さり、炎とは違う赤黒い液体が流れ落ちる。そして最後にはまるで意識を燃やし尽くしたかのように絶命した。
『50層攻略完了ですね』
そうアルタは言い残して51階層に進めた。時刻はまだ昼を超えていなかった。
お読みいただきありがとうございます。




